
先週の郷里の亡くなった家内への墓参り。13回忌が過ぎても家内の友人らが毎年、花を添えて墓参りをしてくれています。誠にありがたいことです。

本日は「一枚も手元に作品がない状態から大日本魚類図集(全72種)を全て揃えるのは至難の技? 」と繰り返し思いつつ、蒐集を続けている大日本魚類図集の作品の紹介です。

地道に集めてますが、現時点での率はようやく60%くらいでしょうか。一番作品が出品されてきたネットオークションでも状態の良い作品、新たな作品はなかなか揃えられない状況になってきています。また東京ステーションギャラリーにて展覧会が催されてから作品のお値段も急上昇・・・??しているように思われます。

四苦八苦しながらも収集した作品に額を誂えて展示室に飾って楽しんでいます。頒布時のタトウや説明資料、台紙、月報なども重要な蒐集対象ですね。

最近は72種の作品のうち60種まで収集されたという方から、少しずつ資金に見合うお値段にて作品を譲って頂いており、その作品をいくつか紹介いたします。

大日本魚類画集 NO101 アジ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 1941年4月第8回
画サイズ:縦370*横275

当方の収集作品に誂える額はほとんどリサイクルです。この額はもともとは当方でもお世話なっている草土舎のもののようです。

作品に似合う額を探してマットや面金にて作品を挿れます。基本的に版画の大敵は日光や照明ですので長期間は飾れません。ある程度楽しんだら額からはずしての補完にしようと思っています。

引き出しにしまっておくのが無難ですが、それではつまらない・・。

日の当たらない、普段は照明を付けない所に飾りまますが、飾って楽しむのはほんの少しの間だけにしましょう。

普段は額は黄袋に入れてさらにタトウに入れて収納しています。
青魚は雲母摺のきらきらした工夫が大切です。これは大日本水産会が昭和7年に刊行した「日本水産動植物図集」(なんでも鑑定団に原画出品)と同じですが、そちらの作品は印刷・・。「日本水産動植物図集」の原画の評価金額の2500万円という評価には足元にも及びませんが、「大日本魚類図集」のほうが出版物としてはかなり上の作品です。

アジについては下記のとおりです。
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鯵(アジ):日本語の「アジ」は味が良いことに由来するといわれる。
「魚」に「参」と書く漢字が当てられるが、この由来は諸説あり、「鱢(ソウ、魚偏に「喿」)」の字の写し間違いであるとする説、「おいしくて参ってしまう」の意であるとする説、最も美味の季節が旧暦の3月に当たるので旁に数字の「参」が使われたとする説などがあります。
*体側の側線上に鋭い突起をもつ稜鱗(りょうりん: Scute)が発達することでアジ科の他の亜科と区別されています。稜鱗は、日本では「ぜんご」「ぜいご」という俗称で呼ばれることが多く、学術的には楯状鱗と呼ばれることもあります。アジ類の料理をする際には、多くの場合「ぜんご」を取り外す工程が必要になります。「ぜんご」の働きはよく分かっておらず、後方から他の魚に襲われたときに身を守る役割があるという説、外界の変化を正確に把握する感覚機能を担っているという説などがあります。
種類:マアジはアジの中でも、日本で古くから親しまれている定番の種類です。一般的に「アジ」と表記されるのは、このマアジのことが多くなっています。ムロアジは鹿児島県や長崎県、大分県などの九州地方でよく漁獲されますが、和歌山県や高知県、愛媛県などでも漁獲されています。ムロアジは血合いが多く傷みが早いため、漁獲の行われている産地でしか流通されていません。シマアジは、黄色い横縞模様が特徴の見た目なので「シマアジ」と名付けられました。しかし、伊豆諸島でよく水揚げされることから「島アジ」といわれるようになったとの説もあります。シマアジは非常に希少性の高いアジで、マアジの漁獲量に対して50分の1程度しか漁獲されていません。中型以上の天然シマアジは非常に貴重なため、高額な値段がつけられます。
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日本語の「アジ」は味が良いことに由来すること、「魚」に「参」と書く漢字が当てられるが、「おいしくて参ってしまう」の意であるとする説があることなどを知っている方は多いのかな?

日焼けした版画作品は価値がほとんど無くなります。ちなみに裏打ちも版画には厳禁ですね。

額に入れて額やマットの跡が残ってもいけませんので、基本的に額内のマットから作品を外して保護紙にて挟み込んで保管するのベストです。

図集に掲載されている作品は下記の作品です。

当時の説明文は下記のとおりです。

黄袋に段ボールのタトウを収納ケースとして額に入れて説明書を添付し、陽や照明器具の光を厳禁とした場所に保管しておきます。最低でも日の当たらない暗所にタトウと黄袋に入れて保管しておくことは必要なようです。

次はメダカを飼育しているので、どうしても欲しかった「メダカ」の作品です。この作品は後期の部数の少ない作品で、おおよそ20万円にて入手できました。これは高かった・・・。
*なお当方の現時点で飼育中のメダカは成魚で85匹、稚魚は700匹以上・・。コレクション数には適わない・・・???

水彩画用などの額だけでは似合う額が少ないものです。

このように油彩用の額を利用することもあります。


大日本魚類画集 NO125 メダカ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 1943年8月第5回
画サイズ:縦280*横400
インターネットオークションにて約20万円で落札

この作品は大日本魚類シリーズの最後のシリーズとなりもはや戦時中の発刊となります。

発行元は京都に移転しており、戦争の影響からか紙質もよくありません。

途中から500部の発行が300部に減少していますが、これは不人気からではなく戦争の影響だろうと考えています。

戦況が厳しくなっても版画そのものの技術は劣っていません。

ところで大日本魚類図集の魚類の選択をどうやって決めたのでしょう? どうしてこの魚がと思うときがあります。

メダカについては下記のとおりです。
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メダカ:(目高、鱂〈魚に将〉、麦魚、撮千魚)。目が大きく、頭部の上端から飛び出していることが、名前の由来になっている。キンギョ(金魚)と同様に観賞魚として古くから日本人に親しまれており、ヒメダカなど観賞魚として品種改良されたメダカが広く流通し2019年4月の時点で552品種が確認されている。また、様々な目的の科学研究に用いられている。西欧世界には、江戸時代に来日したシーボルトにより、1823年に初めて報告された。
かつて日本では、童謡『めだかの学校』にも歌われたように、小川にはごく普通にメダカの群れが見られた。しかし、1980年代あたりから野生のメダカが各地で減少し始め、姿を見ることが難しくなった。減少の主な原因は、農薬の使用や生活排水などによる環境の悪化、護岸工事や水路の整備などによる流れの緩やかな小川の減少、繁殖力の強い外来種(ブルーギルやカダヤシなど)による影響が挙げられている。また、メダカは水田のような一時的水域に侵入して繁殖する性質が強く、近年の農地改良に伴う用排分離により、用排水路から繁殖時に水田内に進入することが困難になっていることが特に致命的となっており、メダカの繁殖力を著しく削いでいる。こうしたメダカを取り巻く環境の変化により、1999年2月に環境庁(当時)が発表したレッドリストにて絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)(絶滅の危険が増大している種)にメダカが記載され、メダカは2003年5月に環境省が発表したレッドデータブックに絶滅危惧種として指定された。身近な生き物だったメダカが絶滅危惧種となったことはマスメディアにも大きく取り上げられ、日本各地で保護活動が活発に行われるようになった。しかし、絶滅危惧種であるメダカを守ろうとする保護活動が、メダカの遺伝的多様性を減少させる遺伝子汚染という新たな問題を起こしている。新型コロナウイルス禍でメダカのペットブームが広がり、趣味や副業で、繁殖させた個体を販売する人が増えている。
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メダカのブーム? 是非はあろうかと思いますが、今まで注目度がいまひとつであった絶滅危惧I類であったメダカが見直されているのはいいことなのでしょう。

ともかくその魚の特徴をよくとらえている作品です。しかも当時の最高峰の版画技術で作品を作ってというのがすごい・・。

図集の作品は下記のものです。

「大野麥風」の印章・その印章の位置が違います。これは摺師については何人かに分業しているため、摺師が違う作品にはあるようです。これはこのシリーズの多くの作品について見かけることです。

図集の説明は下記のとおりです。

下記の資料が頒布時に添えられてたものが、本作品には添付されています。

その内容は数ページの亘って題材となった魚について記されています。

このようにして蒐集されてきたものを同封して保管していきます。

次は「シシガシラ」の作品です。額も似合うもの?を探し出し、マットや面金の種類を合わせます。

大日本魚類画集 NO104 シシガシラ 大野麥風画
紙本淡彩額装 版画 1941年7月第11回
画サイズ:縦400*横280(版木部分:270*391)

あまり金魚を知らない方にはなじみの薄い「シシガシラ」という品種ですが、入手も大変しやすく、飼育も丈夫で比較的容易とされます。金魚を取り扱っているなら、どのショップでも常時置いてあるほどなので入手はとても簡単のようです。

ただしオランダ獅子頭はどちらかというと泳ぎが下手な金魚のため、泳ぎが早い金魚の中には馴染めとされています。下手をするとエサを取れずに弱ってしまうためのようです。相性が良いのは琉金や丹頂、東錦などの似たような体型の金魚とされます。肉瘤はランチュウほど派手ではありませんが、見応えがあり、長手のタイプは保存会により評価され、丸手のタイプは一般に流通し、趣が異なるとされています。

本作品の摺師と彫師は下記のようです。


画集に掲載の作品と同一のものですね。

シシガシラは頭部に肉瘤が発達した琉金の突然変異個体を選別・固定化した品種。背ビレがあって、肉瘤があり、伸長した開き尾を持つことが特徴とされます。体色は赤、橙黄、白、サラサ、黒等が存在し、日本で古くから親しまれてきた比較的長い体型を持つ系統(長手オランダ)と、近年になって中国から輸入されるようになった短い体型の系統(バルーンオランダ)の二つの系統が存あります。

江戸時代の寛政年間に、中国から琉球を経て、長崎に渡来しています。当時は鎖国状態のため、珍しい渡来物を「オランダ物」と呼び珍重されていたことと、頭の発達した肉瘤が獅子の頭を彷彿とさせたことから、「オランダ獅子頭」と命名されたそうです。

頭部には、最大の特徴である肉瘤が発達し、体型は、リュウキンより胴長で各鰭が長く、非常に大きくなる個体です。肉瘤によりリーゼントやアフロにも見えたりして、顔に愛嬌があります。
小さい頃は肉瘤が小さいのですが、成長につれて大きくなります。小さいうちは「可愛さ」、大きくなれば「豪華さ」の2つを備える金魚と言えます。

蒐集対象の重要なものにタトウがあります。谷崎潤一郎の書を版画で刷ってあり表紙の添付されていますが、他の徳富蘇峰の書があります。

銘入りの台紙、タトウ、説明書、月報などこの蒐集にはきりがない・・。

当方ではその保管のためにも段ボールタトウを作り、保管していますが、額も原則としてすべての種類が違うものとしています。

蒐集が全種揃ったらすべてを展示してみようと思っています。

版画おける技術の最高峰はこの版画シリーズであり、この版画の前にも後にもこのシリーズ以上のものはありませんが、いつになったらすべて揃うやら・・・・。