Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

感動は幕が上がる前から

2021-06-29 | 文化一般
月曜日17時06分の陰性証明書が出た。23時間54分前に陰性だから、開演時刻火曜日17時の最大24時間前にあてはまる。これで新制作「トリスタンとイゾルデ」への道は拓かれた。最早何も邪魔するものはない。こうなればなんとしてでも時刻通りにミュンヘンの劇場に出向くだけだ。

薬局が開いている検査センターは一人当たりの金を税金から取っているので、陰性であろうがなかろうがどちらでもよいのだろう。鼻の中ほどに、小鼻の上あたりに綿棒を突っ込んで、左右やっただけだ。こちらもイソジンならず歯磨きの後口中消毒剤で濯いで、更に塩水で鼻通しをしておいた。すっきりした感じで、この検査で陽性ならば自分自身はスパースレッダとしか思えない。その割には周りで陽性者が発生していない。

やはり面倒だが、そしてほとんど形式でしかないテストであるが、これによって多くの熱心な聴衆が集う事が可能になって、それだけでも新聞は書くだろう。「感動は幕が上がる前から予約されていた。」と。

前音楽監督キリル・ペトレンコ最後の初日であり、前回初日に出かけた「死の街」から一年半ぶりの登場だ。その間のコロナ禍のこと、そして再会を考えるとそれだけで感動ものである。一体皆がどのように迎えるのか?

半数の人は抽選に外れてから様々に苦労をして券を入手して、そして接種していないような人はテストまで受けて出かけるのである。更に長い時間息苦しいマスクをしてまで集うのである。メルケル首相がコロナ禍は先の大戦以来の危機と言ったが、まさしく今ここでの初日は戦後の再開公演などに匹敵するだろう。

初日はプレスだけでも玄人が多い。歌手にとっては初日で評価が決まる。特にタイトルロールデビューとなるととても重要だ。

「トリスタン」三幕を続けてベーム指揮のバイロイト実況録音で聴いた。驚くのは嘗て聴いていたLPとはYouTubeでありながら格段に明晰になっていた。それによって分かるのは、ベーム指揮の明晰さはペトレンコのそれに匹敵する様な革新的なことだったということである。そもそも「トリスタン」はバイロイトの劇場の為に作曲されたものでは無いので、必ずしも蓋がされている奈落では音量を上げればそれなりに不明瞭さに結び付く筈だ。しかしここではニルソンだけでなくヴィントガッセンが素晴らしい歌を展開している。通常は落として歌っていても通る劇場で大声を張り上げている。

ベームの指揮は二幕に比べるとやや単調になっているのもそのダイナミックスの作り方に依るのだろう。それにしても長いトリスタンのモノローグがあれだけ歌われているのは驚きだ。しかしこれを聴けば確かにイゾルテの歌も一幕二幕で中々大変だが、あとは三幕を少し歌うだけである。その点トリスタンは矢張り大変である。



参照:
24時間以内抗原検査予約 2021-06-28 | 生活
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