(鳥取)ウオーキング時代=玉井嗣彦・名誉病院長 ご近所のお医者さん
健康長寿を求める時代、心身の健康は歩くことで支えられており、歩くことに関心が持たれて久しい。歩くと体全体の筋肉がほぐれ、生理的によい影響を及ぼしますが、歩くことで脳へ刺激を与え、脳の老化を防ぎます。
哲学者カントは生来の虚弱者で「とてもまともに育たない」と言われましたが、80歳の長寿を保ちました。そのカントの重要な日課に散歩があり、毎日規則正しく散歩をすることと食事の工夫で、明晰(めいせき)な頭脳と体の健康を守ったのでした。
歩く習慣のある人は大体1日1万300歩以上、手を振り、背中を伸ばして速足で歩きますが、ストレスを感じないばかりか、人生に満足感を感じ、疲れを覚えず、風邪を引かないとのことです。風邪を引きにくくなるかは別にしても、皮下脂肪の低下を目的とする場合には、1日1万歩以上毎分100メートル程度の条件で、この姿勢を保ちつつ、歩く必要があるとされています。
ちなみに、このウオーキング姿勢で、1日3000歩歩行しますと10週間で1キロの減量が可能だそうで、1年間では5・2キロの減量となります。しかし、運動後の暴飲・暴食は減量効果を減少しますので要注意です。
ウオーキング中は、特に夏場では熱中症の危険性が高齢者にみられますので、水筒を保持して歩き、朝夕の比較的涼しい時間帯の実施が望まれます。
現在、日本のウオーキング人口は約3300万人と推定されています。最近、内閣府が発表した「日本人の運動・スポーツに関する世論調査」によれば、第1位が「ウオーキング」(34%)で、第2位の「体操」(15%)、第3位の「ボウリング」(13%)を大きく引き離しています。
時代を背景に、各地にウオーキング協会が設立され、全国で大会が開催されています。鳥取県にも「19のまちを歩こう」という認定大会が存在し、去る11月11日には地元で「第10回金持(かねもち)開運ウオーキング」が、滝山神社から金持(かもち)神社まで紅葉を楽しみながら歩くことをスローガンに、300人の参加者を得て無事開催されましたが、参加者の責任の一つとして、「路上のゴミは拾って帰りましょう」とされていたのは印象的でした。
人より速くとスポーツ化して、褒賞金争いの大会も少なくありませんが、「地域の自然と文化を歩いて満喫しよう」というウオーキングの精神だけは忘れたくないものです。