人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

トランプは「正しい」が「間違えた」・・・トランプ政権の喧騒がかき消すもの

2017-08-21 16:54:00 | 分類なし
 

■ 暴力的なリベラル ■


白人至上主義者と過激なリベラルの対立が、トランプ政権を揺さぶっています。

一般的にリベラリストと効くと「ラブ&ピース」の様なお花畑左翼を思い浮かべますが、日本でもリベラル運動が過激化してテロリストを生み出した様に、アメリカの一部のリべリストも相当に過激です。

ただ、シャーロットビルの衝突や、その後の「リベラリスト」の行動を見ると、どうも彼らの暴力は「憂さ晴らし」の様にも見えます。トランプ当選直後のリベラルのデモも、一部の「憂さ晴らし」連中が過激化していました。

ネットでは「彼らは1日25ドルで雇われたプロ市民」だと噂されていますが、そんな事はどうでも良く、「一部のリベラリストが暴力的だ」というのは、誰の目にも明らかです。

■ トランプは正しい ■

「白人至上主義者だけでなく、双方に非がある」発言は、私的には正しいと思います。ケンカは一人では出来ません。

今回の事件は南北戦争時代の南軍の英雄の像をリベラリスト達が撤去しようとした事に端を発しています。それを阻止しようとした白人至上主義のKKKなどの集団と争いになったのです。

実はアメリカ南部の諸州では、「自分達は北のアメリカに占領されている」と考えている人達が多く住んでいます。南北戦争で負けて北の連邦政府に統合されたのだと。

これらの南部諸州では、連邦政府からの独立法案が毎年の様に州議会に提出され、数年前のテキサス州では住民投票で僅差で独立反対派が勝ちましたが、一歩間違えば、テキサスがUSAの地図から消えていたかもしれない・・・。

そんな南北戦争前の「自分達のアメリカ」に郷愁を抱く人々にとって、南軍の英雄の銅像を引き倒そうとするリベラリスト達は許す事は出来ません。

喧嘩を仕掛けたのはリベラリスト達なのだから、「喧嘩両成敗」というトランプの発言は正しい。

■ トランプの発言は間違っている ■

アフリカ系アメリカ人や、アジア人などの白人以外の移民にとっては、アメリカの歴史は迫害の歴史です。奴隷時代は当然の事、南北戦争で南軍が破れて奴隷が解放された後でも、南部諸州の有色人種への迫害は凄惨だった。

ジャズ・シンガーのビリー・ホリデーで有名な「奇妙な果実(Strange Fruit)」は、首つり縄で木から吊り下げられた黒人の姿を果実に見立てた歌。

1950年代、60年代になっても白人至上主義者達は、白人に反抗的な黒人をリンチして、そして首つり縄で木からぶら下げていた。

いえ、KKKの様な白人至上主義者だけでなく、普通の善良な白人住民達が、普通に黒人のリンチを見に集まっていた・・・それが50年位前までの南部の普通の風景だった。

キング牧師の運動や、リベラリスト達の啓もうによって表面的には「平等」が確立したかに見えますが、アメリカの社会の中に根を張る人種差別意識は、今でも社会の中に枝を張り巡らしています。

黒人だけで無く、アジア系が、ヒスパニック系が、イスラム系移民が、社会の無言の圧力に耐えながら生活する国がアメリカなのです。


そういうデリケートな国で、「リベラリスト=虐げられたマイノリテー」を批判する事は政治的にはタブーです。これは日本の同和問題に近く、政治家は周到に発言を選ばなければなりません。

その点において、トランプの「双方に非がある」発言は政治家としては大間違いです。

■ ブレーンのバノンの追放 ■

トランプは発言を訂正せず、世論はトランプ批判を強めていますが、この機を逃さずにホワイトハウスはら白人至上主義者のバノン大統領上級顧問が、ケリー主席補佐官によって解任されています。

バノンは極右のオルタナティブ新聞の発行者で、プアー・ホワイトの指示をトランプに集める事で彼を大統領に押し上げた立役者でした。アメリカ一国主義や、移民排斥、メキシコの壁など、選挙戦でトランプに指示を集めた政策の立案者は彼でしょう。

一方、政権が発足し、世論の圧力からトランプ政権が「普通」に舵を切り直し始めた事で、選挙戦からトランプを支えていたブレーンと、現実主義的なスタッフとの間に軋轢が生じる様になります。

最近ではバノンがホワイトハウス内の裏話を盛んにリークするなど、政権内の鼻つまみ者となっていたので、今回の事件をきっかけに政権から追放した・・・世間はもっぱらそう見ています。


■ 北朝鮮攻撃に否定的だったバノン ■

一見、クレージーな右翼と思われがちなバノンですが、北朝鮮への軍事攻撃には反対だったと新聞が伝えています。左派系メディアとのインタビューで「ソウルが火の海になるから北朝鮮攻撃は不意可能だ」と述べたそうです。
ソウルは北朝鮮国境から40Km程度しか離れておらず、ミサイルはおろか、通常の砲弾も容易に到達する距離です。仮に、アメリカが北朝鮮を攻撃したならば、ソウルは10分で火の海になります。

これ、他人事では無く、北朝鮮が本気になれば自滅覚悟で中距離ミサイルを東京や大阪にぶち込んで来るでしょう。PAC3ではこれを防ぐ事は出来ません。通常弾頭が1発東京都心に着弾したら、日本中がパニックどころか、世界経済がパニックを起こします。


ですから、例え暗殺であったとしても、アメリカが北朝鮮に軍事的行動を先に起こす事は99.999%あり得ない。その点、バノンは正鵠を得ています。


■ アメリカの北朝鮮攻撃は有り得るのか? ■


バノンの退場によって、トランプ政権が軍産複合体に乗っ取られてとの短絡的な陰謀論も目にしますが、トランプ政権内部はそんなに単純ではありません。

石油メジャーのエクソンの会長だったティラーソンが国務長官を務め、ウォール街がGSのOBのムニューチンを送り込み、政権の背後ではキッキインジャーの姿がチラつく・・・。

仮に戦争が起きるとしても、経済が崩壊した後に誤魔化す為の戦争が用意されているのだと思います。

■ 米財政のシーリングが近づいている ■


今回の混乱で市場が気にし始めたのが、米財政の上限問題。議会が上限引き上げを渋れば、9月中旬以降にアメリカの財政が底を付きませう。オバマ政権の時も政府機関の職員を一時自宅待機させて急場をしのぎました。

これをして「アメリカの財政破綻」や「米国債のデフォルト」に即結びつく訳ではありませんが、相場を揺さぶる材料にはなります。

今年に入ってから市場からボラティリティーが消失しており、投資家達もそろそろイベントに飢えている頃です。米国内の情勢が混乱すれば、株式市場、債券市場を揺さぶる動きが活発化するでしょう。現に株式市場に影響が出てダウが大きく下げています。

■ 確実にやって来る「崩壊」の足音が聞き取れるか ■

今回の件で米株市場などは多少の調整はするでしょうが、むしろ一本調子に相場が踏みあがって来たリスクを上手に振るい落したとも言えます。

事態が収拾すれば、個人投資家を中心に、またぞろリスクを取り始めるでしょう。一方で目先に効く投資家達は、波状的に売り抜けの状況を作り出し、リスクを徐々に圧縮しているはずです。

確実に言える事は「バブルの崩壊は必ずやって来る」という事。この足音が聞こえるか、聞こえないかによって投資家が生き残れるかどうかが決まります。

聞こえない人の生き残る道は・・・ゲームを早々に降りるしかありません。賢い人は既に、テーブルの外から最後の喧騒を見物していますが。


物価の財政理論(FTPL)をフリーランチだと勘違いする愚・・・三橋氏周辺はドリーマーが多い

2017-08-21 15:34:00 | 時事/金融危機
 

三橋貴明氏の周辺が「物価の財政理論(FTPL)」について幻想を膨らめている様なので、現実の日本に落とし込んで、彼らの夢を少し砕いておこうと思う。

■ 財政を拡大すればインフレ率は上昇する ■

1)「財政を拡大するとインフレが発生する」・・・これは当然ですよね。
2)「インフレが発生すると長期金利が上昇する」・・・これも当然ですよね

現在の日本では、財政拡大の要因が老人福祉ですから、ばら撒かれた資金の多くは預金され、金融機関と政府の間で循環する量が相当に多い。結果的に日本において財政拡大によるインフレ率の上昇は起こり難い。

しかし、政府が調子に乗って公共事業を増やしたりすると、消費性向が強い人々にお金が渡るので、インフレ率が上昇します。安倍政権発足直後の大型補正予算は確かに景気回復に効果がありましたが、あの規模の公共投資が継続的に行われれば日本のインフレ率は確実に上昇していたでしょう。

■ インフレ率の上昇は市中金利の上昇を促し、つられて国債金利も上昇する ■

ここからが問題です

3)「市中金利に引っ張られて国債金利が上昇する」

市中金利を決めるのは将来の物価予測です。物価上昇が予想される場合、預金金利があまりに低過ぎると預金者はインフレ率に金利が見合わない為に預金を引き出して金利の高い運用に切り替えます。当然、銀行は預金流出を阻止する為に、預金金利を引き上げなければなりません。

預金金利の上昇は、銀行の貸し出し金利の上昇を促します。そうしなければ銀行の利益が無くなってしまうからです。こうして、インフレや物価上昇予測は市中の金利を上昇させます。


ここで、日銀の異次元緩和によって国債金利がゼロ近傍にペッグされている状況で、国債金利が上昇するのかどうかが問題となります。


地銀、信金、ゆうちょ銀行、生保など中長期の国債を大量に保有する金融機関は長短金利が上昇に転じれば、預金金利を引き上げざるを得ず、それに見合う金利を得られる資産が必要になります。ところが手持ちの国債の金利はゼロ近傍で極端に低い。

さて、これらの金融機関は中長期国債を保有し続ける事が出来るのか?答えはNOです。金利が逆ザヤの状態では経理が成り立たないからです。そこで日本国債に売り圧力が高まり、国債価格は下落、国債金利は上昇に転じます。


■ 国債金利の上昇に中小の金融機関は耐えられない ■

そこで問題になるのがこれらの金融機関が大量に保有する国債で含み損が発生するという事。金融庁はこの様な事態を予測して、中小金融機関の国債偏重を是正しようと指導していますが、なかなな国債離れは進みません。

■ 今の日本にとってインフレ率はゼロ近傍が好ましい ■

そこで現在の日本では下手にインフレが発生すると、日本国債の需給バランスが崩れるので、インフレ率はゼロ近傍が好ましい。政府の国債発行コストを最小限に抑制できます。

財務省・日銀の描く勝ち逃げのイメージは、人口動体の最悪期を、国債のゼロ金利と、段階的な年金受給年齢の75歳までの引き上げでしのごうというもの。しかし、そこから日本経済が成長に転じると、国債価格の下落が発生し膨大な低利の日本国債を保有する日銀は事実上の債務超過に陥ります。

■ 日銀が政府の子会社であっても「円の暴落」は避けられない ■

政府+日銀を統合政府と考えるならば、政府は日銀に資本注入をして日銀の破綻を防ぎますが、その原資は国債です。これをさらに日銀がファイナンスすると、「円っていったい何なの?」となる事は確実で、為替市場で円は暴落し、輸入コストの上層が国内のインフレを加速させます。

途上国やブラジルやアルゼンチンで良く発生する「通貨の信用危機」ですが、実体経済の受給バランスなどに関係無く、通貨の信用が損なわれれば為替の暴落は先進国でも簡単に発生します。

事ここに至ると、日銀も財務省をインフレ率をコントロールする手段は在りません。


■ 中小金融機関の経営破綻による金融危機が最初に発生する ■

為替市場での円の暴落の前に、地方銀行や信金や、多分ゆうちょ銀行が経営破綻するので、全国で取り付け騒ぎが発生し、それはメガバンクにまで波及します。

多分、預金封鎖という事態になります。当然、通貨の信用が剥落し、インフレ率が急上昇するので、政府の債務は民間の預金の価値の喪失によってファイナンスされます。

■ 消費税増税はインフレ抑制手段として有効 ■

「急激なインフレを防げば良いじゃないか」と誰もが考えるでしょう。財務省の奥の手は「消費税増税」です。これで景気の頭を抑えるので、インフレ率をゼロ近傍にペッグ出来る。

さらには税収も増えるので一石二鳥となるかと思われますが・・・景気が後退して税収はイーブンか、或いはマイナスになる可能性が高い。財務省も消費税増税はあくまでも奥の手として温存したいハズ。

もっとも、日本がそんな事態になる前にリーマンショック以降の金融緩和バブルが弾けて、世界経済はリーマンショック以上の崩壊を経験するはずですから・・・財務省も日銀も、今しばらく耐えれば財政破綻の責任を経済危機に擦り付ける事が出来ます。



異論反論、ドシドシどうぞ!!