表具の具合が悪かった下記の作品が修理を終え、少し乾燥させるために展示室に飾りました。
観桜二美人図 松村梅叟筆
絹本着色軸装 軸先骨 誂太巻二重箱
全体サイズ:縦2185*横510 画サイズ:縦1290*横360
天地が痛んでいたので交換しました。表具が痛むのは天地からですので、早めに天地交換しておくのはいいことだと思います。ほとんど元の表具のままで改装の半額程度(一万円以下で可能)でできます。ついでに箱は太巻きの二重箱を誂えました。
*美人画の良い作品は太巻二重箱が原則です。
さてその脇に置いてある作品は何度か挑戦してものの見事に期待を裏切られている信楽の作品。
当方にては一作品の壺と北大路魯山人の信楽の作品のみが現在氏素性がしっかりしているある作品として評価していますが、なかなか信楽の壺は難敵です。ただいつでも挑戦する意欲がないと趣味も仕事もまともに過ごせないの小生の性分。今回もちょっと挑戦・・。
氏素性の解らぬ作品 信楽壷 蹲 時代不詳
誂箱入
外口径*胴径130*底径*高さ158
蹲(うずくまる)について復讐、もとい復習してみましょう。
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蹲(うずくまる):花入に転用された壺です。
古信楽や古伊賀のものが有名ですが、備前や唐津にも蹲の小壺が伝世します。名の由来は人が膝をかかえてうずくまるような姿からきています。
もともとは穀物の種壺や油壺として使われた雑器を、茶人が花入に見立てたものです。文献によれば江戸時代に入ると蹲という呼称が定着しています。なお信楽の蹲は古いもので鎌倉末~室町時代から伝世しています。
おおむね20cm前後の小壺で、掛け花入れ用の鐶(かん:環状の金具)の穴があいているものもあります。そこに金具を入れて壁に掛けて使われるわけです。
形は背が低くずんぐりとしており、胴が張り出しています。丈の詰まったものが一般的に見られる形となります。作品の表面は、紐作りの段によって微妙に波打っています。灰のかぶったところには焦げと自然釉が、灰のない部分には緋色が出ています。選ぶさいには焼き締めならではの肌の表情、全体の形を見るとよい。侘びた風情と愛嬌のあるずんぐりした姿が蹲の魅力といえます。肩から丸みをもって膨らみ胴が張ったもの、高さと胴の径が同じくらいの長さで丸みのある器形がよい。
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本作品には桧垣文や窯印もなく、自然釉薬の掛かり少ない端正な小壺です。
ただ信楽の「蹲」の特徴は備わっているようです。
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形の特徴:信楽の作品の大きな魅力に形の力強さがあります。横から見ますと胴が幾つかに分けて継がれながら出来ている痕跡を見る事ができます。胴が側面で段をなしているように継ぎ目の角度が違って、遠くから見ると非常に力強い造形を楽 しませてくれます。
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時代はよくわかりませんが、よくある模倣作品(いわゆる贋作)の可能性はあるでしょう。贔屓目にみるとなんとなく現代の作ではないように思います。
内側は丁寧に仕上げられているのが信楽の特徴とか?
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蹲の口作り:蹲の口は特徴的なものといえる。段が入り二重口といいます。
現代作品ならば装飾かもしれませんが、当時はこの二重口が必要だった理由があります。蹲はもともと日用雑器であり、ゆえに乾燥させた穀物を貯蔵したら首に縄を巻き付け、そのまま背負って運ぶこともあれば、吊るして天日干ししたとも言われます。
縛ればまとめて小壺を運ぶことも出来たでしょうし、吊るせば穀物を狙う鼠などの害を避けられます。または木蓋をして縄をくくり付けるためのものという説もあります。しかしその用途であれば、四耳壺(しじこ)や茶入に見られるような「耳」の方が縄をくくり付けやすいでしょう。縄を締めずとも二重口が取手になって持ちやすいです。いずれにせよ実用性を重視した作りになっているのは確かです。そして実用的な二重口は、口縁部の装飾としても美しく口縁部にメリハリが出ます。紐をしめて運び、また壺を吊るしている中世の人々を想像しながら選ぶのも楽しい器です。
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贋作によくあるべたべた感はさすがに今回はないものを選びました。
信楽の作品を簡単に言うと下記にポイントがあるようです。
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蹲の特徴
・内側は驚くほどなめらかに仕上げられている。(本歌の証?)
・高台は下駄をはいているものがある。
・桧垣文のあるものは評価が高い。
・口は二重口
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以上のような記述は資料には多々あるのですが、実際の判別は非常に難しそう・・。
口造りは力強さのあるものがポイントらしいです。縄を掛けても落ちないもの・・。贋作は実用的に考えられていないとか・・。
実際に縄を掛けてみようかな?
信楽などの古壺には下駄印と呼ばれるものがあります。本作品にもありますが、明確ではない? 明確でないものは贋作が多いらしい?
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下駄印:蹲は高台を持たずベタ底ですが、中には凹凸のある作例があります。これは下駄の歯に見えることから下駄印(げたいん)と呼ばれます。
下駄印が凹んだものを「入り下駄」、凸のものを「出下駄」といいます。これは作品をロクロ引きするさいに、中心がずれないよう固定した跡といわれます。こうするとロクロからの離れもよく、焼成しても底に隙間ができるのでくっつきにくくなります。
下駄印も二重口と同様、実用的な作りが装飾として見どころになった一例といえます。信楽や伊賀の作品をはじめ、備前や唐津などそれぞれの土味を活かした作品が作られています。その独特の形と表情を楽しめることでしょう。
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模倣作品にも窯印や下駄印をわざとつけている作品もありますので、あるからといって時代のあるものとは限ららないようです。
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長石が全面に出ている:これは信楽のもっとも代表的な鑑定ポイントです。つぶつぶの大きな白い長石 が肌から全面に吹き出ているように出ています。
壷ならかなりの確率で信楽ですし、花入れ、水差しなどの茶道具でしたら伊賀を思い浮かべるべきでしょう。
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記事の内容ななんども本ブログに投稿している内容です。繰り返し繰り返し読み、実物との比較して、さらには真作と見比べて現在勉強中です。
家内曰く、「現代作の贋作でも面白いものは面白いわよ!」だと・・。この割り切りは小生には嫌味かエールか?
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ウニ:信楽の土は荒めの風化花崗岩で粘土の中に風化しきってない木の節が混ざっているものがあります。これを木節粘土(きぶしねんど)といいます。この節が粘土の中に入りますと、燃焼したときに高温で燃えてしまいます。するとその節があったところは空洞になります。これを語源はわかりませんが「ウニ」といいます。ですから大きな「ウニ」になりますと中から外へと穴が抜けてしまっているものがあります。
壷ですと穴があいていては、役に立たないので破棄されてきました。多くの信楽のやきものにはこのウニが表面や裏側に見ることができます。この木節粘土が高 温で焼かれると、マニアの間で「ビスケット肌」ともいわて愛玩されます。あたかも割れたビスケットの肌を見たような感じになります。
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これくらいはまともな信楽の土を使って入れば再現できしょうですね。
本作品はとのもかくにもそれららしいのだが、家内の言い分が正しいようで・・・。
それらしいものを購入する、それが今の自分の実力ということでしょう。
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信楽には茶道の「侘び・寂び」の雰囲気があります。飛び出ている長石、木節によって穴のあいた地肌、ビスケット肌。淡いグリーンの自然釉。その素朴でいて力強い造形を持つ信楽は日本人を魅了して止まないやきものだと思います。
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小生の最後の難関は信楽と李朝と刀剣・・・。ここを乗り切るのはお金をかけるしかないかもしれません。
さて、箱もなにもない、氏素性の解らぬ作品、以下に処すべきや 家内の言うところが真なりやいなや・?・?
観桜二美人図 松村梅叟筆
絹本着色軸装 軸先骨 誂太巻二重箱
全体サイズ:縦2185*横510 画サイズ:縦1290*横360
天地が痛んでいたので交換しました。表具が痛むのは天地からですので、早めに天地交換しておくのはいいことだと思います。ほとんど元の表具のままで改装の半額程度(一万円以下で可能)でできます。ついでに箱は太巻きの二重箱を誂えました。
*美人画の良い作品は太巻二重箱が原則です。
さてその脇に置いてある作品は何度か挑戦してものの見事に期待を裏切られている信楽の作品。
当方にては一作品の壺と北大路魯山人の信楽の作品のみが現在氏素性がしっかりしているある作品として評価していますが、なかなか信楽の壺は難敵です。ただいつでも挑戦する意欲がないと趣味も仕事もまともに過ごせないの小生の性分。今回もちょっと挑戦・・。
氏素性の解らぬ作品 信楽壷 蹲 時代不詳
誂箱入
外口径*胴径130*底径*高さ158
蹲(うずくまる)について復讐、もとい復習してみましょう。
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蹲(うずくまる):花入に転用された壺です。
古信楽や古伊賀のものが有名ですが、備前や唐津にも蹲の小壺が伝世します。名の由来は人が膝をかかえてうずくまるような姿からきています。
もともとは穀物の種壺や油壺として使われた雑器を、茶人が花入に見立てたものです。文献によれば江戸時代に入ると蹲という呼称が定着しています。なお信楽の蹲は古いもので鎌倉末~室町時代から伝世しています。
おおむね20cm前後の小壺で、掛け花入れ用の鐶(かん:環状の金具)の穴があいているものもあります。そこに金具を入れて壁に掛けて使われるわけです。
形は背が低くずんぐりとしており、胴が張り出しています。丈の詰まったものが一般的に見られる形となります。作品の表面は、紐作りの段によって微妙に波打っています。灰のかぶったところには焦げと自然釉が、灰のない部分には緋色が出ています。選ぶさいには焼き締めならではの肌の表情、全体の形を見るとよい。侘びた風情と愛嬌のあるずんぐりした姿が蹲の魅力といえます。肩から丸みをもって膨らみ胴が張ったもの、高さと胴の径が同じくらいの長さで丸みのある器形がよい。
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本作品には桧垣文や窯印もなく、自然釉薬の掛かり少ない端正な小壺です。
ただ信楽の「蹲」の特徴は備わっているようです。
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形の特徴:信楽の作品の大きな魅力に形の力強さがあります。横から見ますと胴が幾つかに分けて継がれながら出来ている痕跡を見る事ができます。胴が側面で段をなしているように継ぎ目の角度が違って、遠くから見ると非常に力強い造形を楽 しませてくれます。
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時代はよくわかりませんが、よくある模倣作品(いわゆる贋作)の可能性はあるでしょう。贔屓目にみるとなんとなく現代の作ではないように思います。
内側は丁寧に仕上げられているのが信楽の特徴とか?
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蹲の口作り:蹲の口は特徴的なものといえる。段が入り二重口といいます。
現代作品ならば装飾かもしれませんが、当時はこの二重口が必要だった理由があります。蹲はもともと日用雑器であり、ゆえに乾燥させた穀物を貯蔵したら首に縄を巻き付け、そのまま背負って運ぶこともあれば、吊るして天日干ししたとも言われます。
縛ればまとめて小壺を運ぶことも出来たでしょうし、吊るせば穀物を狙う鼠などの害を避けられます。または木蓋をして縄をくくり付けるためのものという説もあります。しかしその用途であれば、四耳壺(しじこ)や茶入に見られるような「耳」の方が縄をくくり付けやすいでしょう。縄を締めずとも二重口が取手になって持ちやすいです。いずれにせよ実用性を重視した作りになっているのは確かです。そして実用的な二重口は、口縁部の装飾としても美しく口縁部にメリハリが出ます。紐をしめて運び、また壺を吊るしている中世の人々を想像しながら選ぶのも楽しい器です。
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贋作によくあるべたべた感はさすがに今回はないものを選びました。
信楽の作品を簡単に言うと下記にポイントがあるようです。
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蹲の特徴
・内側は驚くほどなめらかに仕上げられている。(本歌の証?)
・高台は下駄をはいているものがある。
・桧垣文のあるものは評価が高い。
・口は二重口
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以上のような記述は資料には多々あるのですが、実際の判別は非常に難しそう・・。
口造りは力強さのあるものがポイントらしいです。縄を掛けても落ちないもの・・。贋作は実用的に考えられていないとか・・。
実際に縄を掛けてみようかな?
信楽などの古壺には下駄印と呼ばれるものがあります。本作品にもありますが、明確ではない? 明確でないものは贋作が多いらしい?
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下駄印:蹲は高台を持たずベタ底ですが、中には凹凸のある作例があります。これは下駄の歯に見えることから下駄印(げたいん)と呼ばれます。
下駄印が凹んだものを「入り下駄」、凸のものを「出下駄」といいます。これは作品をロクロ引きするさいに、中心がずれないよう固定した跡といわれます。こうするとロクロからの離れもよく、焼成しても底に隙間ができるのでくっつきにくくなります。
下駄印も二重口と同様、実用的な作りが装飾として見どころになった一例といえます。信楽や伊賀の作品をはじめ、備前や唐津などそれぞれの土味を活かした作品が作られています。その独特の形と表情を楽しめることでしょう。
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模倣作品にも窯印や下駄印をわざとつけている作品もありますので、あるからといって時代のあるものとは限ららないようです。
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長石が全面に出ている:これは信楽のもっとも代表的な鑑定ポイントです。つぶつぶの大きな白い長石 が肌から全面に吹き出ているように出ています。
壷ならかなりの確率で信楽ですし、花入れ、水差しなどの茶道具でしたら伊賀を思い浮かべるべきでしょう。
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記事の内容ななんども本ブログに投稿している内容です。繰り返し繰り返し読み、実物との比較して、さらには真作と見比べて現在勉強中です。
家内曰く、「現代作の贋作でも面白いものは面白いわよ!」だと・・。この割り切りは小生には嫌味かエールか?
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ウニ:信楽の土は荒めの風化花崗岩で粘土の中に風化しきってない木の節が混ざっているものがあります。これを木節粘土(きぶしねんど)といいます。この節が粘土の中に入りますと、燃焼したときに高温で燃えてしまいます。するとその節があったところは空洞になります。これを語源はわかりませんが「ウニ」といいます。ですから大きな「ウニ」になりますと中から外へと穴が抜けてしまっているものがあります。
壷ですと穴があいていては、役に立たないので破棄されてきました。多くの信楽のやきものにはこのウニが表面や裏側に見ることができます。この木節粘土が高 温で焼かれると、マニアの間で「ビスケット肌」ともいわて愛玩されます。あたかも割れたビスケットの肌を見たような感じになります。
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これくらいはまともな信楽の土を使って入れば再現できしょうですね。
本作品はとのもかくにもそれららしいのだが、家内の言い分が正しいようで・・・。
それらしいものを購入する、それが今の自分の実力ということでしょう。
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信楽には茶道の「侘び・寂び」の雰囲気があります。飛び出ている長石、木節によって穴のあいた地肌、ビスケット肌。淡いグリーンの自然釉。その素朴でいて力強い造形を持つ信楽は日本人を魅了して止まないやきものだと思います。
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小生の最後の難関は信楽と李朝と刀剣・・・。ここを乗り切るのはお金をかけるしかないかもしれません。
さて、箱もなにもない、氏素性の解らぬ作品、以下に処すべきや 家内の言うところが真なりやいなや・?・?