夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

社頭雪 楠瓊州筆 昭和6年作 その2

2019-04-23 00:01:00 | 掛け軸
今年も庭に「クマガイソウ」が咲き始めました。



こっそり採ってきて花入れへ・・・。



川合玉堂の作品や不染鉄の作品の前に飾ってどちらが似合うかな? と愉しんでみました。

*下記の「能登風景」の不染鉄の作品はまだ本ブログでは未公開の作品です。後日、機会がありましたら紹介します。



「クマガイソウ」は以前に本ブログにて紹介したとおり、日本では環境省により、レッドリストの絶滅危惧II類(VU)の指定を受けており、多くの都道府県で、レッドリストの指定を受けている野草です。



ラン科アツモリソウ属に分類される多年草で大きな花をつけ、扇型の特徴的な葉をつけます。和名の由来は、アツモリソウともに、膨らんだ形の唇弁を昔の武士が背中に背負った母衣に見立て、源平合戦の熊谷直実と、一ノ谷の戦いで彼に討たれた平敦盛にあてたものだそうです。



熊谷直実の故地である埼玉県熊谷市では、有志が1979年に「くまがい草保存会」を結成。庭園の星溪園などに植栽したが根付かず、鉢植えなどを除いて絶え、保存会は2014年に解散したそうですが、我が家では適地であるらしく地植え栽培2カ所にすくすくと毎年育っています。



さて本日の作品は楠瓊州・・・、孤独のうちに上りつめていた画の世界の純度に驚くものがあります。

困窮生活にかかわらず、少しも貧乏くさいところがなく、甘美な情緒さえたたえ、力まず、気取らず、よごれず、遥々とし美の国に遊んでいます。絵のかき方は南画ですが、南画といっても児童画のような自由さをはらみ、香り高い色感をもっていますが、困窮した生活の状況下でよくもこの境地まで行ったものと感心します。

社頭雪 楠瓊州筆 昭和6年
紙本水墨淡彩軸装 軸先木製 合箱入タトウ付 
全体サイズ:横430*縦2030 画サイズ:横290*縦1320

 

賛には「御題 社頭雪 □□□□東天閣 喜禅六花請脉々 神域景呪妙画啚 鳥居真赤雪真白 昭和辛未正月□□□寫 瓊州茶人」とあります。昭和6年(1931年)の作。



元総理の宮沢喜一さんが惚れ、美術評論家の河北倫明氏が褒め、そして有名な 書家上田桑鳩氏が熱愛した人画家としても知られています。



名も無く貧しい画家がひとり静かに実現しているものは、決して見過ごすべきものではない、画家らしい画家のひとりがこんなところにもいたことを日本人として喜ぶべきことなのでしょう。そう評価する審美眼を持ち合わせている人が今は少ないのかもしれません。



今こそこのような画境を純化し、何のとらわれも無い自然な境地に立ち至り、そして続々と興味ある画作を書き残した画家を再評価するべきであろう。不染鉄しかり、下村為山しかり・・・。

ただ再評価はなにも大々的に展覧会を催すことではなく、好きな者が彼らの作品を自ら飾ってみることです。

絵の所蔵とは手元に所蔵して、蒐集を育てて楽しむもの、北斎、若冲、芦雪、蕭白のような一般には入手の困難な著名は画家に夢中になるのはあくまでも鑑賞・・・。絶滅危惧種のクマガイソウも同じかな? これはある意味かなりの贅沢です。



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