■ 水素を作る為には二酸化炭素が発生する ■
トヨタが特許を公開した事で、にわかに脚光を浴び始めた「燃料電池車」と「水素社会」。
究極のエコカーとされる燃料電池車ですが、その化学反応式は次の通り。
2H₂+O₂→2H₂O
「オオー、二酸化炭素を排出せず、水だけが排出されます。エコだーーー。」と思ったアナタ、それは大間違いです。実は水素を作る為には二酸化炭素が排出されます。
現在、製鉄所でコークスを生成する時に発生する水素が供給源として有力視されています。コークスとは石炭を高温の水蒸気で蒸し焼きにすることで石炭から硫黄、コールタール、ピッチなどの成分が抜いたものです。石炭よりも発生熱量が大きいので製鉄などに使われます。コークスの主成分は炭素なので、高温で鉄鉱石(酸化鉄)の酸素と反応して二酸化炭素CO2を生成します。コークスは反応の為の高温を生み出すと共に、酸化鉄の還元剤としての目的も果たしているのです。
コークスを生成する際に、水素が発生します。現在のコークス生成時に発生するガスは次の通りです。
H2(水素) 55%
CO (一酸化炭素) 6%
CH4 (メタン) 28%
COやCH4は燃焼性のガスなので、製鉄所内でエネルギー源になります。但しその燃焼過程で二酸化炭素を発生させます。
H2(水素)も燃焼性のガスですが、現在は製鉄所内でのエネルギー源として利用されています。水素は強力な還元剤でもあるので、製鉄の際に利用する研究も進められています。高炉内に水素を吹き込む事で5~10%の二酸化炭素の削減に成る様です。
この様に、現在燃料電池車(水素自動車)の水素の供給源として想定されている製鉄所では、水素の発生過程において二酸化炭素が発生しています。
「燃料電池車は二酸化炭素が発生しない」というのは大嘘で、水素の生成過程で二酸化炭素が発生しています。ただ、二酸化炭素の発生箇所が製鉄所に限定されるので、回収する技術が確立すれば、バラバラに走り回る車よりも効率的に二酸化炭素の回収が出来るだろうという現在は存在しないメリットが強調されています。
■ 現在も製鉄所内で有効利用されている水素 ■
製鉄所から発生する水素の量は乗用車500万台分です。但し、現在は製鉄所内のエネルギー源として水素は有効活用されていますから、この水素を燃料電池車用に振り向けてしまうと、製鉄所は別の熱源を必用とする為に、エネルギー収支が改善する事は有りません。
1) 運搬用に水素を液化するのに無駄なエネルギーを必用とする
2) 水素を運搬するのにエネルギーを必用とする
この二つを考えただけで、製鉄所で発生する水素は製鉄所内で利用した方がエネルギー効率が高い事が容易に理解出来ます。
■ 身近な燃料電池であるガス燃料電池 ■
実は燃料電池というのは既に私達の身近な存在です。
都市ガスから電気を取り出す装置が「江ねファーム」などという商品名で普及していますい。
都市ガスの主成分はメタンガスCH4です。
これを直接燃焼させる化学式は次の様になります。
CH4+2O2→CO2+2H2O
都市ガスをそのまま燃焼させると二酸化炭素と水と燃焼熱が発生します。
都市ガスを利用した燃料電池はメタンを改質して水素を取だします。
CH4+O2→2H2+CO2
この反応で生成した水素を発電に利用しますが、水素を生成する時点で二酸化炭素と熱が発生します。二酸化炭素は空気中に放出されますが、熱は給湯に利用できるので、家庭用の燃料電池は総合的なエネルギー効率が高いとされます。
家庭用の燃料電池が普及する最大の要因は、既に各家庭に都市ガスが供給されている事が重量です。プロパンガスの様にガスを運搬しなくても、都市ガスはパイプで各家庭に既に供給されています。
■ 燃料電池の効率と、内燃機関の効率 ■
燃料電池は効率が良いとされていますが、25℃での効率の理論値は85%です。しかし、これは大型の施設の場合で、車載用のシステムでは40%から50%の高率まで落ちてしまいます。モーターの効率を90%とすると、燃料電池車のエネルギー効率は36%~45%となります。
一方、ガソリン自動車の燃料効率は10~15%(30%という説も有りますが)と言われています。これだけ見ると燃料電池車が圧倒的に有利となします。
もし、仮にガソリン車と燃料電池車の価格が同一で、水素とガソリンの価格が同一で、水素種テーションなどのインフラが整っていれば、燃料効率に優れた燃料電池車はバカ売れするはずです。
■ 水素の燃料コストはガソリンの2倍 ■
日石は燃料電池車用の水素を1Kg当たり1000円で販売すると発表しています。
ガソリン1リットルは756gなのでガソリン1Kg辺りの価格は1リットル160円で換算すると211円。
プリウスの燃費を30Km/ℓとすると1km当たりの燃料費は・・・
160円/30Km=5.33円/ℓ
燃料電池車(トヨタのMIRAI)は水素1Kg当たり140Km走れる様ですから・・・
1000円/140Km=7.14円/ℓ
ガソリンの価格には様々な税金が課せられtいますが、水素は絶賛キャンペーン中ですから税金は掛けられていないはずです。
ネットの燃料費は圧倒的に既存のハイブリットカーが有利になります。
■ 燃料電池車は高額 ■
さらに、燃料電池車は現在は非常に高価です。国と都の補助金が得られても420万円もします。これ、ガソリン車の2倍以上の価格です。
車体価格がプリウスの2倍、燃料費がプリウスの75%・・・。
何だかなぁ・・・・。
さらにガソリン価格には現状53.8円/ℓのガソリン税が掛けられています。もし燃料電池車全盛の時代になれば、水素にも税金が掛けられるはずです。そうなれば、燃料電池車は永遠にハイブリットカーに勝事は不可能です。
尤も、比較に使用したプリウスですら、補助金を外してライフサイクルコストを比較したら、使用頻度の少ない利用者にはほとんどメリットが有りません。バッテリーの寿命を考えたら、現在のガソリン価格では、バッテリー代と燃費メリットがトレードオフしてしまいます。
■ 原油価格が高騰してから考えよう・・・ ■
そもそも現在最も効率的な形で利用されている製鉄所の水素を燃料電池車のエネルギー源に流用する事自体が非常になナンセンスです。
さらに言えば、現在のガソリンなどの液体化石燃料は、エネルギー密度も高く、内燃機関のエネルギー変換効率の悪さを差し引いても十分に安くて便利なエネルギー源です。
二酸化炭素による温暖化など「詐欺」以外の何物でも有りませんから、これを無視したら燃料電池車が普及する理由など、石油危機でも来ない限り皆無なのです。
■ 絶対にガラパゴス化する燃料電池車と水素社会 ■
二酸化炭素問題に真剣に取り組んでいるのは世界でも日本くらいなものですから、高コストの燃料電池車が世界で普及する可能性は皆無です。
さらに、水素の発生源である製鉄所を持つ国ばかりでは無い事、水素インフラなど現在どの国も整備していない事を考えると、燃料電池車や水素社会が普及する可能性の有る国は皆無で、ガラパゴス化が必至となります。
■ 太陽電池との組み合わせではコストが合わない ■
あまり悪口ばかり書くと真剣に研究している方に怒られそうなので、最後にフォローを。
現在、休耕田や遊休地を利用した太陽光発電が急成長しています。ただ、全発電量の10%以上、供給が不安定な自然エネルギーがミックスされると電源電圧が不安定になり、商用電源としてへ使い物にならなくなります。北海道電力などでは太陽光発電の売電をこれ以上増やす事が出来ません。
これ以上、自然エネルギーをミックスしようとすると、巨大な蓄電池などのバッファーが必要になり、エネルギーコストが高くなります。
そこで、太陽光発電の電力を、水を電気分解する水素製造に利用すれば、太陽光発電施設を増やす事が出来ます。
2H2O→2H2+O2
これなら二酸化炭素は排出されず、究極のエコです。(太陽光発電施設の建設で十分に二酸化炭素は発生しますが、そもそも無害なので・・・・)
と、ここまでは良いとして、水の電気分解の効率は70%程度だと言われています。太陽光発電の効率は低く、一般の発電電力の2倍以上のコストの掛かる太陽光発電で水素を発生させた場合、1Kg当たり幾らになるのでしょうか・・・。
現在の水素の価格1000円/1Kgは、製鉄時に勝手に出て来る水素を利用した価格です。商用電源で水を電気分解したり、都市ガスを改質した場合は、とてもこの価格で供給する事は不可能です。
さらに2倍以上コストの掛かる太陽電池発電で水素を供給するメリットは有るのか・・・。皆無に思えます。
■ もしかして石油が高騰するの? ■
太陽光発電は私達の電気代が事業者の利益に化ける官制詐欺。水素社会もエネルギー収支が全然合わない夢の技術です。
この様な合理的で無い技術も、国の政策や補助金でビジネスとして一時的には成り立ちます。これは企業による「タカリ」に近いものなので、結局は破綻します。世界的に見ても補助金で支えられていた太陽光ビジネスは破綻し、多くのドイツのQセルズを始めとした多くのソーラーパネル製造会社が経営破綻しています。
これらの失敗が予測される非効率なエネルギーに国を挙げて取り組む理由とは何なのでしょうか・・・。もしかして、石油が高騰する様な事態が今後起こるのでしょうか・・・・。