■ 中央銀行制度に敵対するビットコイン ■
法的には通貨としては認められていないビットコイン。金券の様な扱いですが、実際には買い物が出来るだけでなく、国境を跨いだ送金などにも利用されています。
中国では通貨の持ち出しが法律で規制されていますが、ビットコインを利用して海外に送金する事が流行したので、政府がビットコインの交換所を閉鎖してしまいました。
アングラマネーのロンダリングや送金の手段としてもビットコインは利用されている様でです。「ブロックチェイン技術によって流通過程がトレース出来る事」が違法の利用を抑止している様には見えません。
仮にビットコインなどの仮想通貨の利便性が一般に知られる様になり、その利用において既存通貨を凌ぐ様になれば、中央銀行の金融調節機能などにも大きな影響を及ぼします。
ビットコインなどの仮想通貨の利用拡大は、既存の中央銀行制度と共存する事は難しく、中央銀行や各国政府がこれを野放しにしている事は不可解極まり無い。
■ 不安定過ぎて通貨としては信用できない ■
「中央銀行制度はイルミナティーの作った経済的奴隷制度だ」などと主張する陰謀論者の中には、民間の人々が作り出したビットコインなどの仮想通貨を礼讃する人達も居ます。
しかし、現状のビットコインを見るに日々その価値が大きく変動していて、とても通貨の代用になるものとは思えません。手持ちのお金の価値が一夜にして5%も変動してしまう様では通貨としては怖くて使う事が出来ません。
■ ビットコインの価値 ■
ブロックチェイン技術やマイニングの管理など「ビットコインって凄い」と勘違いさせる「神話」によって初期のビットコインの価値は保たれていました。これは「新しもの好き」の人達がビットコインを神格化させていただけとも言えます。
その後、国際送金やマネーロンダリングなど実用性が注目され、中国人が海外送金に利用した事でビットコインの価格は急激に上昇しました。
そして、ビットコインの急激な値上がりを目にした日本人が中国人に代わってビットコイン市場を今年の夏以降支えて来ました。現在ビットコインを買う人の多くが、決済の利便性では無く「儲かるから買う」という行動を取っており、ビットコインは完全に投資(投機)の対象になっています。
そして、ヘッジファンドが資金運用に組み込む事で、ビットコイン市場に大量の資金が流れ込みました。ビットコインを持っている人達は「今にもっと値上がりする」と予想するので手放しません。結果的に市場に供給されるビットコインは極端に少なくなり、値上がりに拍車を掛けています。これは典型的なバブルです。
■ 金融商品としてのビットコイン ■
シカゴ・オプション取引所にビットコインの先物取引が上場され、さらに世界最大の金融取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所までもが今年末までにビットコインの先物を扱うと発表するなど「金融商品」としてビットコインが一般的に流通する下地が整いつつあります。
これらの報道に、ビットコインは今後一般的な金融商品の一つとしてさらに値段が上がり、その価値は安定すると考える人達も多いでしょう。この様な「期待」が現在のビットコインの爆騰を支えています。
■ 排気ガスや二酸化炭素の排出権すら金融商品にするマーカンタイル取引所 ■
シカゴ・マーカンタイル取引所は世界最大の取引所であると同時に、かなりブラックな取引所です。
かつてアメリカの排ガス規制が強化された時に排ガスの排出権を取引に加えたと何かの本で読んだ記憶がありますが、現在はCO2の排出権取引を拡大しようとしています。さらには気候デリバティブなどという取引までしています。
気候デリバティブは温度、湿度、台風などの気象現象に対して一定の基準を設け、その基準を越えれば儲けが出る様な取引ですが、気象によるビジネスの損失をヘッジする目的で開発されたデリバティブ取引です。
しかし、一旦、気象の様な人間がコントロール出来ないものでも「金融商品化」して流通する様になると「投資の対象」となります。「二酸化炭素の排出権」なども同様で、温暖化防止の理念など関係無く「投資の対象」として儲かるならばお金が集まって来ます。
気象デリバティブは「なんかウソ臭い」と人々が考えるでしょうから、それ程大きな市場にはなり得ません。二酸化炭素の排出権取引には期待している様ですが、欧州では既に市場が壊滅状態あるので、トランプ政権下のアメリカで成功する可能性は低いかと・・・。
■ ビットコインはヒット金融商品になるだろう ■
「気象」や「二酸化炭素」といったものが「金融商品」というのは少し抵抗がありますが、「ビットコイン」は何だか「価値」がありそうに感じるのが人の感覚。「価値が有りそう」という演出の為に、ビットコインのトークン(硬貨)は、金貨に似せて作られ、マークも$に擬態しています。「データの塊」に価値を見出せない人でも、金貨の偽物には何となく騙される。
実際の取引でトークンがやり取りされる訳ではありませんが、通貨デリバティブ取引をしているという錯覚は作り出せます。
マーカンタイル取引所がビットコインの金融商品を扱う様になれば、最初の内は人気商品になる可能性は高いと思います。
■ 「データの塊」に価値が有るのか? ■
「マイニングによる有限性」などビットコインの価値を支える「神話」は色々有りますが、大量に電力を消費するマイニングが本当に価値を生むのかという点に疑問を呈する専門家は多い。
仮にこの点に疑問が持たれると、ビットコインの価値は「決済通貨としての利便性」によってのみ支えられる事になりますが、はたして現在の価値がこの利便性を反映したものだとは決して思えません。
何かを切っ掛けにしてビットコインが大暴落したとしたら、人々はビットコインが「データの塊」に過ぎないという現実に引き戻されます。小判だと思っていたら木葉だった・・・そんな狐に摘ままれたような気分を味わうでしょう。
■ ビットコインは壮大な実験の為の作られ、野放しにされている? ■
ブロックチェイン技術自体は、次世代の通貨システムとして有望です。銀行の存在自体を必要とせず人から人へと国境を越えて通貨が行き来すれば経済は活性化します。何故なら経済活動とは通貨の移動速度と同義だからです。
一方で、ブロックチェイン技術を用いればビットコインの様な仮想通貨を無限に作る事も出来ます。仮に中央銀行が発行する既存通貨よりも「民間の誰が作ったかも分からない仮想通貨」が流通する様になれば中央銀行制度は崩壊します。
本来は中央銀行なり政府が真っ先に規制すべき「偽札」に過ぎないビットコインが野放しにされ、シカゴ市場に先物が上場されるのは何故か・・・。
私は、電子マネーとブロックチェイン技術の実証実験の為にビットコインが野放しにされているのでは無いかと妄想しています。
■ 「国債に支えられた通貨の価値」から次の価値創造の壮大な実験 ■
現在の通貨は「中央銀行の資産」によって価値を支えられています。「中央銀行の資産=国債」と言い換える事も出来ます。国債は国の負債ですから将来的には国民の税金によって支払われます。「中央銀行券の価値=国民の将来手的な価値創造力」と言い換える事も可能です。
ところが「国債の信用」がリーマンショック以降揺らいでいます。日本を例に取るまでも無く「国債発行残高>国民の将来的な価値の創造}になっているのです。この状態は一時的なもので、長期的にはインフレによって国債の価値(通貨の価値)が失われる事でバランスします。
しかし、人々がお金に価値が有ると信じるのは、こんな難しい原則をいちいち考えたりしません。物やサービスが買えるからお金に価値があると信じているのです。
それならば通貨の価値の裏付けが「国債」である必要も本来在りません。「通貨が過剰に発行されて価値が失われる事が無い仕組み」が確立すれば、排気ガスだろうが、二酸化炭素の排出権だろうが、通貨の価値の裏付け成り得るのです。そしてマイニングの制限という仮想通貨の仕組みも確かに価値の裏付けになります。
ビットコインが野放しにされているのは、この「マイニングの規制による価値の裏付け」をどれ程人が信じられるのか、或いは、そんな原理など分からなくとも「流通し物が買える」という「利便性が通貨の価値を支えられるのか」という疑問への実証実験なのだと妄想します。
■ 大爆発して終わるであろうビットコイン ■
多くの国が電子通貨の研究や実用を進める中で、ビットコインなどの民間の仮想通貨は邪魔な存在になって行きます。
ビットコインは必ずや「権力」や「通貨マフィア(中央銀行制度)」によって潰されますが、ただ法的に規制したのでは、雨後の筍の様に姿を変えたビットコインが次々に生まれるでしょう。そこで通貨マフィア達は「民間の仮想通貨は信用できない」という痛烈な印象を人々に植え付けるのでは無いか。
その為にはビットコインで人々が痛い思いをする事が重要となります。この痛い思いとは単に投資した人が損をした程度の痛みでは無く、「経済や金融システムの脅威」という万人に影響を与える痛みである必要が在ります。
その為にビットコインは今しばらくは放任され、そして最後はバブルが大爆発して終わる。
■ SF的妄想も在る・・・ ■
ここまでの妄想は陰謀論者としての妄想ですが、SF好きの妄想も在るのでちょっと披露します。
リーマンショック以降の狂った様な金融緩和バブルはそろそろ弾ける頃ですが、それによって今度は国債の信用不安が発生したとします。そして、それは既存通貨の信用不安に発展します。
「通貨の価値が消える」という危機に直面した時、人々がビットコインに逃げ場を求めたらどうなるか・・・ビットコインが世界共通通貨に化ける可能性が有ります。
人々は初めて「人民による、人民の為の通貨」を手に入れたと喜ぶでしょう。
しかし、ビットコインの発行者は・・・通貨マフィア(中央銀行)だった・・・。
こんな落ちが、SF的には面白いかな。