Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

絞りのフラクタル感

2018-12-26 | 文化一般
金曜日に八百屋でプレゼントに貰って来た鉢の写真だ。いつもハッキリした色の花片を選ぶのだが、二三年の鉢がまだ元気で盛んに花をつけているので、全く異なる淡くチリチリになっているのを貰った。真っ白のを選ぶ人もいたが、このフラクタルな感じに興味を持った。明らかに複雑系で、更に古くなったら余計にボケボケとなりそうなのだが、それがまた面白い。謂わば着物でいえば絞りということになるのだろうか。

快晴になった。屋根裏部屋から降りてきて、事務机に座っている。アムステルダムからの中継が始まった。TV中継の方は生中継では制限が掛かって駄目なのようなのでラディオ放送である。中々綺麗な音のするNPO4放送局で、あまり直截的な音ではない。

クリスマスマティネーと称してコンセルトヘボー会場からの恒例の中継らしい。あまりコンセルトヘボーからの生中継は聞いたことがないので喜ばしい。独自の音響が綺麗に捉えられていると思う。曲目は「くるみ割り人形」である。指揮者のビシュコフはラディオでの紹介にもあったようにラベック姉妹の妹の方の旦那さんらしい。ベルリンのフィルハーモニカーの後任候補にも名前が挙がるように実力者らしいが生どころか放送やメディア等でも殆ど聞いたことがない指揮者である。

ロシア人の指揮者であるがヴィーンの音大の指揮科の教授として君臨していて大物のようである。何よりもキリル・ペトレンコの指揮の先生として著名になった。この教授に言わせると初めから教えることはなかったということになるらしいが、こうしてこの教授がコンセルトヘボーの管弦楽団を振るのを聞くと流石と思わせるものはある。夏に聞いたハイティンク指揮の管弦楽団とは随分と違うアンサムブルである。

前々常任者指揮者のシャイーを批判する向きはいても、この指揮者に関しては批判が難しいのではなかろうか。聞いているだけでそのバトンテクニックの正確さは分かる。しかし鋭角な印象を持たせない。先月放送されたボストンからの「くるみ割り人形」よりも大分上手に弾けている。指揮もネルソンズのものよりも合理的な感じがする。反面、奥行きもあり、瀟洒も損なうことなく、複雑系の音響でもある ― まさしくこの辺りがネルソンズ指揮のボストンでは叶わなくともゲヴァントハウスで可能となるところだ。また前常任指揮者ヤンソンスの及ばない領域でもある ― 同じソヴィエトの教育を受けてもユダヤ文化的背景の有無がものをいうのか。やはりヴィーンの指揮科首席教授となると違うのだろう。この教授も一時はコンサート回数が結構あってその風貌からかあまり面白みがなくて興味がなかったが、バーデンバーデンにも復活祭で再び登場するかもしれない。出来ればヴィーンのノイヤースコンツェルトで喝采される頃に聞いてみたい。

正確さといえば、「春の祭典」お勉強に本命のブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団の新盤の方を鳴らした。やはりとても目が行き届いた指揮をしていて、そのリズム構造への造詣が感じられる。いつものようにサクサクと進めているのだが、しっかりと拍を取っているのでシャカシャカしたところがなく、超一流のそれである。詳しく精査してみなければいけないが、メスト指揮のそれとは大分違う。反面あまりにも流れ過ぎるので若干スタイリッシュに感じられる部分が多くて、いつものように「演奏解釈」としては寂しい。しかしこれほど精査してある録音は他にはないのではなかろうか。そのテムピに関してはよくわからないところもあって、研究してみないといけない。しかし全体像はとてもよく出ていて見事だ。

クリスマスイヴにデジタルコンサートでオープニングコンサートの三曲を流した。やはり初日の演奏はとても固いが、ミスが無い様に正確に進めたのは流石で、翌日のスクエアーでの開花した演奏とのコントラストが甚だしい。その野外での演奏があったゆえにザルツブルクの初日では荒っぽくなっているのは録音で最近確かめた。



参照:
Wブッキングの逡巡 2018-12-07 | 生活
蒼空のグラデーション 2018-09-08 | 音
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