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大津絵の対幅というものは存在しないので、たまたま二幅を入手したので一緒に表具した作品ということでしょう。
大津絵 その15 若衆と座頭 双幅
紙本着色軸装 軸先鹿骨 由来箱書箱双幅
各々全体サイズ:縦1478*横287 画サイズ:縦695*横225
箱には「鳥羽絵対幅 古画」とありますが、「鳥羽絵」ではなく「大津絵」が正しいでしょう。裏には「昭和参六年八月七日祥日臨□布□松堂書写」とあります。
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若衆:美少年に女に近い着物を着せています。二刀差であることが、男であることを語っています。
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元禄のころからの淫蕩の風の現れであって、図としても浮世絵の影響の強い大津絵の一例と伝えられるものです。
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ただこの若衆には色々の姿があって、また着物等の美しい模様のものがあって、女姿の大津絵の一群としても大いに特色があります。
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文献的には宝永、正徳の頃に度々現れてくるが、後年の画題には「馬乗若衆」もあります。本作品の図柄は非常に珍しい図です。
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座頭:大津絵には江戸後期に絵種を十種に絞り、もっぱら護符として売られた時代がありまた。文化・文政の頃から徐々に大津絵の主となり、幕末には他の図柄はほとんど描かれなくなってしまったようです。人気は依然高かったものの、初期の風格を失い、美術価値が低いとされることも多い時期です。
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座頭が犬に褌を銜えられる様子を描いた図で、目が不自由だからこそ気をつけているはずが、意外なものに足元をすくわれることがあるという風刺画です。現在ではあまり人気のある絵とは言えませんが、かつては大津絵十種に選ばれるほどで、種類も多く創られています。
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確かに現代人の感覚で、盲人を嘲笑した絵と取れば、受け入れられないのも無理はありません。ただ、この絵の時代の「座頭」というのは幕府の公認と保護を受けた有る程度の権威を持つ「当道座」に所属する人間であり、庶民にすれば、しばしば悪徳高利業者として描かれることのある「検校」を頭とする組織の一員でした。座頭そのものはその組織の下位の人間であるものの、この絵ではそういった「権威」の象徴として扱われています。「鬼の寒念佛」で僧を、「奴」で武士を笑い飛ばしたように、この絵で笑われたのはそういった「座」そのものでした。
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座頭が狼狽する姿は、庶民を省みない権威はいずれその庶民の突き上げをくらうだろう、といった意味を持っています。そのような事情が有る絵ですが、時代の趨勢としては消えるのも致し方ないのかもしれません。
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まるで光悦、送達のようなたらし込みのような犬の描き方・・
実に愛嬌があって良き作品です。
中期以後の画題なのか、二枚版の佳作はそうたくさんは残っていないそうです。この座頭に関する文献は宝永より安永までたくさん現れてくるそうです。
大津絵 その15 若衆と座頭 双幅
紙本着色軸装 軸先鹿骨 由来箱書箱双幅
各々全体サイズ:縦1478*横287 画サイズ:縦695*横225
箱には「鳥羽絵対幅 古画」とありますが、「鳥羽絵」ではなく「大津絵」が正しいでしょう。裏には「昭和参六年八月七日祥日臨□布□松堂書写」とあります。
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若衆:美少年に女に近い着物を着せています。二刀差であることが、男であることを語っています。
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元禄のころからの淫蕩の風の現れであって、図としても浮世絵の影響の強い大津絵の一例と伝えられるものです。
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ただこの若衆には色々の姿があって、また着物等の美しい模様のものがあって、女姿の大津絵の一群としても大いに特色があります。
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文献的には宝永、正徳の頃に度々現れてくるが、後年の画題には「馬乗若衆」もあります。本作品の図柄は非常に珍しい図です。
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座頭:大津絵には江戸後期に絵種を十種に絞り、もっぱら護符として売られた時代がありまた。文化・文政の頃から徐々に大津絵の主となり、幕末には他の図柄はほとんど描かれなくなってしまったようです。人気は依然高かったものの、初期の風格を失い、美術価値が低いとされることも多い時期です。
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座頭が犬に褌を銜えられる様子を描いた図で、目が不自由だからこそ気をつけているはずが、意外なものに足元をすくわれることがあるという風刺画です。現在ではあまり人気のある絵とは言えませんが、かつては大津絵十種に選ばれるほどで、種類も多く創られています。
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確かに現代人の感覚で、盲人を嘲笑した絵と取れば、受け入れられないのも無理はありません。ただ、この絵の時代の「座頭」というのは幕府の公認と保護を受けた有る程度の権威を持つ「当道座」に所属する人間であり、庶民にすれば、しばしば悪徳高利業者として描かれることのある「検校」を頭とする組織の一員でした。座頭そのものはその組織の下位の人間であるものの、この絵ではそういった「権威」の象徴として扱われています。「鬼の寒念佛」で僧を、「奴」で武士を笑い飛ばしたように、この絵で笑われたのはそういった「座」そのものでした。
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座頭が狼狽する姿は、庶民を省みない権威はいずれその庶民の突き上げをくらうだろう、といった意味を持っています。そのような事情が有る絵ですが、時代の趨勢としては消えるのも致し方ないのかもしれません。
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まるで光悦、送達のようなたらし込みのような犬の描き方・・
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中期以後の画題なのか、二枚版の佳作はそうたくさんは残っていないそうです。この座頭に関する文献は宝永より安永までたくさん現れてくるそうです。