Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

大成功のバイロイトデビュー

2021-07-26 | 
バイロイト音楽祭初の生中継は面白かった。音声の放送は戦前からかもしれないが、初日の完全生映像は史上初めての筈だ。今年は感染拡大防止の考えから赤絨毯に招待客が立ち止まって写真撮影は無かったが、メルケル首相夫妻を代表に有名人は集まっていたようだった。

実は「さまよえるオタンダ人」初日に出かけたことがあって、その時の指揮とどうしても比べてしまう。現EU代表のフォンデンライン女史の甥の指揮者マルク・アルブレヒトであったが、それと比べるとオクサーナ・リニヴは指揮者としての格が二三段階上だった。そもそもあの奈落でごてごてと鳴らす脳の無いような指揮をする若手指揮者なんて棒にも箸にも掛からない。ザルツブルクでの「ルル」も酷いことをやっていた。

演出に関してはモニターで楽劇をじっくり観るなんて言う我慢が出来ない性格なので、ちらちらと覗いていたが、やはりゼンタでデビューしたアスミク・グリゴーリアンが登場すると舞台の空気が変わる。勿論歌うと圧倒的だった。演出の全体像が見えない所でもその景が急に舞台になってしまう。

兎に角、グレゴーリアンの圧倒的な歌声は、周りにも影響を与えていた。あそこまで張って立派に歌われると周りにもいつものバイロイト劇場の様に声を落として、言葉の明瞭さだけに専念する歌い方では無かった。

それゆえに、アスミク・グリゴーリンのドイツ語が聴き取れなかったという批評はあたらない。容易にそういう言い方をする評論家は、バイエルン放送協会のストリーミングにドイツ語のテロップが入っている意味も分からないのだろうか。

なるほど彼女も一回一回歌う度に学ぶと語るように、その難しさを説明していた。特に初期の作品ということでベルカントにドイツ語が合わないとしていた。実は同じようにベルカントでの楽劇を目指しているペトレンコ指揮やそこでトリスタンを歌うヨーナス・カウフマンも言葉の付け方が不自然で音楽は素晴らしくても歌の分かっている作曲家ではないとしていた。それだけに難しいということだ。

しかし何よりも歌に合せるオクサーナ・リニヴの指揮は見事で、それはフランクフルトでも確認していたことで、特に女性の歌声を最大限に引き出しそして付ける腕はただものではない。そして今回の指揮の技術的な難しさは、通常のバイロイトの奈落云々をのたまう様な程度では無かったのだ。そして前元祖音楽監督がのこのことやってきていて減らず口を叩くのがいい恥じたらしだった。(続く)



参照:
へそ出しもビキニも 2020-08-03 | 女
初アスミク・グリゴーリアン 2019-11-10 | 生活
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