本日はバリバリの陰謀論の与太話です。
■ エルサレムを首都として認める ■
トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として認め、将来的にはアメリカ大使館を移転すると発表した事で世界中で反発が広がっています。
イスラエルの首都は確かにエルサレムですが、この地はユダヤ教とイスラム教の両方の聖地の為に、宗教対立の象徴でもあります。だから各国は大使館をテルアビブに置き、エルサレムを首都扱いする事を避けて来ました。
トランプがこの慣例を破った背景をメジャーメディアは「選挙公約を果たした」と報道しています。トランプに資金提供したユダヤ勢力への公約を守ったと言うのです。
■ 人造国家イスラエル ■
パレスチナの地のユダヤ人の国家を建設する運動は1890年代にオーストリアで始まりますが、これを「シオニズム」と呼びます。シオンとはヘブライ語で「要塞」を意味する言葉で聖書には150回程登場する様ですが、ここでは「神殿」とか「聖なる地」を指す言葉として用いられ、「シオン=聖地エルサレム」と解釈される様になります。
ユダヤ人は紀元前17世紀頃に集団でエジプトに連れ去られますが、紀元前13世紀(前16世紀との説も)頃、モーゼによって60万人のユダヤ人がエジプトを脱出してパレスチナの地に戻って来たとされています。当時、パレスチナには既にカナン人などが住み着いていましたが、ユダヤ人達は彼らともとの戦いの末、パレスチナの地に住み着き勢力を拡大して行きます。
ユダヤ人の王国はアッシリアやバビロニアなどの王国との戦いに敗れ何度か滅んでいますが、紀元前539年にアケメネス朝ペルシアが新バビロニア王国を破った後には、自治が認められ、最終的にはローマ領ユダヤ属州とされます。
紀元前66年にユダヤ人の反乱「ユダヤ戦争」が起こり、ローマ軍に敗れたユダヤの自治は廃止され弾圧を受ける様になります。住んでいた地は、かつてのユダヤ人の敵であったペリシテ人にちなんだパレスチナに改名されます。こうしてイスラエルを追われたユダヤ人達は世界各地へと移住し、国家を持たない民となります。
「世界各地に分散して暮らすユダヤ人をパレスチナの地に集めて、イスラエルというユダヤ人国家を建設しよう」という運動が「シオニズム」で、「シオンの丘で再び会おう」という思いが込められています。
■ ナチスドイツが輸送船でユダヤ人をイスラエルに送り込んでいた ■
ここからは陰謀論の与太話。
一般的には第二次世界大戦の戦費に窮したチャーチルがロスチャイルドに泣きついた時、戦費を出す代わりにイスラエルの建国を約束させたと言われています。ロスチャイルドはシオニストだったのです。
ところで、ナチスドイツはユダヤ人を迫害したと世界的に信じられていますが、これには多少の誤解が有ります。
当時、世界に散らばったユダヤ人は、それぞれの地の民族や文化に「同化」しようとする勢力と、ユダヤ人のアイデンティティーを保つ事を良しとする「異化」を進める勢力とに分かれて対立していました。
この「異化」を目指す勢力が「シオニスト」ですが、彼らはナチスドイツと協力関係にあった。第二次世界大戦前にナチスドイツはユダヤ人を中東に送る輸送船を運行していたと言われています。それでも、ヨーロッパの各地の生活に慣れたユダヤ人の多くは、その地を離れる事を好まなかった。だからナチスドイツはユダヤ人を迫害し、強制的に集めて収容所に送った。
結果的に彼らは生活基盤を失いますが、戦後、パレスチナの地にイスラエルというユダヤ人の地が建国されたので、多くのユダヤ人がその地を目指す事になります。
■ イスラエルを建国しても国民が居なければ国家として成り立たない ■
ユダヤ人の「異化」を進めたいシオニスト達は、パレスチナの地にユダヤ人の国家を建設しようとしますが、国民が居なければ国家としては成り立ちません。そこで、ナチスドイツと協力して、ヨーロッパに住まうユダヤ人達を強制的にイスラエルに移住させた・・・陰謀論者はこう考えています。
第二世界大戦以前、ロックフェラーはナチスドイツを支援したり、優生学の研究に資金を提供するなど、ドイツとアメリカという国家の対立とは別の動きをしていました。陰謀論的にはヒットラーも世界を動かす経営者の一味、或いはアジテーションの上手い役者の一人だったお考えられます。
そして、彼に与えられた任務の一つが、ヨーロッパのユダヤ人をイスラエルに移住させる事・・・まあ頭のネジの緩んだ陰謀論に過ぎませんが・・・。
■ 世界を動かすユダヤ人は中東系では無い ■
ところで、ユダヤ人と一言で言っても民族的に共通している訳では在りません。広義のユダヤk人は「ユダヤ教を信仰する人」です。ですから、元々ヨーロッパに住んでいた人達でもユダヤ教徒となればユダヤ人と呼ばれる事も有ります。
世界の金融業はロスチャイルドを始めとしたユダヤ人に支配されていますが、これには理由があります。キリスト教は金利を取る事を禁じており、お金を貸して金利を取る「金貸し」という職業は卑しいものとされていました。ところが、ユダヤ教ではこれを禁じていなかったので、ユダヤ人に金貸しを生業とする者が多かったのです。その中の有力者がロスチャイルドでありであり、彼らを中心に現在の銀行システムや金融システムが構築されます。
ロスチャイルドを始めとした権力と資金力を持ったユダヤ人の多くがヨーロッパ出身の白人系のユダヤ人だと言われています。彼らの事を「アシュケナージ」と呼びます。
チャーチルにイスラエルの建国を約束させたロスチャイルドはユダヤ教徒ではありますが、イスラエル(パレスチナ)とは縁もゆかりも無いアシュケナージ系のユダヤ人です。そんな権力を持ったユダヤ人が何故、パレスチナにユダヤ人の国を作ろうとしたのか?
■ 中東の火種としての、そしてバランサーとしての人造国家イスラエル ■
当時も現在も中東が石油の産地として重要な地位を占める事に変わりありません。
第二次世界大戦以前の帝国主義の時代、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアといった国々は植民地として直接中東の油田地帯を支配していました。
しかし、植民地では民族自立の運動が次第に激しくなり、宗主国が植民地の人達の反乱を抑え込むコストはバカにならなくなります。そこで、第二次世界大戦後、ヨーロッパの国々は植民地の独立を認めますが、その支配力は「傀儡」という形で温存しようとします。
中東では、部族長を適当に選んで「王」としますが、彼らの支配は他部族には及ばないので、旧宗主国の後ろ盾が無ければ政権は直ぐに崩壊してしまいます。こうして、中東では旧宗主国の意のままになる「王国」が沢山独立しますが、そんな子供騙しがいつまでも通用する訳がありません。
中東諸国ではエジプトで最初のクーデターが起き国王が追放されます。1952年にナセルが起こしたこのクーデターは「汎アラブ主義」として周辺国に飛び火します。イラクでフセインが、リビアでカダフィーが、シリアでアサドが、傀儡王家を打倒すべ決起します。彼らは欧米の傀儡国家からアラブ人の手に国家と石油利権を取り戻そうとします。さらにはイランでイスラム革命が起こり、中東での欧米の影響力は弱まるかに見えました。
しかし、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など、依然として欧米の傀儡の国家も残り、それぞれの勢力が微妙に反目しながら、さらにアラブ世界全体としてイスラエルと対立するという複雑な中東情勢が形成され現在に至ります。
ここで重要な点は、イスラエルに敵対した時に中東は結束するという点です。イスラエルという共通の敵の存在感が薄まると、中東では宗教対立が先鋭化します。シーア派とスンニ派の対立です。
シーア派のリーダがイランであり、その影響力がシリア、イラク、ヨルダン、イエメン、サウジアラビア東部のシーア派に及びます。これらの国が結束すると、ヨーロッパと中東が分断されます。
スンニ派のリーダーはサウジアラビアですが、アラブ首長国連邦などがこれに従います。(サウジの王家は原理主義的なワッハーブ派ですが。)
現在、イランとサウジアラビアの仲は極めて悪く、イエメン国内のシーア派をイランが焚きつけているとしてサウジアラビアは隣国イエメンに出兵して、反政府勢力であるフーシを抑え込もうとしています。フーシェこれに対抗してミサイルをサウジアラビアやアラブ首長国連邦に向けて発射しています。
このまま対立がエスカレートすると・・・中東を二分する大戦争に発展する恐れがありますが・・・エルサレムをイスラエルの首都として認めるというトランプ発言で中東の空気は一変しました。「イスラエル憎し」の一点においてのみ、中東諸国の足並みが揃うのです。
建国以来、イスラエルは4回に渡る中東戦争の当事者となりますが、はたして今回はどうなるのか・・・。トランプ発言が過激さを増したシーア派とスンニ派の対立をクールダウンさせるものなのか、或いは、次の大規模な中東戦争の火種となるのか、暫くは様子見が必要でしょう。
何れにしても、「人造国家イスラエル」は中東戦争の導火線として原油価格のコントロールに利用され、さらには中東の「不安定な内の安定」を保つ上で重要な役割を果たしています。
陰謀論的には当たり前ですが・・・ニュースや新聞とはだいぶズレた世界観です。