■ トランプ劇場に翻弄された陰謀論者 ■
アメリカでは心配された襲撃も無く、バイデン新大統領が誕生しました。陰謀論愛好家としては、もう少し波乱があっても良かったのですが・・・。
トランプ大統領就任以降、アメリカのプアーな白人と、世界のネットリテラシーが欠如した人々は「トランプこそ影の支配者と戦う正義の味方」と信じて、様々な信憑性の薄い情報に踊らされて来ました。そこにはトランプを裏で操る者達の綿密な作戦が有った様に思われます。
トランプは不利な前回大統領選を有利にする為に、陰謀論を巧みに利用しました。ネットでは「クリントン家は中国と密着している」だとか、「悪魔崇拝の幼児性愛者が政治家や資本家には沢山居る」などという噂が流れていましたから、巧にこの噂を利用した。
トランプ自身は、過激な噂に明確に触れる事は有りませんでしたが、「地球温暖化は嘘だ」とか「重大な真実が明かされるだろう」などという陰謀脳の人達にだけアピールするワードをツイートする事で、「トランプは影の支配者と戦っている」という妄想を搔き立てた。
同時にトランプを操る者達は、ネットにヒラリーを攻撃する様々な書き込みを垂れ流し、「悪の権化のヒラリーと戦うトランプは正義」という印象操作を行いました。「Q」と自称する陰謀論者の存在も無視出来ません。自称「政府内部の事情に詳しい」とする「Q」は、陰謀論者の好む素材を提供し、陰謀論者達はそれに尾ひれを付けて拡散した。
トランプの背後には当選前からキッシンジャーが見え隠れしていましたから、トランプは「あっち側」の人間である事は明確でしたが、「キッシンジャー=ロックフェラー」という思い込みから、「トランプはロスチャイルドを筆頭とする影に勢力と戦っている」という思い込みが往年の陰謀論者の間にも生まれていました。
■ 「中国憎し→トランプ頑張れ」という単純思考の日本のネトウヨ ■
トランプの支持者は世界中に生まれましたが、日本のネトウヨのトランプへの傾倒は特筆すべきでしょう。トランプは中国に対して強硬な姿勢を崩しませんでしたので、「中国憎し」のネトウヨは「トランプ頑張れ」となり、ネットに流れる様々な偽情報を鵜呑みにしてしまった。
アメリカのトランプ教徒が垂れ流すいい加減な情報を、英語も良く分からないネトウヨが拙い英語力で誤解し、それをネットにバラマキ、さらにアメリカ人はそれを見付けて尾ひれが付く・・・こんな闇鍋の様な偽情報が、トランプが大統領選に敗れてからはネットに溢れ返ります。
「戒厳令が近い」とか「軍が動き出している」など、まことしやかに噂されていました。
■ 「陰謀論」を逆手に取った議会襲撃 ■
陰謀論に脳を冒された人々にとってトランプに言葉か「神の言葉」となります。まさに「トランプ教」です。
確かにアメリカも日本も選挙システムにはアヤシイ所が多いのですが、それは対立する陣営のどちらかが正義で一方的に選挙で不利益を被るものでは有りません。民主主義の茶番においては「対立」はガス抜きの重要な要素であり、選挙は民主主義が正常に機能していると国民に信じ込ませる儀式に過ぎません。日本においても、選挙結果はそれなりに世論を反映しています。但し、世論自体がマスコミによって誘導されている事がキーポイントです。
トランプ教徒やニワカ陰謀論者は、「政治自体がプロレス」という概念が無いので「善悪二元論」で世の中を見ています。「トランプが不正選挙で負けたならばトランプこそが正義」として、その信仰をさらに高めていったのです。
トランプは「ワシントンに集まり、議会に行進して、共和党議員を応援しよう!」と教徒をけしかけるだけで良い。狂信的なトランプ教徒達は、「民主党議員は世界の悪と繋がっている」「ペンスは裏切り者だ」とネットを通じて洗脳されていますから、誰かが議会に突入すれば「聖戦の始まりだ」とばかりにそれに続きます。
当然彼らにはトランプの言葉はこう聞こえています。「我が忠実な下部たちよ、ワシントンに集い、議場に救う悪を駆逐せよ!」と。
今回の議会襲撃は世界の経営者のシナリオ通りに進行します。議場の警備は予め充分では無く、警備の中にはバリケードを開いて群衆を招き入れた者や、群衆を背景にスマホの自撮りをする者も居た。
群衆の中には、予め議場突入を扇動する者達が仕込まれていたハズです。群衆はトランプが別の場所で演説している時から議場周辺に既に集まっていました。
■ 議場襲撃事件でトランプは役を終えた ■
トランンプの役割は議場襲撃を扇動する所までだったのでしょう。この事件には二つの目的が有ります。
1)分断を決定的にする
2)トランプを速やかに引退させる
「トランプ教徒」達は議場襲撃によって溜飲を下げ、警備が強固となる中で新な襲撃はしばらくは控えるでしょう。但し、議場襲撃事件はアメリカの分断が相当に深まっている事を国民の意識に深く刻み込みました。
今後アメリカ国民は「トランプ教徒は何をするか分からない」という疑心暗鬼に囚われます。議場襲撃の後に、「各州の議会への襲撃が計画されている」とか「イラン革命防衛軍がトランプ教徒に生物兵器を提供した」などという情報がネットに流されています。これらは、シナリオを描いている連中が意図的に流したガセ情報だと思われますが、多くの人達が「トランプ教徒ならやり兼ねない」と思い込みます。こうして、アメリカの分断は「空気」から確固としたイデオロギーの対立へと固定化されて行きます。
トランプは襲撃事件まではさんざんトランプ教徒達を煽りましたが、Twitterのアカウントを停止されてからはオトナシイ。教徒達の期待を後目にとっととフロリダに退いてしまった。これも襲撃事件の目的の一つです。陰謀論者の一部には「種激事件の首謀者はアンティファやBLMで、トランプを陥れる目的があった」と主張しますが、トランプは元々、仕掛け人に過ぎないので信者を率いて聖戦を戦う気など毛頭ありません。そもそも彼は作られたイコンに過ぎません。
■ イコンを失い「革マル化」する信者 ■
トランプの退場はトランプ教徒に大きな喪失感を与えると同時に、新な闘争のエネルギーを供給し続けます。「闘争半ばに倒れたトランプの意思を継ぐ」というのが信者の目的となるからです。
「貧困」によるストレスの捌け口として「トランプの目指した世界を実現する」という目的は教徒を陶酔させます。バイデン新大統領はトランプの政策を180度ひっくり返して、中国敵視政策を緩和し、移民にも優しい政策を取る。当然、プアーホワイトと移民やアフリカ系のアメリカ人の間で仕事の奪い合いが起き、貧しい白人達のストレスは高まって行きます。
トランプという先導者を失っても、不満の対象を明確化された事によりトランプ教は生き残り続け、アンティファやBLMなどと激しい対立を繰り返すでしょう。かつての日本や世界の共産主義者達が、本来の運動の目的を忘れて、自己実現の為に過激化したと同じ現象が起こります。まさに「トランプ教徒の革マル化」が進行する。
■ それでもアメリカ合衆国は地図から消える ■
「トランプがアメリカ共和国の初代大統領になる」という噂がネットでは持ち上がっています。軍は既にトランプの味方で、バイデン新大統領は逮捕される・・・そんな噂です。
これは根も葉も無い噂に過ぎません。
しかし、私は将来的にはアメリカ合衆国は地図から消え、アメリカは3つ程度の連邦国家に分割されると思います。その原動力は「ドルの暴落、或いは米国債のデフォルト」だと妄想しています。
バイデン新大統領はバラマキ型の大統領ですから、コロナ対策として財政を拡大します。実はコロナショック以降、FRBは米国債金利をゼロに押さえ込もうとしていますが、あまりにも大量の米国債が発行されたので米国債金利はジリジリと上昇しています。これが2%を超えるとドル安が進行します。
ドルが安くなるとアメリカの輸入物価が上昇し始め、不景気の中で物価が上昇し始めます。為替の大きな流れはFRBでもコントロールが難しい。通貨高に対してはドルの過剰発行で対応出来ますが、通貨安に対抗して金利を上げる事は、現在のコロナ下では難しい。こうして、ドルはジリジリと安くなり、米国債金利は上昇を続けます(米国債の価格は下落)。
コロナバブルはどこかの時点で大崩壊を迎えますが、その時にFRBがリーマンショック後、或いはコロナ後の様な狂った様な金融緩和を実施すると、流石にドルの過剰発行を市場も意識せざるを得なくなります。
至上がドルに危機感を抱くと、ドルが大量発行されてもドルの需要が低下して、ドル安がさらに加速します。こうして、どこかの時点でドルや米国債の継続性に疑問が抱かれる時がやって来ます。
■ グレートリセットにドルや強いアメリカは不要 ■
ダボス会議は「資本主義は行き詰まり、グレートリセットが必要」と正式に発表しています。これが今後の世界のアジェンダです。
トランプの登場によるアメリカの分断も、コロナ禍による世界経済の破壊も市場のバブル化も、全てグレートリセットに向けた仕込みでしょう。
「資本主義をリセット」するのですから、その根本を支えるドル基軸体制は崩壊すると思われ、強いドルによって結束するアメリカ合衆国は、米国債の負債を切り離す為に崩壊するでしょう。
「グレートリセット」とは、資本主義の象徴たるアメリカ合衆国をパージする事から始まると私は妄想しています。
■ 資本主義の限界とは何か ■
実はダボス会議は何をして「資本主義の限界」なのか、具体的に説明をしていません。様々な些末な問題点を挙げて「資本主義は限界を迎えた」と言っているに過ぎません。
しかし、「資本主義の限界」は既に日本では30年前に起きています。「ゼロ金利」が資本主義の限界点なのです。
金利は経済の血圧の様なものですから金利がゼロになった時点で経済は緩慢に死を迎えます。金融緩和はカンフル剤として一時の延命をもたらしますが、無理な延命でさらに経済は傷つきます。
「ゼロ金利=資金需要の枯渇=経済の低迷」に他なりません。要は「資本主義による経済発展が限界に達したから金利がゼロになった」のです。アメリカにおいても80年代には既に限界に達していました。それを過剰な資金供給によってバブルを起こして先延ばしにしていただけ。けっかとしてITバブルはインターネットの発展を生み出しますが、デジタル技術の進歩は、AI化や自動化によって労働者を労働市場から排除する方向に働いています。結果、労働者は安い労働に追いやられ疲弊し、消費が消えて行く。
デジタル化は消費も抑制します。デスクトップパソコンやデジカメはスマホに集約され、そこで生産に従事する人々の仕事を奪い続けています。 物質的消費も格段に減少し、エネルギー消費も減少します。この流れはAI化によってさらに加速するでしょう。
こうして、資本主義は「資本効率」を追及し続ける事で、人々を労働市場から追い出し、消費という資本主義を支える原動力を自ら奪い、貧困を拡大する事で社会基盤を不安定にしています。そして、金融市場によって格差は社会を脅かす程に拡大してしまいました。
■ リセットの最速の方法がドルの崩壊 ■
拡大した貧富の差を解消する細則の方法が、「持てる者から全てを奪う」です。現在世界の多くの資産がドル資産です。これを取り合えず無価値にしてしまえば、世界は等しく貧しくなります。
確かに高齢者の資産も消えてしまいますし、庶民の資産も消えてしまいますが、平等だけは担保されます。そこから、1から制度設計した方が、現在の様な歪だらけのシステムを変更するより簡単です。
かつては戦争がリセットのスイッチでしたが、現在の倫理観では世界大戦の様な多くの人命の失われる方法は取れません。ですからドルとアメリカをパージして、戦争に匹敵する様なリセットを生み出します。
■ 勝手にリセットされる事が大事 ■
ドルとアメリカのリセットに当たり、ニクソンショックの様に一人の大統領がそれを決定する事は現在では考え難い。例えトランプであったとしても不可能でしょう。
そこで、リセットは「偶発的な事故」を装うはずです。「バブル崩壊によって壊れてしまった」という誰の責任も問えない状況が大事なのです。
トランプもコロナもその為の仕込みにしか過ぎません。トランプは分断のクサビ、コロナはバブルの最期の膨張を生み出しているのです。