困窮生活にかかわらず、少しも貧乏くさいところがなく、甘美な情緒さえたたえ、力まず、気取らず、よごれず、遥々とし美の国に遊んでいる。絵のかき方は南画だが、南画といっても児童画のような自由さをはらみ、香り高い色感をもっている。よくもこの境地まで行ったものだ。世間に画家は多いし、えらい人も多い。しかし、その中でこの名も無く貧しい画家がひとり静かに実現しているものは、決して見過ごすべきものではない、画家らしい画家のひとりがこんなところにもいたことを私は喜ぶ。その画家の名は楠瓊州である。 . . . 本文を読む