温泉クンの旅日記

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奥州の薬湯、鎌先温泉(3)

2022-12-18 | 温泉エッセイ
  <奥州の薬湯、鎌先温泉(3)>

(しまった、寝すぎてしまったぞ!)
 朝が明けきっていた。(それって、ふつうに早起きじゃんか!)
 いつも夜明けとともに起きるのだが、ひたすら眠りをむしゃむしゃと貪ってしまったようだ。身づくろいを整え、一番人気の露天風呂に急ぐ。
 更衣室の入口ですれ違った先客と、タッチして入れ替わるようにリングに、じゃなかった露天風呂スペースに素早く入りこむ。

 

 古代檜の浴槽の、木肌の心地がなんとも気持ちいい。檜の香りはすっかり抜けてしまったのか、かすかな風のせいなのか匂わない。

 

 朝を忘れるほど眠ってしまったのは、仙台駅前の蕎麦屋で呑みそこなった地酒を仙台駅で調達、調子にのってガンガン呑みすぎて起きられなかったのだろうか。
 はたまた、どこかしらの忘れてしまった古傷に、奥州の薬湯がばっちり効いて安眠をもたらしたのか。
 フーテンの寅さんのセリフに「そこが、渡世人のつれえところよ!」てえのがあるが、身過ぎ世過ぎ(渡世)が大変なのは、テキヤ稼業もサラリーマン稼業もさほど変わらない。人に言えねえ苦労も、厭な思いをしたこともたんまりある。

 

 商売相手の社外に対しては忍耐ととにかく誠実を尽くすのみだが、社内のほうが厄介だ。
 陰口や誹謗中傷は慣れれば馬耳東風、別にどうということはない。ただ、こいつだけはと信じていた人間に裏切られて、強いと思っていた心にスパっと“かまいたち”の深い傷ができたりすることもあったし、まあそれに、たいがいの男なら「脛(すね)に瘡」のひとつやふたつ持っている(のではないか)。
 なにはともあれ、久しぶりの熟睡である。たまにはいいじゃないか、人間だもの。

 部屋に戻り、着替えて朝食まで散策することにした。

 

 一階のロビースペースに降りると、地図を広げて、今日の経路を仔細に検討している若い二人組がいた。風体格好から見て、ライダーの旅行客かもしれない。

 

 泊まった宿の前にある「Café & Shop 粋(すい)」は、温泉地唯一の土産店兼カフェだ。
 ただし金曜から月曜まで週四日営業で、珈琲、ソフトドリンクにデザート、アルコールや白石温麺などの 軽食などを提供している。
 営業時間が朝9時から夜5時までなので、まだ開店前だ。

 

 温泉町の一本奥の通りにも宿は並んでいた。どこも間口が広い。どこも朝食時間なのだろう、通りにはまるでひと気がなかった。
 手前右側にある「最上屋旅館」は、たしか鎌先温泉で唯一いまだに湯治ができる宿である。

 

 広い駐車場のそばにバス停があった。
 バスは一日4本のようだ。東北を旅してる今、果たして多いのだか少ないのか判然としない。宿で送迎してくれるので、使わないで済むのが、ありがたい。

 

 バスの経由地のひとつ「蔵王キツネ村」はコロナ禍前には、外国人観光客に超人気だったところである。ふむ、経由地の「遠刈田」までいけば「峩々温泉」も近い・・・な。

 やっと時間となり、待ちに待った朝食が部屋に運ばれてきた。

 

 温野菜のタジン鍋、焼き魚、小鉢など彩り豊かだが、野菜多めの女性好みという感じである。米は「ひとめぼれ」の炊きたてで、こいつのメシは旨かった。おかず少なめでも、たっぷり二杯食べてしまった。

 

 送迎時間までだいぶあるので、缶コーヒーと仙台駅ビル地下で求めたバラの「萩の月」でも味わいながら、ゆっくり一服することにした。



  →「奥州の薬湯、鎌先温泉(1)」の記事はこちら
  →「奥州の薬湯、鎌先温泉(2)」の記事はこちら
  →「峩々温泉(1)」の記事はこちら
  →「峩々温泉(2)」の記事はこちら
  →「峩々温泉(3)」の記事はこちら
  →「峩々温泉(4)」の記事はこちら


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