<はなやのうどん>
忍野八海(おしのはっかい)から、富士吉田までは車でほんの五分くらいで
ある。
その富士吉田では、いまでは六十以上のうどん店が味を競っているそうだ。
わたしはといえば、いつも「はなや」で食べている。ただ、前回来たのは五年
以上前のことだ。創業百年近い老舗で、ここはその日の分しか作らないので売り
切れたら店じまいしてしまう。
たしか記憶によれば、国道139号から鳥居に向かっての下りの坂道だと、自信
を持って曲がったのだったが、あるはずの「はなや」がみつからない。あちこち
迷ったあげくに同じ道に結局戻ってきて、やっと発見した。店の前の駐車場がいっ
ぱいなので、裏に廻って広い駐車場にとめた。降りると風が強く冷たい。
裏にも暖簾をさげた入り口があるが、いちおう店の正面からはいることにした。
玄関に廻る途中で、客がうまっている部屋もあることを確認する。
強い風で、暖簾が巻き込まれている。
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入り口の引き戸をあけ、靴を脱いで障子をあけてすぐの座敷にあがる。親戚の
家に遊びにきたような雰囲気である。
(うーむ、どうやら店を改装したようだ。)
きれいな座敷のあいた卓にすわる。七卓ほどのうち、四卓がうまっていた。奥の
卓では団体がビールを呑んで盛り上がっている。
(卓も立派なものに変わっているなあ・・・。たしか、前回に湯盛りを頼んで届い
たときに、引き寄せたら卓の継ぎ目のでこぼこに引っかかって熱い湯が飛び散り
手を焼けどしたっけ・・・)
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メニューをみながら、そんなことを思いだしていると注文を聞きにきた。
「湯盛りと、ざるをください」
ふたつぐらいは、食べられるだろう。香川で讃岐うどんを三杯立て続けに食べた
のだからな。
煙草を一本吸い終わるころ、運ばれてきた。
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さて、どちらからといえば当然熱いほうからだろう。
ここ「はなや」の売りの湯盛りうどんからいただく。釜揚げのあつあつのうどん
に荒削りの鰹節と葉もの野菜がのっている。醤油と特製辛子味噌で自分で味をつけ
て食べるうどんである。
まずは、そのまま食べる。煮汁の塩味だけでけっこういける。腰のある細めの
しっかりしたうどんは、讃岐うどんの腹違いの兄弟のようで、いまやうどんといえ
ば讃岐うどんが一番というわたしでも満足できる。
三分の二ぐらい残したあたりで醤油を少量たらして食べる。
湯盛りを三分の一くらい残したあたりでいったん休み、冷たいざるうどんに取り
掛かる。食べやすいので、こちらは一気に半分ほどたいらげた。
湯盛りに戻り、辛子味噌をほんのすこしいれて食べる。辛子味噌はどちらかと
いうと、ラー油を数倍辛くしたものと思えばいい。ほんのちょっとで、味が辛く
なる。入れすぎると口が痺れるほど辛いから細心の注意が必要である。
湯盛りを食べきって、ざるのつけ汁にも辛子味噌を少量いれて、こちらも完全に
食べきった。
(はぁ・・・・喰った喰った、満腹だ)
煙草に火をつけて、考える。腹がいっぱいになったら、温泉にはいりたくなって
きた。うーん、このへんだったらどこがいいか。そうだ、退屈な道を延々と走るの
だけれど、たまには道志川温泉でもいってみるか。
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勘定を払って、帰りしなに釜のそばにいたご主人が丁寧にお辞儀をしてくれた。
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道志川への途中、山中湖の湖畔からの富士山があまりにも綺麗だったので、車を
止めてしばらく見とれてしまった。
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→「忍野八海」の記事はこちら
忍野八海(おしのはっかい)から、富士吉田までは車でほんの五分くらいで
ある。
その富士吉田では、いまでは六十以上のうどん店が味を競っているそうだ。
わたしはといえば、いつも「はなや」で食べている。ただ、前回来たのは五年
以上前のことだ。創業百年近い老舗で、ここはその日の分しか作らないので売り
切れたら店じまいしてしまう。
たしか記憶によれば、国道139号から鳥居に向かっての下りの坂道だと、自信
を持って曲がったのだったが、あるはずの「はなや」がみつからない。あちこち
迷ったあげくに同じ道に結局戻ってきて、やっと発見した。店の前の駐車場がいっ
ぱいなので、裏に廻って広い駐車場にとめた。降りると風が強く冷たい。
裏にも暖簾をさげた入り口があるが、いちおう店の正面からはいることにした。
玄関に廻る途中で、客がうまっている部屋もあることを確認する。
強い風で、暖簾が巻き込まれている。
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入り口の引き戸をあけ、靴を脱いで障子をあけてすぐの座敷にあがる。親戚の
家に遊びにきたような雰囲気である。
(うーむ、どうやら店を改装したようだ。)
きれいな座敷のあいた卓にすわる。七卓ほどのうち、四卓がうまっていた。奥の
卓では団体がビールを呑んで盛り上がっている。
(卓も立派なものに変わっているなあ・・・。たしか、前回に湯盛りを頼んで届い
たときに、引き寄せたら卓の継ぎ目のでこぼこに引っかかって熱い湯が飛び散り
手を焼けどしたっけ・・・)
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メニューをみながら、そんなことを思いだしていると注文を聞きにきた。
「湯盛りと、ざるをください」
ふたつぐらいは、食べられるだろう。香川で讃岐うどんを三杯立て続けに食べた
のだからな。
煙草を一本吸い終わるころ、運ばれてきた。
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さて、どちらからといえば当然熱いほうからだろう。
ここ「はなや」の売りの湯盛りうどんからいただく。釜揚げのあつあつのうどん
に荒削りの鰹節と葉もの野菜がのっている。醤油と特製辛子味噌で自分で味をつけ
て食べるうどんである。
まずは、そのまま食べる。煮汁の塩味だけでけっこういける。腰のある細めの
しっかりしたうどんは、讃岐うどんの腹違いの兄弟のようで、いまやうどんといえ
ば讃岐うどんが一番というわたしでも満足できる。
三分の二ぐらい残したあたりで醤油を少量たらして食べる。
湯盛りを三分の一くらい残したあたりでいったん休み、冷たいざるうどんに取り
掛かる。食べやすいので、こちらは一気に半分ほどたいらげた。
湯盛りに戻り、辛子味噌をほんのすこしいれて食べる。辛子味噌はどちらかと
いうと、ラー油を数倍辛くしたものと思えばいい。ほんのちょっとで、味が辛く
なる。入れすぎると口が痺れるほど辛いから細心の注意が必要である。
湯盛りを食べきって、ざるのつけ汁にも辛子味噌を少量いれて、こちらも完全に
食べきった。
(はぁ・・・・喰った喰った、満腹だ)
煙草に火をつけて、考える。腹がいっぱいになったら、温泉にはいりたくなって
きた。うーん、このへんだったらどこがいいか。そうだ、退屈な道を延々と走るの
だけれど、たまには道志川温泉でもいってみるか。
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勘定を払って、帰りしなに釜のそばにいたご主人が丁寧にお辞儀をしてくれた。
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道志川への途中、山中湖の湖畔からの富士山があまりにも綺麗だったので、車を
止めてしばらく見とれてしまった。
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→「忍野八海」の記事はこちら
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