■ 公約を実行出来ないトランプ政権 ■
トランプ大統領の登場は市場を混乱させると予想されていましたが、昨年の大統領選挙の直後からはトランプ・ラリーと呼ばれる市場の好転が続きました。
これはトランプがメキシコの壁の建造で公共投資を拡大したり、或いはさメイドイン・アメリカの復活で国内の景気が上向くと、市場が勝手に予測した為の起こったリスクオンの現象です。
同時に米国債金利の上昇(価格の下落)と、FRBの利上げベースが早まる事を予測して、米国債金利は上昇しました。
ところが、トランプ大統領誕生から半年以上経った今も、トランプは公約のほとんどを実現出来ず、政権内の内紛の結果、アメリカ至上主義や白人至上主義的な意見を持つスタッフが政権から去り始めています。
■ トランプ大統領が抑制する米国金利 ■
FRBは景気拡大の速度が減速しているとの見方を示しており、市場は利上げペースも鈍化すると予想しています。
米国債金利は上昇から下落に転じ、インフレ率も鈍化しています。
アメリカの景気はリーマンショックからの危機を脱した後は、好循環期に入り、新政権がトランプよりも信頼感が在る大統領に率いられていたら、金利の上昇ペースは現在よりも早くなっていたでしょう。ところが、政治に素人のトランプが色々引っかき回すから、政治不安から景気の拡大が鈍化した。
これ、見方を変えると「トランプがインフレや金利を抑制している」と考える事が可能です。
現在の金融市場はFRBの利上げペースばかり気にしています。利上げが早まる雇用の回復やインフレ率の上昇を市場は嫌います。
トランプが米金利を抑制するのなら、FRBも利上げペースをコントロールする余地が生まれ、拙速な利上げでバブル崩壊の引き金を引く役から暫く逃避出来ます。
・・・実はFRBや金融業界にとって、意外にもトランプは使い易い人材なのかも知れません。
■ ボラティリティーを生み出す大統領 ■
市場は、崩壊こそ望みませんが、ボアティリティーの消失も嫌います。
ところが、ハチャメチャなトランプの言動は、市場を揺さぶる事で、適度なボラティリティーを生み出しています。
今回もトランプが債務上弦問題を政治カードとする事で、市場は動揺しボラティリティが拡大するはずです。もう、ここら辺はウォール街との阿吽の呼吸で進行している様に思えてなりません。
実はトランプ氏、結構な「役者」なのかもしれません。