< 魔力 (続なか締め)>
「あァた、タクなどお肌のために、宅の主人とモウ毎週欠かさずどこかぁ~の温泉
へ行くざ~ます、ベンツで。オーホホホ」
東横沿線のデンエンナンチャラやらカンチャラガオカ、小田急沿線のセージョオ
あたりのキンキラネックレスに鼈甲ぶちの眼鏡かけた金満有閑マダムが、おっ広げ
た鼻の穴と光る金歯のへんを抑えながらいかにも言いそうなセリフである(いかに
も、でないしぃー、絶対言わないって)。
金満美肌マダムの言う「欠かさず毎週」でも年に五十二湯である(これが言いた
かった)。
必ず週二で――百飛んで四湯、週三でええと百五十六湯、週四で・・・二百飛び
八湯となる。週四はとにかくすごい。やだわあもう奥様ったらあ、ではない。
ううむ・・・普通は月一でも上等、頑張っても月二ぐらいでもう「いっぱいいっぱ
い」ではなかろうか、なあご同輩諸氏。あれれ、これって、あくまでも温泉の話で
あるぞなもし。
とにかく、「なか締め」で書いた年に二百九湯は、とんでもなく大たわけで超弩
級、アホラシィー温泉数であると納得できるわけだ。
温泉数、締めて計1006湯の、地域別の内訳を集計したら次のようになった。
○北海道 94湯
○東北 180湯
○関東 272湯
○甲信越 259湯
○北陸 23湯
○東海 100湯
○近畿 12湯
○中国 21湯
○四国 11湯
○九州 34湯
「よしよし、東北支店の高橋クンもあいかわらずに順調に頑張っているな、飛ばし
て二年か・・・そろそろ本社に戻してやってもいいかナア人事部長」
などと、不動産会社の社長が、先月分のエリア別の売り上げを評価吟味している
ような気分になってくる。集計された数字とは誠に不思議なものである。
さすがに関東と甲信越は、早朝にでて夜に帰ってくるようなキツイ日帰りでも
行けるところも多いので湯数が伸びているなあ。北海道も健闘しとるが、九州は、
まだまだだなあ。
都道府県別に集計すると、ベスト5の1位が蕎麦のうまい長野県130湯、僅差
で2位群馬県126湯、3位に北海道が登場し94湯、4位が行きやすい静岡83
湯となり、5位が酒のうまい新潟県の77湯であった。温泉数「ゼロ」の都道府県
が、京都・大阪・奈良・沖縄の四県あった。沖縄以外は飛行機を使わないでいける
ので、あまりそそられる県ではないが、そのうち西に行ったときにオマケに制覇し
よう。
「オマエさー、どうしてまあそんなに、温泉が好きなの」
「うぐぐ・・・・・・」
旅好きをわりとひた隠しにしているが、たまに酒に酔ってうっかり温泉旅の話を
して止まらなくなってしてしまい、そのうちズバリ素朴にこう聞かれ、返答に窮し
て一瞬眼が泳ぎアウアウ状態になってしまう。
そう簡単には説明ができないのだ。
そうだ。海外に行ったこと・・・あるかな。
海外旅行に行くと、たいていひとが変わるのではないか。遅寝、早起きになり、
ワクワクドキドキハラハラの濃密な時間の連続である。ある意味で童心にかえっ
て、ひたすら旅を楽しむわけだ。ふだん引っ込み思案の人間でも驚くほど積極的に
なるし、英語がまるで駄目でも物怖じせず、平気で胸張って外国の街を闊歩する。
K-1に出場しそうな怖そうな大男にでも、無遠慮にカメラのシャッターを平気で
押してしまう。
超積極的になった片鱗は、カタコト英語にも反映する。やたら感嘆符が多くなる
のだ。
パチンと指を鳴らしてイエローキャブに乗り込むと、行きたい場所を地図で指し
示し「アイ・ワントゥ・ゴー!」で行っちゃうし、メニューも読めないレストラン
では、周りを見渡して静かに食事しているひとをやおら指差し「セィム スィン
グ!お願いね」。土産物屋に行けば「ハウマッチ!」と巻き舌を使い、値段を聞き
取れないのに「オゥ、ヴェリィ エクスペンシーヴね!」と両手のひら広げて肩を
すくめる。
霧につつまれたホテルの最上階のバーにズンズンはいっていけば、これだけは
通じる「スカッチアンドワラー、プリーズ!」を高らかにオーダーし、ピアノ弾き
に五ドル紙幣渡して「アイ・レフト・マイハート・イン・サンフランシスコ、
プリィーズ!」とウインクする。
とにかあーく、子どものように疲れをしらず、新鮮で濃密な時間を過ごす。すべ
てが楽しい。
だから、一週間ぐらいの海外旅行でも、帰ってくると一ヶ月ぐらい日本を留守に
していた気分になる。
よし、明日からは無駄遣いをやめて次は「どこどこ国」になるべく早く行きた
い。いや、行こう。
日本に帰ったばかり、まだ家についていない「へとへと」状態なのに、次の海外
旅行を決心してしまう。これが、海外旅行の魔力であろう。
――わたしの温泉旅もそれにかなり近い。心底楽しいのだ。間違いなく、そこに
も魔力があるのである。
「あァた、タクなどお肌のために、宅の主人とモウ毎週欠かさずどこかぁ~の温泉
へ行くざ~ます、ベンツで。オーホホホ」
東横沿線のデンエンナンチャラやらカンチャラガオカ、小田急沿線のセージョオ
あたりのキンキラネックレスに鼈甲ぶちの眼鏡かけた金満有閑マダムが、おっ広げ
た鼻の穴と光る金歯のへんを抑えながらいかにも言いそうなセリフである(いかに
も、でないしぃー、絶対言わないって)。
金満美肌マダムの言う「欠かさず毎週」でも年に五十二湯である(これが言いた
かった)。
必ず週二で――百飛んで四湯、週三でええと百五十六湯、週四で・・・二百飛び
八湯となる。週四はとにかくすごい。やだわあもう奥様ったらあ、ではない。
ううむ・・・普通は月一でも上等、頑張っても月二ぐらいでもう「いっぱいいっぱ
い」ではなかろうか、なあご同輩諸氏。あれれ、これって、あくまでも温泉の話で
あるぞなもし。
とにかく、「なか締め」で書いた年に二百九湯は、とんでもなく大たわけで超弩
級、アホラシィー温泉数であると納得できるわけだ。
温泉数、締めて計1006湯の、地域別の内訳を集計したら次のようになった。
○北海道 94湯
○東北 180湯
○関東 272湯
○甲信越 259湯
○北陸 23湯
○東海 100湯
○近畿 12湯
○中国 21湯
○四国 11湯
○九州 34湯
「よしよし、東北支店の高橋クンもあいかわらずに順調に頑張っているな、飛ばし
て二年か・・・そろそろ本社に戻してやってもいいかナア人事部長」
などと、不動産会社の社長が、先月分のエリア別の売り上げを評価吟味している
ような気分になってくる。集計された数字とは誠に不思議なものである。
さすがに関東と甲信越は、早朝にでて夜に帰ってくるようなキツイ日帰りでも
行けるところも多いので湯数が伸びているなあ。北海道も健闘しとるが、九州は、
まだまだだなあ。
都道府県別に集計すると、ベスト5の1位が蕎麦のうまい長野県130湯、僅差
で2位群馬県126湯、3位に北海道が登場し94湯、4位が行きやすい静岡83
湯となり、5位が酒のうまい新潟県の77湯であった。温泉数「ゼロ」の都道府県
が、京都・大阪・奈良・沖縄の四県あった。沖縄以外は飛行機を使わないでいける
ので、あまりそそられる県ではないが、そのうち西に行ったときにオマケに制覇し
よう。
「オマエさー、どうしてまあそんなに、温泉が好きなの」
「うぐぐ・・・・・・」
旅好きをわりとひた隠しにしているが、たまに酒に酔ってうっかり温泉旅の話を
して止まらなくなってしてしまい、そのうちズバリ素朴にこう聞かれ、返答に窮し
て一瞬眼が泳ぎアウアウ状態になってしまう。
そう簡単には説明ができないのだ。
そうだ。海外に行ったこと・・・あるかな。
海外旅行に行くと、たいていひとが変わるのではないか。遅寝、早起きになり、
ワクワクドキドキハラハラの濃密な時間の連続である。ある意味で童心にかえっ
て、ひたすら旅を楽しむわけだ。ふだん引っ込み思案の人間でも驚くほど積極的に
なるし、英語がまるで駄目でも物怖じせず、平気で胸張って外国の街を闊歩する。
K-1に出場しそうな怖そうな大男にでも、無遠慮にカメラのシャッターを平気で
押してしまう。
超積極的になった片鱗は、カタコト英語にも反映する。やたら感嘆符が多くなる
のだ。
パチンと指を鳴らしてイエローキャブに乗り込むと、行きたい場所を地図で指し
示し「アイ・ワントゥ・ゴー!」で行っちゃうし、メニューも読めないレストラン
では、周りを見渡して静かに食事しているひとをやおら指差し「セィム スィン
グ!お願いね」。土産物屋に行けば「ハウマッチ!」と巻き舌を使い、値段を聞き
取れないのに「オゥ、ヴェリィ エクスペンシーヴね!」と両手のひら広げて肩を
すくめる。
霧につつまれたホテルの最上階のバーにズンズンはいっていけば、これだけは
通じる「スカッチアンドワラー、プリーズ!」を高らかにオーダーし、ピアノ弾き
に五ドル紙幣渡して「アイ・レフト・マイハート・イン・サンフランシスコ、
プリィーズ!」とウインクする。
とにかあーく、子どものように疲れをしらず、新鮮で濃密な時間を過ごす。すべ
てが楽しい。
だから、一週間ぐらいの海外旅行でも、帰ってくると一ヶ月ぐらい日本を留守に
していた気分になる。
よし、明日からは無駄遣いをやめて次は「どこどこ国」になるべく早く行きた
い。いや、行こう。
日本に帰ったばかり、まだ家についていない「へとへと」状態なのに、次の海外
旅行を決心してしまう。これが、海外旅行の魔力であろう。
――わたしの温泉旅もそれにかなり近い。心底楽しいのだ。間違いなく、そこに
も魔力があるのである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます