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ポピュリズムの最たる「教育無償化」・・・国民は身勝手である

2017-12-07 11:04:00 | 時事/金融危機
 

■ 税金は払いたくないけれど、貰えるものは貰いたい ■

どんな正論を言う人でも、人間という生き物は本質的には身勝手です。これは生の「生存戦略」として本能に植え付けられたもので、身勝手である故に生き延び、繁栄する事が許される。(例外もありますが)

日頃は偉そうな事を書いている私自身、出来る事なら税金は安い方が良いと思いますし、教育費を国が援助してくれるならそれを断る理由が見つかりません。

「税金は払いたくないけれど、貰うものは貰いたい」というのは国民のほとんど全てが心の奥で願っている事です。

■ 選挙に勝つには国民の願いを叶えれば良い ■

民主主義において選挙に勝利して政権を取るには、他の政党よりも多くの国民の願いを叶える政策を主張すれば良い。但し、実現可能な政策で無ければ国民は見向きもしません。

国民の多くが景気が良くなり、所得が増える事を期待しますが、政策でそれを実現する事の難しさはバブル以降の20年間が証明しています。

そこで各政党は「バラマキ」という財政拡大を伴う政策をエサとしますが、財源の裏付けの無い政策は国民に見透かされます。与党であれば財務省と相談の上、補正予算を組むという手段が使われますが、民主党は「特別会計の埋蔵金」という実際には存在しない財源を頼りました。

何れにしても、ある程度財源に裏打ちされた「バラマキ」を沢山出せる政党が国民の支持を集めます。

■ ゼロ金利国債と、中央銀行の財政ファイナンスという無限の財源 ■

現在、日本国債の金利はゼロ近傍に固定され、日銀は市場から新発国債に相当する額の国債を買い入れていますから、これは財政ファイナンスと区別する事は難しい。国債市場の金利をゼロに固定する限り、政府は無利息の国債を大量に発行する事が出来ます。

但し、この「無限国債」にはストッパーが付いており、何かを切っ掛けにして国債市場の金利が上昇すれば、国債の増発に歯止めが掛かります。これが中央銀行が直接国債を政府から買い入れる財政ファイナンスとの違いで、現在の超次元緩和も一応は財政規律を守る為のストッパーは付いています。

■ 結局は赤字国債が増発される ■

「独裁的」な安倍政権とて、「国債を大量に増刷して国民生活を豊かにする」などという無責任な政策は実行出来ず、「消費税増税分の一部を教育無償化として国民に還元する」と発表しています。

しかし、そもそも消費税増税分の税収は、社会保障費の充当用に用途は決まっていたはずですから、足りなくなった社会保障費向けの予算は赤字国債の増発によって賄われるはずです。

簡単なトリックですが、「無限国債」が条件付きで成立している現在、国債の増発が短期的に財政を逼迫させる事も、国民に増税を強いる事も有りません。

■ 財政ファイナンスが成立する場合、財政規律は必ず緩む ■

仮にあなたが引き出しても、引きだしても残高が減らない預金口座を持っていたらどうなるでしょうか・・・。最初は銀行のミスを疑いながら必要な額だけチョコチョコと預金を引き出すでしょうが、しばらくすると「本当に預金が減らないんだ」と思う様になり、今まで欲しくても我慢していた物を大量に買い始めるでしょう。

財政ファイナンスも同様に、最初のうちは「財政規律を守る」という建前を崩さない様に、少しずつ財政を拡大し始めますが、だんだんと感覚がマヒして大型のバラマキを繰り返す様になります。

例え財政拡大の効果が経済の拡大に寄与しなくとも、財政が拡大した分だけは名目GDPが拡大し、バラマキが行われた人達のお金は増えます。

しかし、財政支出を減らした途端に、減らした分だけ名目GDPが減り、人々の手にするお金も減りますから、一度財政ファイナンスの手を染めた政権は、なかなかそれを止める事が出来ません。むしろ、選挙の度に人気取りの財政拡大が繰り返される事になります。

■ 財政規律が緩む一方で、増税も進む ■

「財政ファイナンスは禁じ手」という事は政府も重々承知しています。国債市場の信頼を保つ事も大切です。だから、財政を拡大する一方で、財政規律を守っているというアピールの為に平行して増税が行われます。

今回の「ナンチャッテ教育無償化」は消費税増税とセットとされていますし、高額所得者の給与所得控除の上限額の190万円で頭打ちになります。

教育無償化は低所得者程、支給金額が高いシステムなので、高額所得者からの所得移転として、この増税に多くの国民は賛同します。

一方、財務省は一度確保した財源はなかなか手放しません。景気が悪くなっても消費率が引き下げられる事はありませんし、復興税として増税されていた税金は、森林環境税としてほぼ同額が引き続き徴収されます。

こうして、知らず知らずの内に、無限国債を当てにして財政拡大と、財政規律を守るというポーズの為の増税が繰り返されて行きます。

■ バラマキが誰かのポケットに入るのが民主主義 ■

無限国債や財政ファイナンスという「打ち出の小槌」を手にした政権は、「教育の無償化」など「耳障りの良い」政策で国民の歓心を引きます。

一方で、政治にはお金が掛かりますし、支持者への見返りも必要ですから、バラマキのうちの幾らかが支援者のポケットに入るシステムが構築されます。

例えば高等教育の無償化と、少子化は不可分ではありません。私立高校も私立大学も生徒の減少する社会で経営は悪化します。下位の学校から生徒が集まらなくなり経営破綻する学校が全国で続出します。

一方で、加計学園を見るまでも無く、学校経営者は政治家と繋がりを持っている人も多い。あるいは政治家が学校法人を経営しているケースもある。

国民が「得をした」と思う教育無償化ですが、影では「もっと得をした」人が居るというのが民主主義のトリックです。そして「もっと得をした」人の中に政治家は入っている。

■ 最後にはインフレか税金で国民が支払う ■

民主主義は平等の振りをして、実は不平等です。

「得をした」人達は、最後には増税かインフレ税によって民主主義のコストを支払いますが、「もっと得をした」人達はコストを負担しません。

国民一人一人の「もっと得をしたい」という本能的欲求の集合体が民主主義とするならば、本能をむき出しにした民主主義の結末は「弱肉供食」という自然の本能を体現したものになるハズです。

この様な民主主義の暴走を防ぐ為に、財政ファイナンスが禁止されるなど安全弁が設けられている訳ですが、安倍政権はこの安全弁を幾つも外し始めています。

ポピュリズムの手法には「得をするよ」という「見せかけの利益拡大」の他に、「隣国敵視」という分かり易い「憂さ晴らし」も良く使われます。

さらには、これらの結果得られた「高い支持率を背景にした法律やルールの無視」というのもポピュリズムの政治にはセットとなっています。


反省すべきは戦前と同様に、これを許す国民なのですが・・・「安倍政権を支持すれば教育費がタダになるよね」という分かり易い詐欺に国民はすっかり騙されています。





「生存戦略」とは本来こうあるべき・・・なんだけどね。



これぞアニメの「様式美」の極北。

結局アニメかよーーーーというツッコミOK!!