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呉越同舟のリフレ派・・・追加緩和の温度差

2014-09-17 01:15:00 | 分類なし
 

■ リフレ政策は効果があったのか? ■

日銀の異次元緩和という大リフレ政策が景気回復に効果があったかどうかという問題は議論の分かれる所です。

1) 「期待に働きかける」という意味においては効果があった
2) 「期待」は消費税増税で剥げ落ちてしまった
3) 円安効果による輸入価格の上昇でコストアップインフレを引き起こした

どうやら異次元緩和が景気回復に与える影響は、「期待」以上の物は無かったのではないかと私は考えます。日銀の当座預金に大量おブタ積が存在する事が、リフレ政策の限界を物語っています。

アベノミクスの第一と第二の矢が明らかにしたのは、少子高齢化が進む日本では、消費と労働力供給の両面から経済成長に足かせが掛かっているという事でした。

リフレ派が盛んい宣伝していた「潜在需要」なるものは、現在の日本では存在していないのです。これは日銀も財務省もある程度理解していた様で、黒田総裁は「景気回復は政府の仕事」と割り切った発言を異次元緩和実行当初から繰り返しています。要は、ゼロ金利の罠に落ちた経済(成長力が極端に乏しい経済)において、金融政策が出来る事は「期待に働きかける事」位しか無い事を、日銀は承知の上で異次元緩和に踏み切っているのでしょう。

■ 財務省派と金融派の2派が同じ船に乗るリフレ派 ■

一口にリフレ派と言っても立場も目的も様々です。あえて大別するならば、『財務省(日銀)派』と『金融派』でしょう。

財務省派のリフレ政策の目的は、日銀による財政ファイナンスにあると思われます。日本の財政は進行する高齢化とインフラの老朽化によって既に税収で支える事は不可能です。あえてプライマリーバランスを適正化しようとすれば、税率を現在より高くせざるを得ず、それによる経済へのダメージは消費税8%の比ではありません。

日銀の異次元緩和は財政ファイナンスの何物でもありませんが、これが日本経済と日本の財政の延命にとっては最も国民に優しい政策です。ただ、表立って「財政ファイナンスと実行している」とは言えないので、「景気回復の為の大胆な量的緩和」と言って誤魔化しています。

一方、『金融派』に属するのは浜田宏一氏や高橋洋一氏ですが、彼らの目的は金融市場に潤沢な低金利の資金を供給する事にあります。ですから、彼らは消費税アップ後の景気低迷の打開策として、「追加緩和」の必要性を強く説きます。同時に彼らはアベノミクスの「第三の矢」の必要性を強く訴えています。

要は、リフレ派という舟には『財務省派』と『金融派』が呉越同舟状態なのですが、意外にも「ドル基軸体制の堅持」という共通の目的を持っています。日銀にしても財務省にしてもドル基軸体制の崩壊は望みませんから、「異次元緩和」や「追加緩和」がドルの援護射撃になるならば、躊躇無く実行します。

■ 量的緩和と消費税増税はセット ■

日本の財政が継続的である条件に「国債金利の低利安定」があります。財政に占める国債の利払費が拡大すると、日本の財政は破綻してしまうからです。ですから10年債の利率は2%以下に抑える必要があります。

日銀の異次元緩和などの量的緩和は、ゼロ金利の罠が発生している状況では実体経済にほとんど影響を与える事が出来ませんが、一方資産市場ではバブルを発生させる要因になります。そこで財務省と日銀は、量的緩和と消費税増税をセットにする事で、資産市場のバブル発生を牽制していると思わわれます。

来年10月に消費税増税が実施されるならば、追加緩和がセットとなるはずです。(実際には追加緩和が増税を必用としているのですが)

■ アメリカはそろそろ郵政に手を出そうとしている ■

日銀の異次元緩和が明らかにした事の一つとして、日銀と日本の銀行は阿吽の呼吸で行動しており、国債を売却した資金を日銀の当座預金にブタ積して、なかなな対米投資に回さないという事が挙げられます。

日銀の当座預金に0.1%の金利が付く理由は、国債運用よりも利率が良い事で民間の禁油機関が日銀に国債を売り易い状況を作る事が目的ですが、同時に日銀に資金を引き止めて置く効果もあります。

FRBはテーパリング終了から来年の利上げを目標に動いていますが、それには日銀やECBの援護射撃が不可欠です。要は、低利の資金の流入が無ければ、FRBの利上げによって金融市場はパニックに陥るのです。ところが、日銀マネーもECBノマネーもなかなか慎重で、金融市場から距離を取っています。

そこでアメリカが喉から手が出る程欲しいのが「郵政マネー」や「年金マネー」では無いでしょうか。

「日本郵政」の完全民営化は決定事項ですが、日本郵政の西室社長からこんな発言があった様です。

日本郵政の西室泰三社長は(2014年6月)25日午後の記者会見で、株式上場について「少なくとも消費税がもう2%上がる前までの段階でできることはした方がいい」と述べた。消費税率の10%への引き上げは2015年10月の予定。西室氏はそれまでは景気が下振れしにくいとし「正確には決まっていないが、マーケットの状況から考えるとそう思わざるを得ない」と述べた。

傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式上場時期に関しては「まだ全く決まっていない」と説明した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕


要は、消費税10%アップの前に、「ゆうちょ」と「かんぽ」の完全民営化に踏み切りたいと言っています。その後の資金運用のコンサルタントはゴールドマンサックスになるはずです。(現在もそうですが・・)

西室社長の発言は、日本株市場への援護射撃の様にも思えますので、必ずしも早々に日本郵政が民営化される事では無いと思われますが、アメリカの圧力次第では時期は2017年よりも早まる事が予想されます。

■ 消費の落ち込みが激しければ、10%への増税無く追加緩和が有るかも知れない ■

消費税の10%への増税を年末までに安倍首相は判断しなければなりませんが。消費税8%の影響が予想以上に悪ければ、増税は見送るかも知れません。

ただ、追加緩和は景気刺激という名目で必ずや実施されるでしょう。