もう六つも寝ると選挙戦は終わる。ここに来て保守連合CDU&CSU+FDPの過半数割れ予想から、社会民主党SPDをパートナーとする大連立時の人選が表面に出てくる。ベルリンでは既に初夏から囁かれていたと言う。
その中でも「ハイデルベルクからの男」に変わって、新たな大蔵大臣候補の名前が挙がってきた。それは、春に現在のシュレーダーSPDの終焉を幕引きをした、SPD大地盤ノルドライン・ヴェストファーレン州で大敗北した前知事ペール・シュタインブリュック氏である。デンマーク系のハンブルク生まれでボンに育った、SPD政治家の大蔵大臣就任には誰も異論はないようである。
何れにせよハイデルベルクの教授は、議論も出来ないほどに保守政権からも「この世に生きていない男」と非難され続けている。それでも、この男を指名したメルケル女史は今更別れ話を持ち出せないので、暫くは男の方から距離を置いていた若き保守政治家メルツ氏にビルト大衆写真新聞でラヴメッセージを送ったようである。
出来うる限り支持の低下を引き止めようと必死である。保守連合内では、「あなたは続けますか、それとも止めますか。」のあたかも反麻薬キャンペーンのようなスローガンよりも、「21世紀の新たな経済秩序」を出して支持を集めれば良かったと言うが、時は既に遅し。
このように見ると、「保守政党は、思想的・イデオロギー音痴である方が良い。」と言う原則がここにも当てはまる。しかし、先のジェームズ博士の言うように「植民地主義を源とするグローバリズムの終焉」の時代には、それも通らない。前回の総選挙で敗北したキリスト教社会民主同盟首相候補ストイバー氏や氏のバイエルンの仲間たちのレーザーズボンや羽を付けたチロルハットの農村の親仁の方に、緑の党(外務大臣ヨシュカ・フィッシャーの人気に与る)の政策よりも、地に足付いた現実的な将来があるようにさえ映る。
緑の党は、PDS・WASG左翼連合党との連立会派を否定したので、CDU&CSU・SPD大連立となる可能性が強い。すると圧倒多数の与党となり、野党は急激に左翼化するだけでなく、自由党FDPなども右翼化(落下傘を開かずに空から落ちて来たメーレマン事件を思い出す)する可能性がある。また東独の動向にも目が離せなくなる。
既に自由党は過半数取りで与党となった場合の外務大臣ポストだけでなく、メルケル女史に「大連立の否定」を要求している。また、党のイメージ色からSPD、FDP、緑の党の其々色を組み合わせて名付けられた、赤、黄、緑の「信号機連立」を否定している。こうなると古臭い市場原理主義のリベラリズムには退散願わねばならない。
ジェームズ教授が言うように、欧州連合体においては、何処も行き過ぎた福祉社会主義からは遠に抜け出しており、また誰も市場原理主義を今更信奉していない。だから、緑の党のフィッシャー氏も言うように、「政権与党と野党との差は僅かなもの」となる。つまり、ここで幾らかの最も大事で核心的な政治哲学を各党が示す事によって、その差異を社会層の違う有権者にアピールしていく事が必要となるのである。
教授が言うように、ドイツはプロシア時代から伝統的に、有権者の経済的損得勘定によって投票傾向が決まるので、今回もそのような結論となるのであろう。
多数連合と少数の不可侵権 [歴史・時事] / 2005-09-12 より続く
参照: 三十五年前からの使者 [歴史・時事] / 2005-09-11
その中でも「ハイデルベルクからの男」に変わって、新たな大蔵大臣候補の名前が挙がってきた。それは、春に現在のシュレーダーSPDの終焉を幕引きをした、SPD大地盤ノルドライン・ヴェストファーレン州で大敗北した前知事ペール・シュタインブリュック氏である。デンマーク系のハンブルク生まれでボンに育った、SPD政治家の大蔵大臣就任には誰も異論はないようである。
何れにせよハイデルベルクの教授は、議論も出来ないほどに保守政権からも「この世に生きていない男」と非難され続けている。それでも、この男を指名したメルケル女史は今更別れ話を持ち出せないので、暫くは男の方から距離を置いていた若き保守政治家メルツ氏にビルト大衆写真新聞でラヴメッセージを送ったようである。
出来うる限り支持の低下を引き止めようと必死である。保守連合内では、「あなたは続けますか、それとも止めますか。」のあたかも反麻薬キャンペーンのようなスローガンよりも、「21世紀の新たな経済秩序」を出して支持を集めれば良かったと言うが、時は既に遅し。
このように見ると、「保守政党は、思想的・イデオロギー音痴である方が良い。」と言う原則がここにも当てはまる。しかし、先のジェームズ博士の言うように「植民地主義を源とするグローバリズムの終焉」の時代には、それも通らない。前回の総選挙で敗北したキリスト教社会民主同盟首相候補ストイバー氏や氏のバイエルンの仲間たちのレーザーズボンや羽を付けたチロルハットの農村の親仁の方に、緑の党(外務大臣ヨシュカ・フィッシャーの人気に与る)の政策よりも、地に足付いた現実的な将来があるようにさえ映る。
緑の党は、PDS・WASG左翼連合党との連立会派を否定したので、CDU&CSU・SPD大連立となる可能性が強い。すると圧倒多数の与党となり、野党は急激に左翼化するだけでなく、自由党FDPなども右翼化(落下傘を開かずに空から落ちて来たメーレマン事件を思い出す)する可能性がある。また東独の動向にも目が離せなくなる。
既に自由党は過半数取りで与党となった場合の外務大臣ポストだけでなく、メルケル女史に「大連立の否定」を要求している。また、党のイメージ色からSPD、FDP、緑の党の其々色を組み合わせて名付けられた、赤、黄、緑の「信号機連立」を否定している。こうなると古臭い市場原理主義のリベラリズムには退散願わねばならない。
ジェームズ教授が言うように、欧州連合体においては、何処も行き過ぎた福祉社会主義からは遠に抜け出しており、また誰も市場原理主義を今更信奉していない。だから、緑の党のフィッシャー氏も言うように、「政権与党と野党との差は僅かなもの」となる。つまり、ここで幾らかの最も大事で核心的な政治哲学を各党が示す事によって、その差異を社会層の違う有権者にアピールしていく事が必要となるのである。
教授が言うように、ドイツはプロシア時代から伝統的に、有権者の経済的損得勘定によって投票傾向が決まるので、今回もそのような結論となるのであろう。
多数連合と少数の不可侵権 [歴史・時事] / 2005-09-12 より続く
参照: 三十五年前からの使者 [歴史・時事] / 2005-09-11