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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

過剰な金融緩和は脆いダム・・・・・崩壊の威力を増すだけ

2016-01-14 03:55:00 | 時事/金融危機
 

■ 出口戦略は難しい ■

FRBはじっくりと時間を掛けて「市場と対話」し、昨年12月に金利を0.25%引き上げる事を決定しました。2015年の一年間で、市場は過剰なリスクを整理し、金利上昇リスクを十分に織り込んだはずでした。

ところが、昨年末から原油市場、ジャンク債市場が混乱し始め、そして今年に入ってからは株式市場が大混乱しています。

リーマンショック以降の金融緩和相場が完全に崩れ、各市場は「適正な価格」に向けて縮小してゆきますが、その過程でヘッジファンドなどが相場を揺さぶるので「オーバーシュート」が度々発生します。

通常の好景気によって生まれたリスクならば多少の下落はあったとしても市場機能を損なう様な「崩壊」に至る事は有りません。市場は適正価格を自分で見つける事が出来るからです。

しかし、極端な金融緩和によって生まれた「バブル」は、時として市場機能を崩壊させる「暴落」を発生させます。

バブルを発生させない為には極端な金融緩和の継続期間は出来るだけ短い方が好ましく、FRBが利上げをする理由も、市場のバブル化を防ぐ事にあります。しかし、ジム・ロジャースなどが昨年から指摘する様に、FRBの利上げは明らかに遅すぎます。

■ 意図的にバブルを膨らめたFRB? ■

今の状況は2006年当時のアメリカに似ているのかも知れません。FRBはITバブルの崩壊による不景気を克服する為に低金利政策に転じます。2003年6月から2004年5月までは1%という低い政策金利を維持します。それが住宅バブルを生み出します。大量に生成された住宅担保証券(MBS)は、様々な金融商品に加工されこちらでもバブルを生み出しました。

FRBは2004年6月に0.25%金利を引き上げ、その後は1か月毎に0.25%ずつ金利を引き上げます。しかし、アメリカは空前の好景気に湧いており、「借金しても投資すれば儲かる」状況がしばらく続きます。

この動きが大きく変わったのは2006年3月に日銀が量的緩和を解除した頃からです。円キャリートレードによって大量に供給されていた投資資金の金利が上昇したのです。この頃、FRBの金利は5%台でした。

リーマンショックの犯人捜しで「グリーンスパンとFRBがバブルを放置した」と言われますが、実は隠れた犯人は日銀だったのかも知れません。

■ リーマンショック前の水準に戻る事が実はバブルだった ■

リーマンショックによってMBSを始めとする債権市場や、それを担保していたCDS、さらにはそこから派生した様々な金融商品の市場が一気に破綻します。

FRB、日銀、ECBを始めとする中央銀行は狂った様な資金供給で市場の崩壊を支えました。これはリーマンショックによって決壊したダムを応急処置で補修する行為に似ています。

紙屑同然となった債権を中央銀行が買い入れ、市場に資金を供給する事で債権価格も徐々に元の水準に戻ってゆきました。一時は下落した原油価格も30ドルで底を打ち再び100ドル台に戻ります。株式市場も暴落した後に徐々に値を戻しダウなどは史上最高値に達しました。デリバティブの残高も早々にリーマンショック以前の水準を超えています。

この様に2012年頃を境に世界はリーマンショック以前の水準に徐々に戻って行きました。しかし・・・金融市場や原油を始めとする現物市場は、「リーマンショック以前の水準=バブル」でしたから、「現在の市場の水準=バブル」と考える事も出来ます。

アメリカの実体経済だけを見ると「まだまだリーマンショック前の好景気には程遠い」となるのですが、世界の市場は完全にバブル状態に達していたのです。

■ 見えないバブル ■

市場価格が回復してきた2013年頃から「市場水準はバブルなのか?」という問いはされていました。しかし、多くの投資家達はリーマンショック前と比較して、「過剰なレバレッジを掛けていない」とか、平成バブルと比較して「株価収益率は十分に低い」と主張していました。

しかし、バブルは見えない所で発生していました。それは新興国です。数年前にシンガポールやマレーシアに行った時には「完全にバブルの匂い」が漂っていました。日本でかつて感じた事のある懐かしい匂いです。

先進国の金融緩和で供給された資金は、金利につられて新興国で大きなバブルを生み出していたのです。その最たるものが中国です。中国はリーマンショック後の世界を一身に支えていましたが、相当無理をしています。しかし世界の資金はリターンを求めて中国投資に集中しました。金の湧き出る泉の様になった中国からチャイナマネーがアジアの新興国へと溢れ出て行きました。

FRBはアメリカの雇用水準を指標に出口の時期を探っていましたが、この間に新興国や産油国では完全にバブルが膨らんでいたのです。

日本などでも好景気に湧く新興国への投資が盛んになります。ブラジルのレアル建ての金融商品など相当怪しいけれど金利の良い商品が沢山売られ、老人に限らず若い人達も金利に釣られてこれらの商品を購入しています。

■ バブルの出資者は先進国だった ■

2013年6月にバーナンキがテーパリングを匂わせた事で新興国市場は動揺します。「バーナンキショック」です。

既にこの頃には新興国や資源国は十分にバブル状態だった訳です。ただ、テーパリング後もFRBは0.25%の金利を維持していましたから市場の動揺はしばらくすると落着きます。

この動きを見ても、新興国バブルを生み出していたのがアメリカを始めとする先進国の投資であった事が分かります。私達は「新興国の混乱」を対岸の火事の様に眺めていますが、燃えて無くなっているのは私達の投資マネーだったのです。

「いやいや、俺は新興国投資なんてやっていない」という方がほとんどでしょうが、日本のメガバンクは近年、新興国投資額を大幅に増やしています。私達の預金は銀行を通して新興国に投資されているのです。

キリンビールはブラジルのビール事業で失敗して巨額の損失を計上しています。大手商社も海外の資源開発で莫大な損失を被りつつあります。ソフトバンクは国内の通信事業で私達から巻き上げた資金をインドに投資しています。

さらには、日本国内からアメリカに投資された資金は、金利につられて新興国に再投資されています。

■ 投資先が増える事でリスクが拡散してしまった ■

かつてのバブルはある限られた市場で需給バランスが極端に崩れる事で発生しました。チューリップバブルや鉄観音茶のバブルなどが良い例でしょう。この様な現物投資で生まれるバブルは「生産量の拡大」や「ブームの終焉」によって崩壊します。

日本の土地バブルや株式バブルも似た様な構造を持っていました。土地は限られていますし、当時は株の持ち合いの時代だったので株の流通量が少なく、少しの資金流入でも株価は大きく跳ね上がりました。(株価収益率が20倍、40倍となったのはこの為で、これを基準に現在の株価を眺めると火傷します)

一方、現在は金融市場が発展したので極端なバブルは生まれ難い状況です。逆に言えば金利が低く抑えられている訳で、ジャンク債ですら金利が5%を切っていました。

これは良く言えば「リスクの分散」ですが、悪く言えば「リスクの拡散」です。

リーマンショックを生み出した原因となった「大数の原理」は、「多くの債権を一つにまとめる事でリスクを低減する」ものでしたがリーマンショックで見事に破綻します。パニック状態になった時のリスクを回避する事は不可能だったのです。

現在、似た様な投資はETF「Exchange Traded Funds」でしょう。日経平均株価など相場全体に連動する事で、個別銘柄の値動きのリスクを回避できると錯覚しがちなETFですが、市場全体が崩壊する時にはリスクを避ける事が出来ません。

この様に、現在の投資は広く、浅くリスクを拡散させる事で、個別リスクを回避している様に見えますが、実は至る所にリスクが拡散している状況とも言えます。

■ 一部の市場の極端な崩壊では無く、全ての市場がジリジリと縮小する ■

リーマンショック以降、リスクは広く浅く分散しましたが、この様な市場の崩壊は「暴落」の様な分かり易い物では無く、潮が引く様にダラダラと市場価格が下落する形を取ると思われます。

株式市場なども最近の混乱が治まれば、2歩進んで3歩下がる様な状況が進むのでは無いかと思います。こんな状態が夏頃まで続くのでは無いでしょうか。

ふと気付いた時には「利益を全部吐き出していた」・・・・そんな状況で一般人も「損切」を始めた時、市場は最後の崩壊を迎えるのだと思います。当然、金融資本家達の資金はとっくに引き上げられた後です。

■ 一般人の資金が市場に集まり始めた時には投資家は逃げる準備を始めている ■

先日、友人のアメリカ人と話ていたら彼はしきりに米株のETFを褒めていました。これは世界大恐慌の前に靴磨きの少年が株の話をした逸話に似ています。一般人が「この投資は儲かる」と話す時には、その市場は既に草刈場と化しているのです。

日本株の場合は少々特殊で、一般人があまりにも食付かないので、公的資金が身代わりになっています。私達の年金積立金(GPIF)や、ゆうちょ銀行の資金が、株やはジャンク債市場で餌食になりつつあります。

■ ソフトランディングは可能か? ■

リーマンショック後の過剰な金融緩和は脆いダムと言えるでしょう。

ちょろちょろと水が漏れだして次第に水位が下がれば「ソフトランディング」になります。

しかし、ダムの決壊というのは小さな亀裂から水が沁み出す事から始まり、それが徐々に拡大して崩壊するという形を取る事が多い。金融市場や株式市場の「パニック売り」がこれに相当します。

はたして、FRBはソフトランディングに成功するのか・・・・。私は既に2013年末には危険水位を超えてしまったと思うのですが・・・。


尤も陰謀論者の私はFRBは確信犯だと思っています。バブルは成長力の低下した経済を無理やり成長させる為の道具であり、今回の成長は新興国で達成さたのでしょう。

チャイナショックの裏に見え隠れする米中の思惑・・・陰謀論的勘ぐり

2016-01-09 05:44:00 | 時事/金融危機
 

■ 大発会から5日連続下落は初めて ■

年明けから世界の株式市場が大荒れです。東京市場は年頭の大発会から5日連続の下落となり、これは史上初めての事だとか。

FRBが利上げを決定したので、リスクマネーの動きに変化が出ている事は誰でも分かっているのですがい、それが具体的に「いつ」「どの様な」相場の変化となって現れるのか予想は難しいと思います。


■ 予測されたチャイナショック ■


今回の上海市場の暴落は凡そ想像出来たはずです。1月8日に上海市場の大量保有者の売買規制が解除される事は事前に知られていましたから、その前に売り抜けようとする人が大勢出る事は予想の範囲内です。

中国当局が1月4日に新しいサーキットブレーカーを導入したのも暴落を警戒したからですが・・・これが人々の恐怖心をさらに煽った可能性が有ります。サーキットブレーカーが発動したら売りたいのに売れなくなるのですから、人々は我さきにと売り注文を出します。結果的にサーキットブレーカーが何度も発動する事となりました。

■ 昨年8月に似た状況 ■

多くの人が指摘する様に年初以来の混乱は、昨年8月のチャイナショックに良く似ています。

中国は為替政策を変更しており、元をゆるやかに切り下げ初めていました。これは輸出振興によって低迷する経済を回復させる思惑があったと思われますが、為替が下がると分かっていれば投資家達が中国株を早めに手放そうとするのは当然です。これは海外の投資家に限った事では有りません。中国国内の富裕層は、あの手この手で資産を海外に持ち出していますが、元安はこの動きを加速させます。下がるであろう株を処分して、元が高いうちに海外に資産を持ち出そうとしたのでしょう。

■ 中国の米国債保有が気になる ■

8月のチャイナショックの際、中国は米国債保有額を減らしていると噂されましたが、実際には増やしていました。

私は今回のチャイナショックの裏に米中の阿吽の呼吸が潜んでいる様に思えてなりません。株式市場に圧力を掛けて資金を米国債に誘導しているのでは無いか・・・・?

中国は元安誘導で元売りドル買いした資金を米国債で運用しているのでは無いか???

■ 道連れになる日本市場 ■

日本市場は海外の投資家にとっては天国です。売り浴びせれば日銀や公的資金が買い支えてくれる。売り控えればジリジリと株価は回復する。

昨年、海外投資家は3兆円程日本株を売り越しています。この中にはサウジアラビアなどの産油国の年金基金などが含まれるでしょうから、本格的な売りは今年から始まると思われます。

海外の投資家が利益を最大化させる為には、日本市場を一気に売り崩すのは得策では有りません。何度も下落を仕掛けて、その都度公的資金やGPIFからチビチビとお金を揺すり取るのが一番です。そうして潮時を見て、今度は空売りも含めて一気に暴落を仕掛けます。

この局面に至るまでは、後1年程度は有るのでは無いでしょうか。ただ、株の上値は徐々に重くなります。昨年は2万円が一つの目標となっていましたが、外資が売り抜け始めると上値は徐々に19000円、18000円と下がって来ると思われます。

■ 流石に為替市場で日銀が介入したか? ■

昨日金曜日の前場は日本株も結構持ち直していました。午前中、為替市場で激しい動きが見られたので、急激に進行する円高を牽制して日銀が密かに円売りドル買いの介入をしていたかも知れません。

海外投資家の運用する日本株のアルゴリズム取引は為替相場に敏感ですから、日銀は日本株市場を買い支えるよりは、為替市場に介入する方が効果的です。将来値下がりするであろう日本株を抱え込むよりは、将来値上がりするであろうドル保有を増やす方が合理的で日銀のバランスシートも傷みません。


■ 円高?に振れるのか? ■


FRBの利上げで本来はドル高になる所ですが、逆に円高になっています。これは昨年辺りから指摘されていましたが、利上げを織り込んだ市場は十分に円安に振れていたので、利上げ実施で材料が出尽くし、円高に若干戻るという事らしい。

年末の日銀の「ショボイ追加緩和」がさらに拍車を掛けた感が有ります。「日銀は弾を撃ち尽くした」と見て、当面追加緩和による円安誘導は無いと見ているのでしょう。

尤も、これは日銀が追加緩和を発動するには良い条件にもなります。政府は輸入物価を押し上げる過度の円安を警戒していますから、円高傾向が強まれば日銀の追加緩和のハードルは下がります。

金融庁が地銀や信金に中長期国債を手放す様に相当圧力を掛けている様ですから、この動きと連動して日銀の追加緩和がもう一回発動すると私は見ています。

当然、円安に振れるので、炙り出された資金は米国債投資に向かうはずです。



・・・・まあ、そんなこんなで陰謀論者の私は「米国債」を中心に経済を眺めてしまう訳ですが、北朝鮮の水爆実験もそんな空気を読んだ、いつもながらの絶妙なタイミングだったと思います。


いかんいかん、新年早々に妄想が止まらない・・・。

経済のネオスタンダードと金融緩和バブルの崩壊

2016-01-04 06:57:00 | 時事/金融危機
 

■ 低成長という経済のネオスタンダード ■

日米経済成長率比較

世界経済のネタ帳 より

日銀の異次元緩和に代表される昨今の先進国を中心とした金融緩和が何故インフレという目的をなかなか達成出来ないのか?

原油安という大きな要因は有りますが、それ以上に大きな要因は・・・

先進国において成長率が低い状態が常態化している

戦後、先進国の経済は、景気の周期変動はありながらも、リーマンショック以前は5~0%の範囲で推移しています。日本は大バブルの崩壊以降は低迷しており2~マイナス%の範囲をいったり来たりしています。


http://blog.livedoor.jp/stakeid/archives/51798050.html より

バブル後の「失われた10年」の間はバブルの清算が低成長の原因でしたが、その後の10年は不良債権処理も有る程度進んでいたので、別の要因が経済の成長を妨げていたと考えられます。少子高齢化がその原因の最たるものとされていますが、これに疑問を挟む余地は無いでしょう。特に近年、若年労働者の減少は顕著で、一方で福祉の負担となる高齢者が増加し続けています。これで経済成長を達成する為には、余程のイノベーションが無い限り不可能でしょう。

欧州各国も成長率の低下に悩まされていますが、これはEU発足やユーロへの通貨統合、東西冷戦終結による低賃金の労働力と新たな需要というボーナス期間が終了して、ヨーロッパがかつての低成長社会に戻りつつある事の現れだと思われます。

一方、アメリカにおいても成長率は80念d内から低下傾向を見せています。これは製造業のい衰退に端を発していると思われますが、その後はITバブルや不動産バブルで成長率を一時的に回復した後にバブル崩壊で成長率が低下する事を繰り返しています。さらには、戦後ベビーブーマーのリタイアによる影響が将来的な成長の重石となっています。

この様に、戦後復興に始まった先進各国の経済成長は、近年低下傾向が顕著となっています。日銀の黒田総裁も「2%成長が先進各国のスタンダードになりつつある」と発言しています。

■ 量的緩和を安定させる低成長 ■

中央銀行は戦後一貫して「インフレ」を監視していました。成長率の高い経済ではインフレが発生し易く、インフレは物価上昇によって庶民の生活を困窮させ、さらには個人の資産の減少を招くからです。

しかし、近年、先進各国の中央銀行は「インフレ」を政策目標にしています。「インフレターゲット」の本来の意味は、インフレ率を一定の範囲内に納める事で、インフレ率の上限コントロールの意味合いの方が大きかったのですが、リーマンショック以降は、2%というインフレ率がターゲットになりつつあります。

リーマンショック後、各中央銀行が量的緩和を推進した本来の目的は金融市場に潤沢な資金を供給する事で、市場の崩壊を防ぐ事でしたが、それを可能にしたのは先進各国の成長率低下のスタンダード化でした。

■ 新たな経済モデルが必要になるのかも知れない ■

ケインズ以降のマクロ経済学は潜在成長率がプラスである事を前提として成り立っています。何等かの理由で低下した成長率をマクロ政策でプラスに出来ると主張していたのです。
ケインズは財政出動も必要と唱えましたが、それは一時的な低下を反転させるブースターの役割であって、財政出動の無制限の拡大を良しとした訳ではりません。

リフレ派の主張も、過剰な通貨供給が実質金利を下げる事で、経済成長のきっかけを作るという意味においてはケインズの財政出動と大差はありません。前提となるのは潜在成長率がプラスであるという点です。

しかし、先述した様に先進各国の潜在成長率自体が下がった場合、財政出動も量的緩和も根本的解決を提供出来ない事になります。この場合はイノベーションによる生産性の大幅な上昇か、或いは戦争などによる供給の極端な不足以外にはインフレ率を大幅に改善する事が不可能になります。

■ ネオスタンダードを意識し始めたリフレ派 ■

日銀の異次元緩和の結果を意識してか、リフレ派の重鎮達の発言も変化し始めています。

クルーグマンは最近「フォワードガイダンスは経済に極めて限定された参加者しかいない
場合にのみ機能する」「無責任であることを信頼できる形で約束すれば、 後は自動的に問題を解決できるという考え方は楽観的すぎる。そうなることはない」と発言した様です。

サマーズも「長期停滞論」を主張し始めており、先進国における成長率の低下は過剰な金融政策によるバブルでしか打破抱きないといった様な発言をし始めています。当然、バブルは弾けてその後の経済に深刻な影響を与えますが、バブルが新たなイノベーションの温床になる事はプラスであると主張しています。

■ 「金利の墓場」 ■

構造的要因で低成長が長期化する先進国で緩和的金融政策を続けた場合に何が起きるのか?その答えは日本や欧州の金利が示しています。欧州ではドイツ国債の金利がマイナスになっていますし、日本の短期国債金利もマイナスに足を突っ込む状況が発生しています。

本来、敢えて損をする投資という意味においてマイナス金利は有り得ない訳ですが、低成長下ので量的緩和は限定的とは言え、超安全資産におけるマイナス金利を実現しています。尤も日本国債の金利マイナス化に寄与しているのは日銀の大量買入れですが・・・。

この様に低成長下で金融緩和を継続すると、短期的、或いは中期的には金利がゼロに向かって低下して行きます。

資金は少しでも金利を求めますから、リスクの高い市場に過剰流動性が流れ込み、ハイリスク市場(例えばジャンク債市場)などでも金利低下が進行します。

金利差は経済の循環を生み出す原動力ですから、金利差の縮小はダイナミックな経済活動を阻害する要因となります。仮にあらゆる金利がゼロになるならば、経済活動は死滅します。これは「金利の墓場」と呼べるでしょう。

実際にあらゆる金利がゼロになる事などは有り得ませんが、リスクに見合わない金利低下が進行した場合、次第に投資に慎重になる人達が増えて行きます。こうして、過剰な金利低下が進行すると、知らず知らずの内に経済活動や投資行動が低下して行きます。これを私は勝手に「低金利の罠」と呼んでいます。


■ 金利低下が限界を超えると「悪い金利上昇」が始まる ■


「金利低下」は市場参加者がリスクを軽視する事で発生します。量的緩和による過剰な金利の低下は、大量に供給される低金利の資金によって借り換えがスムーズに行える事によって発生しています。

最近の市場の大きな変動が、中央銀行の金融政策の変更に左右されているのはこの為です。FRBは昨年12月に0.25%の利上げを発表していますが、これはリーマンショック以降の金融政策における最大の転換点です。

バーナンキによるテーパリングも大きな転換ではありましたが、FRBは0.25%という超低金利は継続していたので、実際の資金需給に大きな影響は有りませんでした。(日銀とECBの量的緩和という援護射撃も有りましたが)

しかし、利上げは確実に「借り換え金利」や「調達金利」に影響を与えるので、短期のスポット市場などから金利の上昇が始まり、次第に資金循環全体の流れを低下させて行きます。

この変化が最初に現れるのは新興国市場とジャンク債市場ですが、それぞれの市場に流入する資金が減る毎に、様々な市場で金利上昇は始まります。

本来、金利上昇は景気回復による資金需要の増加として好感されるものですが、金利が下限を超えて低下した後に始まる金利上昇は、資金循環の悪化と捉える事が出来非常に危険なサインです。これは「悪い金利上昇」と言えるでしょう。

■ 金利上昇を望みながら、米国債金利の上昇に怯えるアメリカ ■

FRBの利上げは「金利の正常化」としては正しい選択です。下がり過ぎた金利のデメリットをFRBは正しく理解しています。

一方で、ドルと米国債を巡る環境としては金利上昇は警戒すべき事となります。利上げを受けて米国債金利が上昇傾向に有りますが、これは低金利で購入した米国債が含み損を発生する事と同義であり、あまり金利上昇が急激に進むと米国債を手放す投資家が増え、コントロールが出来ない事態が発生する可能性も有ります。

ですから、アメリカはFRBが金利上昇を徐々に進めながら、同時に米国への資金還流が米国債に流れる仕組みを構築して行くでしょう。

それが何かと言えば・・・・「新興国バブルの崩壊」と「有事」では無いかと私は睨んでいます。米国債は流動性が高いので、とりあえず資金を置いておくには便利です。

■ 金利上昇自体に耐えられない日本 ■

日本は米国よりももっと悲惨で、異次元緩和に突入した時点で金利上昇という選択肢を捨てています。

異次元緩和には三つの目的が有ります。

1) 日本国債市場から資金を追い出してをれを米国債投資に向かわせること
2) 最早国民の金融資産で支えきれなくなった国債発行残高を財政ファイナンスで支える
3) 国債金利を低下させる事で、国債の利払いを圧縮する

この三つの目的を達成する為には、日本の金利は低いままでいる必要が有り、景気回復による金利上昇は日銀や財務省にとっては「タブー」となります。

10%への消費税増税率引き上げは景気判断で先延ばしされましたが、景気回復の糸目が見えなければ再延期も有ると私は見ています。要は、「増税するぞ」というアナウンス自体が景気抑制効果を持ち、金利抑圧に役立っているのです。

一方、「増税延期」は安倍政権にとっては分かり易い政治カードですから、これを切り札に安倍政権が衆参同時選挙に売って出る可能性はかなり高いと思われます。(目的は憲法改正を隠れ蓑にした構造改革の強行)

■ 見えないリスクを抱えてしまった世界 ■

この様に極端な金融緩和による「金利低下のリスク」は、今後徐々に顕在化してきますが、市場の過熱感が無いだけに、「顕著なバブル」が観測されないという特徴が有ります。

これはリーマンショックの原因となったMBSのリスク管理の基本である「大数の原理」のトリックに似ています。リスクが拡散する事で、リスクが見えなくなるのです。

例えば、1企業に株式投資するリスクは企業業績やその将来予測から見え易いのに対して、平均株価などにリンクするETFなどのリスクは相場が上昇している間は意識され難いものとなっています。

■ 低成長経済における金融緩和の継続はバブル崩壊で終わる ■

結局、経済のネオスタンダードとも言える先進国の低成長は、観えないバブルを生み出しており、資金供給の減少によってバブルは2年以内に崩壊します。

これはリーマンショックと基本的に何ら変わらない構造ですし、或いはそれ以前の数々のバブル崩壊とも変わり有りません。ただ、規模が次第に大きくなり、市場の限定的なものから、あらゆる市場に拡大してゆく事が最大の違いでしょう。

そして、バブル崩壊の引き金は、常に中央銀行が握っている事に私達は気付くべきなのです。

日本一早い初日の出を拝みに・・・MTBでGO!!

2016-01-02 18:13:00 | 自転車/マラソン
 




■ 日本一早い初日の出 ■

皆様、新年あけましたおめでとうございます。

本年も、「人力でGO」を楽しんでいただけると幸いです。

はてさて、すっかり「陰謀経済論ブログ」と化してしまった当ブログですが、本来の目的は人力(ランニングや自転車)で行った先々の思い出を記録した忘備録的でした。

ですから、毎年1月の最初の記事は初心を忘れない為に「人力初詣」と決まっています。ランニング50Kmで成田山に行ったり、はたまた自転車で箱根駅伝から逃げながら国道1号線の最高地点を目指したりして来ました。

ここ2年程は、1月2日の箱根駅伝から自転車で逃げるという遊びをしていましたが、参加される方が増えたので、大手町を7時15分に出発した昨年は、戸塚から先はひたすら先行する自転車を追い抜く事の繰り返しでした。その度に渋滞する車道側に出る訳で、これでは自動車の方にも申し訳無いと言う事で、今年からは箱根駅伝から逃げる遊びは止めにする事に。

それで色々考えた末に選んだのが、「日本一速い初日の出を人力で拝みに行く」という企画。

ところで、日本一早い初日の出が何処から昇るかご存じでしょうか?

日の出は東に行く程早く、同じ経度ならば南に行く程早い。離島も含めれば、南鳥島になるらしいのですが、ここは流石に人力では無理。離島を除くと、富士山頂が一番早いのですが、これも厳冬期はベテラン登山家で無ければ無理。

その次に早いのは本州の東端、犬吠埼ですが・・・・「おーと、待った」と言っている町が有ります。千葉県鴨川市の安房天津です。この町には千葉県で2番目に高い「清澄山」があります。標高はたったの377mですが、この高さが効いて犬吠埼よりも2分早い6時44分に初日の出が昇ります。


そこで今回の「人力初詣」は自転車で清澄山へGO!!



■ 初日の出を見る為には、夜中に走るしか無い・・・ ■

ところでここで問題が発生します。初日の出を見る為には夜中に自転車を走らせなければなりません。まあ、普通に酔っ払いのオヤジもやっている事なのでどうって事無いのですが、清澄山には「山道」を登って行く必要が有ります。外房に出て海沿いを走り、海側からヒルクライムすれば道幅も広く安全です。

しかし・・・初日の出には暴走族がセットになっています。少なくなったとは言え、海沿いを走れば彼らに遭遇する可能性は少なくありません。同じ車道の左側を走る者同士、仲良くしたいのですが(彼らは・・・蛇行して道幅全部使っていますが)、出来れば避けたい・・・。
海沿いのルートを避けるとなると、山を突っ切るしか有りません。養老渓谷から養老清澄ラインで裏側から清澄山に登るコースが最短です。但し、七里川温泉から先は完全に1車線の山道。道の片側は小櫃川の崖が続きます。

ブルベを走られる方には「当たり前田のクラッカー」ですが、夜間走行に慣れていない私にはチョット怖い。どうしようかと迷いましたが、昨年明るいLEDランプも買ったので、このルートにチャレンジします。

■ 寒さに耐えられるのか・・・ ■

実は問題はもう一つあります。私は手足が冷え易いのです。

自転車で走っている時は体は汗が出る程暖かになりますが、風に晒される指先と爪先は氷の様に冷たくなります。昨年から色々寒さ対策はしているのですが、どうしても指先だけはチギレそうな程冷たくなります。

そこで、万全の対策の為に新兵器を購入しました。


パールイズミ  プレミアム・ウィンドブレーク・グローブ


パールイズミ プレミアム・シューズカバー

冬用グローブとトゥーカバーは昨年新調したばかりですが、5℃を切る様な気温ではほとんど役に立ちませんでした。そこで、今年は0℃対応にしてみます。

カステリとか、クラフトとか輸入品にはデザインの良い物がありますが、実用性は日本のパールイズミには敵いません。シューズカバーは脱着が楽ですし、使い捨てカイロを入れるポケットも付いています。グローブはそれぞれの指が立体縫製になっていて、ハンドルを握り易い。これ、ロングライドでは重要で、硬いグローブは長時間の走行では指が攣ります。

■ 最大の難関は・・・美酒だった・・・ ■

万全の準備をして挑む「初日の出ライド」ですが、最大の難関が待ち構えています。それは「美酒」です。

毎年我が家は、子供の保育園時代の友人家族が集まってカウントダウン・パーティーをしています。国籍も色々な人達の集まりなので、珍しい食べ物や、美味しいワインがテーブルに並びます。

だいたい夕方6時頃から11時まで飲んで食べて、それから近くの神社に初詣に行くのが恒例となっていますが、鴨川まで余裕を持って出発する為には10時にはパーティーを抜けださなければなりません。美酒の誘惑にも打ち勝たなければなりません。

案の定、パーティーのメンバーは「夜走るなんて危ないよ」と心配気してくれます。さらに「飲んじゃおうよ、そうすれば自転車乗れないから」などと、悪魔の様に囁いて、私のグラスに大吟醸酒や、ワインを注ぎます。

結局、ちびちび飲んで、水も一緒にガブガブ飲んで酔わない様に気を付けながら、後ろ髪を引かれる思いでパーティーを後にしました。



■ 寒いじゃないか!! ■


本日は夜間走行ですし、初日の出見物の車が渋滞している場合はドブ板の上の走行も有りうるので、ブロックタイヤのマウンテンバイクで出動します。ドロップハンドルに魔改造したラレー君です。

アンダーアマーの極暖インナーの上から、X2Uのサブゼロウェアーを着込むと、家の中では汗が吹き出します。10時30分に浦安を出ましたが、気温は比較的暖かく8℃。ウエアーのジッパーを下げて走行する温度です。手足の防寒は完璧で、特に足はカイロも入っているのでコタツの中みたいにポカポカです。

11時50分にコンビニに飛び込んで、年越し蕎麦を食べます。レッドブルも投入して、眠気に備えます。

コンビニを出ると、気温がグウッと下がった様です。風向きが少し向い風になりました。千葉市街に入ると冷気の塊りが有るのか気温が一気に下がります。指先の感覚が無くなってきます。・・・おいおい、0℃対応のプレミアムじゃなかったのかよパールイズミさん・・・。

こんな事もあろうかと、昨年購入したネオプレーンの靴下を取り出しま、グローブの上から被せます。足裏側を切り取っているので、ブレーキ操作は問題有りませんが、冷気は侵入するので防寒は気休め程度ですが、無いよりは幾分マシです。

■ 暗さ対策は完璧 ■

夜間走行は暗くて危険なのでLEDライトは2個用意しています。



街灯の有る道路は、乾電池式の400cd(15ルーメン)タイプを使用します。CAT EYEの定番「HL-EL140」です。一般道では数メートル先の明るさが確保できれば問題は有りません。予備の乾電池を準備すれば、電池切れにも対応出来て安心です。

そして、山道用にはドイツのLEZYNE社の「POWEWR DRIVE XL]を使用します。



こちらは600ルーメンと40倍の明るさが有ります。但し充電式なので電池切れが心配です。七里川温泉から先の細くて真っ暗な山道まではなるべく温存です。ちなみに600ルーメンがどの程度明るいかネットから写真を拝借します。



ちょっとしたバイクのヘッドライト並ですが、点灯時間は1時間30分が限界。

上総牛久から養老清澄ラインに入り、街灯はカーブや交差点の点在するのみとなりますが、400cd(15lm)のCAT EYEで問題無く走行出来ます。但し、暗然の為に25Km/h以上は出しません。(ブロックタイヤだから出ないと言った方が正しいかも)

七里川温泉から、満を持してLEZYNEを点灯しますが、LOWモードでも十分に数10m先まで見通せます。真っ暗な山中を走行している恐怖感は一切有りません。むしろ明るすぎて、夜間走行のスリルが無さ過ぎ・・・。

■ 5時に清澄寺に到着 ■



ゆっくり安全に走りましたが、5時に清澄寺に到着しました。日の出までは1時間40分以上有ります。



空は未だ真っ暗。月と満天の星が輝いています。



元旦だというのに境内はほとんど人が居ません。テキヤのおじさん達が暇そうにしています。娘に聞いたら、鴨川の人達は元旦の0時に初詣に行くという習慣は無いそうです。夜が明けてから出かけるのだとか。



早々に本堂で初詣を済ませ、土産屋で熱燗をチビチビやりながら時間を潰します。

■ 雲が・・・ ■

「6時頃には展望台に行かないと場所が無くなるわよ」という土産屋のお姉さんのアドバイスで、早めに店を出ます。先ほどまでは閑散としていた境内は、展望台へ向かう人達が列を成しています。



清澄寺は日蓮上人が法華宗を開いた(立教開宗)聖地です。展望台には熱心なご信者さん達が、「南無妙法蓮華経」とお題目を唱える声がセミの合唱の様に響いています。

一般の方も多く、土産屋で一緒になった若者4人のグループは、私の実家の隣駅の東船橋から毎年車で来ているそうです。



6時30分を過ぎると空もだいぶ白んで来ます。しかし・・・・あの水平線辺りにモクモクとしているのは雲でしょうか・・・。



結局、「日本一早い6時44分の初日の出」は雲の中。太陽が現れたのは6時56分頃でした。雲の上に一際まばゆい光が現れた時には歓声が上がりました。



初日の出に赤く照らされた日蓮上人のありがたいお姿です。

太陽が完全に雲の上に出ると、集まった人達は一斉に帰り始めます。寒いのです・・・。
私は沢山着込んでいるので寒くはありませんが、眠くなる前にダウンヒルを済ませようと帰りを急ぎます。私達とすれ違いに、大勢の人達が続々と初詣にやってきています。




海まで350mを一気に下り、安房天津の町中に入ります。国道の交差点には・・・「ようこそ、初日の出日本一のまち」の文字が。

■ 波も無く穏やかな正月の海 ■




鴨川の海は波も無く穏やかでした。
娘は友人と海岸で初日の出を見た様ですが、山頂よりも4分程遅かった様です。それでも大勢の人達が前原海岸に集まっていたそうです。

??何故、元旦に娘が鴨川に居るかって?バイトです。
実は娘はアパートの近くの旅館でバイトしていますが、旅館の年末年始は忙しい。イケスのイセエビを網ですくう事も出来る様になった娘は、年末年始は貴重な人手となっているようで、お年玉に釣られ、帰省せずにバイトに明け暮れています・・・。

元旦早々、オヤジが来るのはウザイと言われそうですが、雑煮を用意して待っていてくれました。お礼に寿司をおごりました・・・。


「日本で一番早い初日の出」も拝めた、今年も元旦から縁起が良いようで。



皆様、今年も「人力でGO」を宜しくお願いいたします。