温泉クンの旅日記

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読んだ本 2016年4月

2016-05-01 | 雑読録
  <読んだ本 2016年4月>

 三月から六月まで、いやそのなかで特に四月、五月は「富山湾の光る宝石」蛍烏賊が旬で旨い。ぷっくりとした身は濃厚な味わいで、グリシンやアラニンなどの旨み成分であるアミノ酸が豊富で、とにかくこいつは酒がすすむ。



「銕(て)っつぁん、いや長谷川様、眼をつけていた妙義の団衛門の盗人宿の床下に忍びこんだところ、こんな壺をみつけてしまったんでさ」



 密偵の相模の彦十が庭先から入ってきて、縁側に壺をよいしょと置くと平蔵に言った。
「ふむ。見たところ金だったら七、八百両くらいか・・・大盗賊の団衛門にしちゃ少ねぇから引き金(隠居金)の一部かな。構うことねぇから、彦十そいつを開けてみねぇ」
「やや、金じゃねぇよォ。銕っつぁん、こいつはなんと酒だ!」
 平蔵は壺に鼻先を持っていって、くんくんと嗅ぐ。
「芋の匂いがする・・・芋酒か。こいつはいい。おれが、女房殿が茶の湯で使う湯柄杓を探してくるからな。彦よ、台所へ行って湯呑か丼でもいい、それとありあわせのつまみをみつくろって持ってきねぇ」
 平蔵は舌舐めずりをしながら親指と人指し指を、顔の前で杯を呷る仕草でくいっと動かした。



「合点、承知で。へいへい、盗人の酒の盗み酒とは、これまたどうもなんともオツなこって」

 四月の初めに宅急便で重い荷物が届いたが、大好きな「鬼平」風にいうとこんな感じになるだろう。



 なんだろうと開けてみると「甕雫(かめしずく)」という芋焼酎だった。送り手が勝手に選んだ酒でなく芋焼酎だったのがとにかく嬉しい。九州宮崎の日南、「京屋酒造」の創業はなんと天保五年(1834年)というから百八十年とえらい老舗である。
 甕に入っている量は丁度一升瓶と同じ、ただしアルコール度数は二十度と、いつも呑んでいるものより低い。書かれた度数より呑んでみるとこれが強かった。

 それでも、延べ四日でありがたく呑み切った。
 ぞくりとした気配があり、あわてて後ろを振り返ると、何ごとかいいたそうなドラえもんに扮した海が怖い眼をしていた。



(海ちゃん、頼むから細かくチェックしないでよ! しかし、その鈴だけど・・・迫力ある眼つきには似合わねぇな)
「なんか言った?」
 心読むのかこいつは。「いえ、別に。なにも」。


 さて、4月に読んだ本ですが今月は6冊、累計で27冊でした。

 1. ○愛憎 吉原裏同心十五        佐伯泰英 光文社文庫
 2.◎旅行者  上            ジョン・カッツェンバック 早川書房
 3. ○旅行者  下            ジョン・カッツェンバック 早川書房
 4. ○真夏の処刑人            ジョン・カッツェンバック 早川文庫
 5. ◎スキン・コレクター         ジェフリー・ディーヴァー 文芸春秋
 6. ○仇討 吉原裏同心十六        佐伯泰英 光文社文庫

「スキン・コレクター」は待ちに待った(図書館のネット予約だからね)リンカーン・ライムのシリーズ最新作である。
 リンカーン・ライムはプロファイルよりも物証重視、そして博覧強記だ。

  『“リンカーン・ライムの最大の強みは機先を制すること、犯人の次の行動を予測できることにある。
  その点で捜査機関の専門家はみごとに一致している”。』


 事件で採取された紙片が書籍の切れっぱしであるのがわかり、その元になった本を探し始める場面でも窺える。

  『「炭素年代測定法の誤差は三十年から四十年。しかもそれは比較的新しい対象物の場合だ。
  今回の犯人がパピルスや恐竜の皮に印刷されたページを持ち歩いていたとすれば、誤差はさらに大きくなる」
   ライムは紙片を指した。「というわけで、今回のケースに炭素年代測定法は向かない」
  「それでも、過去三十年から四十年のあいだに印刷されたものかどうかはわかるわけでしょう」
  「そのことはすでにわかっている」ライムはぴしゃりと言った。「一九九〇年代に印刷されたと考えて
  まず間違いないだろう。だが、もう少し時期を絞りこみたい」
   今度はセリットーが眉根を寄せた。「どうして九〇年代だとわかるんだ、リンカーン?」
  「書体だ。ミリアドという書体でね。アドビ社のロバート・スリムバックとキャロル・トゥオンブリが
  デザインしたものだ。のちにアップル社のロゴの書体に採用された」
  「私にはほかのサンセリフ体と変わらないように見えるけど」サックスが言った。
  「“y”の下に延びる線や、”e”の傾斜角度が特徴だ」
  「あの、そんなことまで勉強したんですか」プラスキーが言った。科学捜査に関する自分の知識に開いた
  大穴に呑みこまれかけて怯えているような顔をしていた。』


「ボーン・コレクター」を読んでいないひとはまずそちらからお読みすることをお勧めする。
 リンカーン・ライムのシリーズは、できれば毎年一冊ずつでも読みたい本である。



「旅行者」は海外ミステリーでは珍しく、上巻から面白くなり下巻で若干失速してしまった本だった。けれども面白かったのは間違いない。

 マイアミ市警の女刑事マーセデス・バレンは可愛がっていた姪のスーザン・ルイスをシリアルキラーに殺されてしまう。

  『ゆっくりとその女性の品定めをするひまはなかったが、マーティンは彼女の年齢が自分とあまり
  変わらないことをすばやく見てとった。つづいて、ダークブラウンの髪、保守的だがスタイリッシュな
  シルクのドレス、ほっそりした身体を眺め、相手の目にじっと見入った。刑事の目は黒く、彼を見つめる
  視線はゆるぎもしないようだった。ふつうなら、男の本能で彼女が魅力的かどうか見定めるところだが、
  その強烈な視線を浴びせられるとその欲求も消えた。死刑執行人に、どのくらいの力で斧を振りおろせば
  首が落ちるだろうかと判断されているような不安を覚えた。』

 さすが、復讐に燃える女刑事(主人公)と思わせる描写である。


  →「読んだ本 2016年3月」の記事はこちら

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