■ 暴力的なリベラル ■
白人至上主義者と過激なリベラルの対立が、トランプ政権を揺さぶっています。
一般的にリベラリストと効くと「ラブ&ピース」の様なお花畑左翼を思い浮かべますが、日本でもリベラル運動が過激化してテロリストを生み出した様に、アメリカの一部のリべリストも相当に過激です。
ただ、シャーロットビルの衝突や、その後の「リベラリスト」の行動を見ると、どうも彼らの暴力は「憂さ晴らし」の様にも見えます。トランプ当選直後のリベラルのデモも、一部の「憂さ晴らし」連中が過激化していました。
ネットでは「彼らは1日25ドルで雇われたプロ市民」だと噂されていますが、そんな事はどうでも良く、「一部のリベラリストが暴力的だ」というのは、誰の目にも明らかです。
■ トランプは正しい ■
「白人至上主義者だけでなく、双方に非がある」発言は、私的には正しいと思います。ケンカは一人では出来ません。
今回の事件は南北戦争時代の南軍の英雄の像をリベラリスト達が撤去しようとした事に端を発しています。それを阻止しようとした白人至上主義のKKKなどの集団と争いになったのです。
実はアメリカ南部の諸州では、「自分達は北のアメリカに占領されている」と考えている人達が多く住んでいます。南北戦争で負けて北の連邦政府に統合されたのだと。
これらの南部諸州では、連邦政府からの独立法案が毎年の様に州議会に提出され、数年前のテキサス州では住民投票で僅差で独立反対派が勝ちましたが、一歩間違えば、テキサスがUSAの地図から消えていたかもしれない・・・。
そんな南北戦争前の「自分達のアメリカ」に郷愁を抱く人々にとって、南軍の英雄の銅像を引き倒そうとするリベラリスト達は許す事は出来ません。
喧嘩を仕掛けたのはリベラリスト達なのだから、「喧嘩両成敗」というトランプの発言は正しい。
■ トランプの発言は間違っている ■
アフリカ系アメリカ人や、アジア人などの白人以外の移民にとっては、アメリカの歴史は迫害の歴史です。奴隷時代は当然の事、南北戦争で南軍が破れて奴隷が解放された後でも、南部諸州の有色人種への迫害は凄惨だった。
ジャズ・シンガーのビリー・ホリデーで有名な「奇妙な果実(Strange Fruit)」は、首つり縄で木から吊り下げられた黒人の姿を果実に見立てた歌。
1950年代、60年代になっても白人至上主義者達は、白人に反抗的な黒人をリンチして、そして首つり縄で木からぶら下げていた。
いえ、KKKの様な白人至上主義者だけでなく、普通の善良な白人住民達が、普通に黒人のリンチを見に集まっていた・・・それが50年位前までの南部の普通の風景だった。
キング牧師の運動や、リベラリスト達の啓もうによって表面的には「平等」が確立したかに見えますが、アメリカの社会の中に根を張る人種差別意識は、今でも社会の中に枝を張り巡らしています。
黒人だけで無く、アジア系が、ヒスパニック系が、イスラム系移民が、社会の無言の圧力に耐えながら生活する国がアメリカなのです。
そういうデリケートな国で、「リベラリスト=虐げられたマイノリテー」を批判する事は政治的にはタブーです。これは日本の同和問題に近く、政治家は周到に発言を選ばなければなりません。
その点において、トランプの「双方に非がある」発言は政治家としては大間違いです。
■ ブレーンのバノンの追放 ■
トランプは発言を訂正せず、世論はトランプ批判を強めていますが、この機を逃さずにホワイトハウスはら白人至上主義者のバノン大統領上級顧問が、ケリー主席補佐官によって解任されています。
バノンは極右のオルタナティブ新聞の発行者で、プアー・ホワイトの指示をトランプに集める事で彼を大統領に押し上げた立役者でした。アメリカ一国主義や、移民排斥、メキシコの壁など、選挙戦でトランプに指示を集めた政策の立案者は彼でしょう。
一方、政権が発足し、世論の圧力からトランプ政権が「普通」に舵を切り直し始めた事で、選挙戦からトランプを支えていたブレーンと、現実主義的なスタッフとの間に軋轢が生じる様になります。
最近ではバノンがホワイトハウス内の裏話を盛んにリークするなど、政権内の鼻つまみ者となっていたので、今回の事件をきっかけに政権から追放した・・・世間はもっぱらそう見ています。
■ 北朝鮮攻撃に否定的だったバノン ■
一見、クレージーな右翼と思われがちなバノンですが、北朝鮮への軍事攻撃には反対だったと新聞が伝えています。左派系メディアとのインタビューで「ソウルが火の海になるから北朝鮮攻撃は不意可能だ」と述べたそうです。
ソウルは北朝鮮国境から40Km程度しか離れておらず、ミサイルはおろか、通常の砲弾も容易に到達する距離です。仮に、アメリカが北朝鮮を攻撃したならば、ソウルは10分で火の海になります。
これ、他人事では無く、北朝鮮が本気になれば自滅覚悟で中距離ミサイルを東京や大阪にぶち込んで来るでしょう。PAC3ではこれを防ぐ事は出来ません。通常弾頭が1発東京都心に着弾したら、日本中がパニックどころか、世界経済がパニックを起こします。
ですから、例え暗殺であったとしても、アメリカが北朝鮮に軍事的行動を先に起こす事は99.999%あり得ない。その点、バノンは正鵠を得ています。
■ アメリカの北朝鮮攻撃は有り得るのか? ■
バノンの退場によって、トランプ政権が軍産複合体に乗っ取られてとの短絡的な陰謀論も目にしますが、トランプ政権内部はそんなに単純ではありません。
石油メジャーのエクソンの会長だったティラーソンが国務長官を務め、ウォール街がGSのOBのムニューチンを送り込み、政権の背後ではキッキインジャーの姿がチラつく・・・。
仮に戦争が起きるとしても、経済が崩壊した後に誤魔化す為の戦争が用意されているのだと思います。
■ 米財政のシーリングが近づいている ■
今回の混乱で市場が気にし始めたのが、米財政の上限問題。議会が上限引き上げを渋れば、9月中旬以降にアメリカの財政が底を付きませう。オバマ政権の時も政府機関の職員を一時自宅待機させて急場をしのぎました。
これをして「アメリカの財政破綻」や「米国債のデフォルト」に即結びつく訳ではありませんが、相場を揺さぶる材料にはなります。
今年に入ってから市場からボラティリティーが消失しており、投資家達もそろそろイベントに飢えている頃です。米国内の情勢が混乱すれば、株式市場、債券市場を揺さぶる動きが活発化するでしょう。現に株式市場に影響が出てダウが大きく下げています。
■ 確実にやって来る「崩壊」の足音が聞き取れるか ■
今回の件で米株市場などは多少の調整はするでしょうが、むしろ一本調子に相場が踏みあがって来たリスクを上手に振るい落したとも言えます。
事態が収拾すれば、個人投資家を中心に、またぞろリスクを取り始めるでしょう。一方で目先に効く投資家達は、波状的に売り抜けの状況を作り出し、リスクを徐々に圧縮しているはずです。
確実に言える事は「バブルの崩壊は必ずやって来る」という事。この足音が聞こえるか、聞こえないかによって投資家が生き残れるかどうかが決まります。
聞こえない人の生き残る道は・・・ゲームを早々に降りるしかありません。賢い人は既に、テーブルの外から最後の喧騒を見物していますが。