温泉クンの旅日記

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読んだ本 2014年9月

2014-10-01 | 雑読録
  <読んだ本 2014年9月>

 猫は、まず気まぐれである。
 そこがまあ、可愛いところでもあるのだが・・・。
 海も、半月ぐらい段ボールハウスがお気に入りだった。



「うみちゃん、この間は悪かったね。ホントに」



(なんとなく無視されてる。やっぱり根に持ってるのかなあ)

 わたしが酔って夜遅くに帰ったときに、足の間をすり抜けて外に飛び出したのを気がつかなかったのだった。
 朝、新聞を取ろうとドアを開けたら、女将座りで悄然と海がかしこまっていたのだった。きっと、ドキドキの恐い一夜を送ったことだろう。誠に申し訳ないことをした。

 だいぶ涼しくなって過ごしやすくなったが、ガリガリ君とかクーリッシュが欲しくなるようなある暑い昼下がり、ビアホールへいった。
 氷点下とろけるチューハイというメニューがあったので、邪道だが思わず注文してしまった。



 巨峰のちょっと強めの甘味があったが、暑い日に冷たいものはご馳走である。クールダウンして汗が引いていく。
 もちろん一杯だけで、普通の芋焼酎の王道に戻ったのはいうまでもない。


 さて、今月に読んだ本ですが、今月は少なめの5冊、累計で63冊だ。

 1. ○あるじは秀吉               岩井三四二 PHP文芸文庫
 2.○キル・リスト               フレデリィック・フォーサイス 角川書店
 3. ◎流転の海 第一部             宮本輝 新潮社
 4. ○破牢狩り  夏目影二郎始末旅(三)    佐伯泰英 光文社文庫
 5. ◎地の星  流転の海 第二部        宮本輝 新潮文庫

 先月書いたが、流転の海を一部から読み直すことにした。

「流転の海」第一部。
 熊吾は生まれてまもない病弱な息子伸仁に語りかける。

  『・・略・・わしはのお、神も仏も信じとりゃせんが、それに似たもんがやっぱりあるような気が
   するのお。人間も、花も草も、田圃の蛙も、カラスも鳩も、雲も月も星も、みんなその正体の
   わからん何物かの掌の中から逃げられはせんのじゃ』
   ・・略・・
  『わしはのお、その何物とも知れんもんが、どんな人間にも、それなりの天分を与えてくださっちょる
   ような気がする。その天分を伸ばして行こうと努力することが、生きるっちゅうことじゃと思う
   んじゃ。えらい学者になる天分を持ったやつもおるじゃろ。うまい料理を作る天分を持ったやつ
   もおるじゃろ。気持ちのええ音楽を作る天分を持ったやつもおるじゃろ。ぎょうさん気立ての
   ええ子どもを産む天分を持った女もおるじゃろ。履きごこちのええ靴を作れる天分を持ったやつも
   おるじゃろ。何の天分もない人間は、ただのひとりもこの世にはおらん。わしはたぶんお前が、
   自分の天分に気づくまで生きちょることは出来んやろ。そやけど、お前が二十歳になるまでは
   絶対に死なん」

   そう言った瞬間、熊吾は、もう何ヶ月も心の底にわだかまったまま、明確な答の出せなかった問題が
   ふいに解けたような気がした。熊吾は、このひ弱な伸仁というたったひとりの息子を、無事に成人させ、
   心優しい、多くの人から愛される、懐の深い男に育てあげてみせることが、自分に与えられた使命だと
   思い到ったのである。天分という言葉は、熊吾の中で使命という言葉に置き換えられた。』


「キル・リスト」には拍子抜けした。

  『ホワイトハウスの暗い秘密の内懐に、短い極秘リストが存在する。そこに載っているのは、アメリカ合衆国
   およびその市民と国益にとってきわめて危険とみなされているために、逮捕や起訴などの法にもとづく
   適正手続きを経ることなく処刑されるテロリストたちである。それは<暗殺(キル)リスト>と呼ばれる。
   毎週火曜日の朝、大統領執務室で、<キル・リスト>に新たな標的をつけ加えるべきかどうかが
   検討される。(略)』


 2013年の早春、新しい名前が<キル・リスト>につけ加えられる。
 その人物は正体が曖昧模糊としており、本名は明らかでなく、インターネットで憎悪に満ちた説教を繰り返していた狂信的イスラム主義者で、「説教者」の名で呼ばれた。説教に洗脳されて西欧の各地で凶悪なテロが発生する。
 秘密組織に属する暗号名「追跡者」に、「身元を暴き、探し出し、抹殺せよ」の大統領行政命令が出された。

 このストーリーの小説が面白くないわけがない・・・筈だったのだが、これが誠に案外だった。素晴らしい食材だけを使った「美味しくないわけがない」と決めつける料理が、案外たいしたことなかったりするのと似ている。



 流転の海第二部「地の星」。

  『宿命というものが、それぞれの人間にそれぞれの境遇をもたらすのであろうが、その境遇とは、
   言葉を換えれば環境ということになる。同じ環境下にあっても、美しく咲く花もあれば、
   咲く前に散ってしまう花もある。
   その違いは、個々の花が持つ性癖は生命力といった本源的な、姿を見せない核みたいなものによって
   左右されるのであろう。

    熊吾は、市電のレールの上に落ちている、パナマ帽をかぶった自分の影を見つめながら
   そんな物思いにひたった。
    この三つは、恐ろしい敵だなと熊吾は思った。宿命、環境、自分の中の姿を見せない核・・・。
   この三つ以上に、恐ろしい敵などいない。この三つは、鎖のようにつながり、もつれ合って、
   すべての人間を幸福か不幸かのどっちかのレールに乗せる。どっちかの駅にしか着かないレールだ・・・。』


 やっぱり、読み直してよかった。凄く面白い。


  →「読んだ本 2014年8月」の記事はこちら

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