<ハミルトン宇礼志野(2)>
朝、大浴場で髭を剃っていると、露天風呂のほうから中国語が聞こえてきた。
なにを喋っているか丸でわからないが、中国人はどうしてあんなに大声を出すのだろう。
昨晩、温泉街に出て名物の温泉湯豆腐などあれやこれやで一杯というかイッパイやって宿に戻った。温泉湯豆腐は兵庫湯村温泉のほうが旨かった。ただの豆腐なら盛岡の豆腐のほうが上だ。
雰囲気のありそうな宿のバーで軽くウィスキーでもと思ったら、中国人の一団が陣取っていてそのあまりの五月蠅さに辟易して身を翻すと、ウェイターが飛んできて「誠に申し訳ありません。ルーム・サービスでもご提供していますので、なにとぞご利用ください」とひたすら謝る。
近頃どこへ行っても出会う中国の富裕層は、この宿にとっても大事な客層なのだろう。
空いている大浴場で湯を浴びて、部屋に戻り、電話をかけてウィスキーの水割りを注文したのだった。
露天風呂から二人の中国人が出てきたので、入れ替わりに露天風呂にはいることにした。この宿でいろいろ入ったが、最初の貸切露天の温泉の泉質が一番いい。
「○×△■?」
掛け湯をたっぷりして脱衣場に戻ると、自前で持ってきたようなバスローブと宿の浴衣をきた中国人に話しかけられた。
指差すほうをみると、どうやら化粧品を説明してほしいらしい。
持っているのはヘアトニックの瓶だ。さあ、わたしの拙い英語がはたして通じるのだろうか。
「アフタァーシャンプーゥ、ユー、ユーズ、ディスリキッド」
頭に振りかけるジェスチャーもいれたので、納得したようだ。バスローブが浴衣に説明している。
しかし、いくら拙いといっても、もう少しまともな英語をオレは使えないものかと恥じ入ってしまう。
二個目の瓶を目の前に差し出した。みるとヘアーリキッドである。
「ユー、ユーズ、ザット(トニック)、アフター、ユー、ユーズ、ディスワン」
(なんか、中学生以下の英語だなあ・・・)
またバスローブが浴衣に説明し、じゃあこれは、と三個目はアフターシェービングの化粧水を出すので、もういいや開き直るしかない。
「アフタァーシェーブ、ユー、ユーズ、ライク、ディス」
髭そりのジェスチャーと、ローションを顎や頬に叩き塗る仕草をつけて説明した。
「謝謝!」
「ユア、ウエルカム」
早々に浴衣に着替えると部屋に戻り、一服つける。
「ああ、ホント拙かったな。もう少しまとも英語話せればよかったのに・・・」
と、思わず嘆いてしまう。
お湯を沸かしてお茶をいれて、すこし落ち着くことにしよう。
さきほどまで静かだった中庭が喧しい。
さっきのバスローブを着ていた中国人がリーダーで何事かを喋っているが、わたしの顔を見つけて片手をあげた。
いっせいに全員がわたしを見上げたので、しかたなく片手をあげて答えた。
嬉野温泉で、なんとなく日中友好の小さな一環の役目をわたしは果たしたのだろうか。
それにしても「アフタァーシャンプーゥ」はひどかったかな。いいやリセットリセット、忘れてしまおう。
→「ハミルトン宇礼志野(1)」の記事はこちら
朝、大浴場で髭を剃っていると、露天風呂のほうから中国語が聞こえてきた。
なにを喋っているか丸でわからないが、中国人はどうしてあんなに大声を出すのだろう。
昨晩、温泉街に出て名物の温泉湯豆腐などあれやこれやで一杯というかイッパイやって宿に戻った。温泉湯豆腐は兵庫湯村温泉のほうが旨かった。ただの豆腐なら盛岡の豆腐のほうが上だ。
雰囲気のありそうな宿のバーで軽くウィスキーでもと思ったら、中国人の一団が陣取っていてそのあまりの五月蠅さに辟易して身を翻すと、ウェイターが飛んできて「誠に申し訳ありません。ルーム・サービスでもご提供していますので、なにとぞご利用ください」とひたすら謝る。
近頃どこへ行っても出会う中国の富裕層は、この宿にとっても大事な客層なのだろう。
空いている大浴場で湯を浴びて、部屋に戻り、電話をかけてウィスキーの水割りを注文したのだった。
露天風呂から二人の中国人が出てきたので、入れ替わりに露天風呂にはいることにした。この宿でいろいろ入ったが、最初の貸切露天の温泉の泉質が一番いい。
「○×△■?」
掛け湯をたっぷりして脱衣場に戻ると、自前で持ってきたようなバスローブと宿の浴衣をきた中国人に話しかけられた。
指差すほうをみると、どうやら化粧品を説明してほしいらしい。
持っているのはヘアトニックの瓶だ。さあ、わたしの拙い英語がはたして通じるのだろうか。
「アフタァーシャンプーゥ、ユー、ユーズ、ディスリキッド」
頭に振りかけるジェスチャーもいれたので、納得したようだ。バスローブが浴衣に説明している。
しかし、いくら拙いといっても、もう少しまともな英語をオレは使えないものかと恥じ入ってしまう。
二個目の瓶を目の前に差し出した。みるとヘアーリキッドである。
「ユー、ユーズ、ザット(トニック)、アフター、ユー、ユーズ、ディスワン」
(なんか、中学生以下の英語だなあ・・・)
またバスローブが浴衣に説明し、じゃあこれは、と三個目はアフターシェービングの化粧水を出すので、もういいや開き直るしかない。
「アフタァーシェーブ、ユー、ユーズ、ライク、ディス」
髭そりのジェスチャーと、ローションを顎や頬に叩き塗る仕草をつけて説明した。
「謝謝!」
「ユア、ウエルカム」
早々に浴衣に着替えると部屋に戻り、一服つける。
「ああ、ホント拙かったな。もう少しまとも英語話せればよかったのに・・・」
と、思わず嘆いてしまう。
お湯を沸かしてお茶をいれて、すこし落ち着くことにしよう。
さきほどまで静かだった中庭が喧しい。
さっきのバスローブを着ていた中国人がリーダーで何事かを喋っているが、わたしの顔を見つけて片手をあげた。
いっせいに全員がわたしを見上げたので、しかたなく片手をあげて答えた。
嬉野温泉で、なんとなく日中友好の小さな一環の役目をわたしは果たしたのだろうか。
それにしても「アフタァーシャンプーゥ」はひどかったかな。いいやリセットリセット、忘れてしまおう。
→「ハミルトン宇礼志野(1)」の記事はこちら
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