
富岡城の下にある袋池

池のそばにある大蛇になった娘の祠

池の上にある富岡城

この袋池は深い木々に囲まれているが、不思議と木の葉が一枚も落ちていない。
そのことに関する二通りの伝説がある。
ひとつは、その昔あるお米屋さんに美しい娘がいました。
その父親が、お米を仕入れる時は大きな枡で買い、
売るときには小さな枡で売っていました。
娘はやめてくれるよう何回も頼みましたが、止めてくれません。
悲しんだ娘はこの池に身を投じて龍となり、この池の主になりました。
それからというもの、毎朝早く未だ暗い頃、娘の姿となり、
水面を掃除しているということです。
ふたつ目は、昔一軒の米屋に、美人と評判の一人娘がおりました。
両親は娘に婿を探していましたが、「お金がないと良い婿は迎えられない」と思い込み、
寝る間も惜しんで働きました。
米を売るときは"小さな枡(ます)"買うときは"大きな枡"を使うという、
ずるい商売で、だんだんお金持ちになっていきました。
やがて念願の婿を迎えることになったある日のこと。
娘がいつものように池へ米を洗いに行き、足を滑らせて池に落ち、おぼれて死んでしまいました。
あくる朝、池に浮かんでいる娘を見つけた近所の人が体を引き上げようとしたところ、
娘はたちまち大蛇に姿を変えて池の周囲をぐるぐる廻り、
そのまま池の底へ姿を消してしまいました。
それを聞いた娘の両親は「娘の幸せを願うあまりに、自分たちが悪いことをした報いだ」と、
その罪を償うために、祠(ほこら)を建てたということです。
今も湖畔に佇む「お池様」はその祠だといわれ、
袋池に木の葉が一枚も浮いていないのは、
娘が箒を手に水面に落ちた葉を掃いているからだと伝えられています。