<福井名物ソースカツ丼、アーンド越前そば(2)>
隣のご隠居にカツ丼セットが到着し、やや間があってわたしにも丼が運ばれてきた。
上がカツ、その下がメンチのようだ。
よーし、まずはカツからいってみるか。カツは、一見したところポーク・ピカタを思わせるくらい意外と大きい。
スライスしたロースもも肉に細かいパン粉を纏わせラードでからりと揚げたカツを、秘伝のソースにくぐらせている。
カツの噛みごたえは会津のほうが好みかもしれない。会津芦牧温泉の牛乳屋食堂の創業は九十余年、サクサク歯がすんなり入るカツだった。
ただ、ソースが凄い。ソース好きのヒトのために丼に小皿のソースがついているのが泣かせる。
ウスターベースのソースはあっさりしているが、たしかな甘みのなかにひと筋、ふた筋の爽やかな酸味がある。甘みの草原に吹きわたる風のように。ただただ甘い果物より酸味のある味わいがわたしの好みである。それが功を奏しているので、厭味のない濃厚だけどあっさり感のある甘さに仕上がっている。これがいい。このソースならフライ系すべてに合うだろう。それに丼の飯にも妙に相性が良いのである。
「次はメンチをひと口いってみるか」
これはこれは・・・なんとまあ旨いメンチだ。厚みもベスト。これはツマミにもなるくらい旨かった。メンチなど挽肉系を食べると決まってでるゲップも、こいつは不思議と出なかった。
カツもメンチも揚げたてなのが嬉しい。
ヨーロッパ軒は東京で創業、その後移転した神奈川で関東大震災に被災し、郷里福井に帰郷し営業を再開、いまでは暖簾分けで店舗が増えて福井と敦賀に19店ある。地元では「パ軒」の愛称で親しまれている。
メンチカツを載せた丼を「パリ丼」という。つまり、「パ軒のパリ丼」である。わたしはカツ丼よりもこちらが気にいってしまった。
ヨーロッパ軒のある片町は繁華街というよりも歓楽街なのだが、あいにくの日曜日なので休業が殆ど、街は死んだように静かに眠っていた。
続いて、ホテルのフロントで訊きこんだ蕎麦屋に向かう。ホテルに一度帰って温泉で腹を減らそうと思っていたが、レディーなみの量だったので大丈夫そうだ。
五分と歩かず見つけた、佐佳枝(さかえ)亭本店である。大正五年(1916年)に創業したというからこちらも百年を超す老舗蕎麦店だ。
そういえば煙草を買ったコンビニの横に佐佳枝廼社(さかえのやしろ)という神社があったがこの蕎麦屋の店名に関係あるのかもしれない。
神社は別称「越前東照宮」といわれ、徳川家康・松平秀康・松平慶永(春嶽)を主祭神としている。
龍馬の大恩人ともいわれる松平春嶽による命名由来書によれば、
「福井廼社」では福井には他にも神社があるので都合が悪い。
「福井」という名前は足羽神社に祀られる栄井神(さくいのかみ)によるもので、栄も福も同じ意味である。そこで栄を万葉仮名で書いて「佐佳枝廼社」としたという。
コロナ対策をしっかり施された広い店内はガラガラで、客はわたし独りという状況だった。まだ夕食には早い時間帯なのだろう。
じっくりメニューを眺めて「辛味大根おろしそば」と地酒を注文した。
三種あるなかから店主が勧めた辛口の酒「花垣」が喉に落ちると、さすがに、ゆず味の焼酎のときより気分が落ちついてくる。
他に客がいないので、ゆっくりでいいのに蕎麦が運ばれてきてしまう。
まずは越前おろしそばをひと口食べる。うん、旨い。たっぷりの大根おろしと鰹節、安定した越前そばの味、ハズレなしである。
さて、辛味大根だがどのくらいかけるのだろうか。いかにも辛そうである。
「これって、全部かけるんですか?」
「はい、みなさん、全部かけています」
全部かけて、混ぜ合わせる。思ったより丁度いい清涼な辛味で一気に食べきった。
しかしこれは締めに食べたほういい。せっかくの辛口の酒の味がわからなくなってしまった。
ヨーロッパ軒に近いという、ただその一点で選んだ全国展開しているホテルだが、これが大失敗だった。
部屋が劇的に狭く、それはまあ許せるとしても部屋のトイレが・・・ひどかった。今回は食べものをテーマにしているので、おぞましくて書けないが、次に宿泊することはないだろう。
ただ温泉は良かった。マカ不思議にも。
→「福井名物ソースカツ丼、アーンド越前そば(1)」の記事はこちら
→「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(1)」の記事はこちら
→「越前そばにハズレなし」の記事はこちら
隣のご隠居にカツ丼セットが到着し、やや間があってわたしにも丼が運ばれてきた。
上がカツ、その下がメンチのようだ。
よーし、まずはカツからいってみるか。カツは、一見したところポーク・ピカタを思わせるくらい意外と大きい。
スライスしたロースもも肉に細かいパン粉を纏わせラードでからりと揚げたカツを、秘伝のソースにくぐらせている。
カツの噛みごたえは会津のほうが好みかもしれない。会津芦牧温泉の牛乳屋食堂の創業は九十余年、サクサク歯がすんなり入るカツだった。
ただ、ソースが凄い。ソース好きのヒトのために丼に小皿のソースがついているのが泣かせる。
ウスターベースのソースはあっさりしているが、たしかな甘みのなかにひと筋、ふた筋の爽やかな酸味がある。甘みの草原に吹きわたる風のように。ただただ甘い果物より酸味のある味わいがわたしの好みである。それが功を奏しているので、厭味のない濃厚だけどあっさり感のある甘さに仕上がっている。これがいい。このソースならフライ系すべてに合うだろう。それに丼の飯にも妙に相性が良いのである。
「次はメンチをひと口いってみるか」
これはこれは・・・なんとまあ旨いメンチだ。厚みもベスト。これはツマミにもなるくらい旨かった。メンチなど挽肉系を食べると決まってでるゲップも、こいつは不思議と出なかった。
カツもメンチも揚げたてなのが嬉しい。
ヨーロッパ軒は東京で創業、その後移転した神奈川で関東大震災に被災し、郷里福井に帰郷し営業を再開、いまでは暖簾分けで店舗が増えて福井と敦賀に19店ある。地元では「パ軒」の愛称で親しまれている。
メンチカツを載せた丼を「パリ丼」という。つまり、「パ軒のパリ丼」である。わたしはカツ丼よりもこちらが気にいってしまった。
ヨーロッパ軒のある片町は繁華街というよりも歓楽街なのだが、あいにくの日曜日なので休業が殆ど、街は死んだように静かに眠っていた。
続いて、ホテルのフロントで訊きこんだ蕎麦屋に向かう。ホテルに一度帰って温泉で腹を減らそうと思っていたが、レディーなみの量だったので大丈夫そうだ。
五分と歩かず見つけた、佐佳枝(さかえ)亭本店である。大正五年(1916年)に創業したというからこちらも百年を超す老舗蕎麦店だ。
そういえば煙草を買ったコンビニの横に佐佳枝廼社(さかえのやしろ)という神社があったがこの蕎麦屋の店名に関係あるのかもしれない。
神社は別称「越前東照宮」といわれ、徳川家康・松平秀康・松平慶永(春嶽)を主祭神としている。
龍馬の大恩人ともいわれる松平春嶽による命名由来書によれば、
「福井廼社」では福井には他にも神社があるので都合が悪い。
「福井」という名前は足羽神社に祀られる栄井神(さくいのかみ)によるもので、栄も福も同じ意味である。そこで栄を万葉仮名で書いて「佐佳枝廼社」としたという。
コロナ対策をしっかり施された広い店内はガラガラで、客はわたし独りという状況だった。まだ夕食には早い時間帯なのだろう。
じっくりメニューを眺めて「辛味大根おろしそば」と地酒を注文した。
三種あるなかから店主が勧めた辛口の酒「花垣」が喉に落ちると、さすがに、ゆず味の焼酎のときより気分が落ちついてくる。
他に客がいないので、ゆっくりでいいのに蕎麦が運ばれてきてしまう。
まずは越前おろしそばをひと口食べる。うん、旨い。たっぷりの大根おろしと鰹節、安定した越前そばの味、ハズレなしである。
さて、辛味大根だがどのくらいかけるのだろうか。いかにも辛そうである。
「これって、全部かけるんですか?」
「はい、みなさん、全部かけています」
全部かけて、混ぜ合わせる。思ったより丁度いい清涼な辛味で一気に食べきった。
しかしこれは締めに食べたほういい。せっかくの辛口の酒の味がわからなくなってしまった。
ヨーロッパ軒に近いという、ただその一点で選んだ全国展開しているホテルだが、これが大失敗だった。
部屋が劇的に狭く、それはまあ許せるとしても部屋のトイレが・・・ひどかった。今回は食べものをテーマにしているので、おぞましくて書けないが、次に宿泊することはないだろう。
ただ温泉は良かった。マカ不思議にも。
→「福井名物ソースカツ丼、アーンド越前そば(1)」の記事はこちら
→「牛乳屋食堂と芦ノ牧温泉駅(1)」の記事はこちら
→「越前そばにハズレなし」の記事はこちら
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