人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

マイナス金利の世界・・・徴税のパラダイムシフト

2016-03-08 06:51:00 | 時事/金融危機
 
■ マイナス金利の国債を誰が買うのだろう? ■

日本国債も金融資産ですから国債の購入者は利益を得る為に国債を買います。ところが、国債を購入して満期まで保有すると確実に損をするのがマイナス金利の国債。

実際には国債ディーラーはマイナス金利の国債でも、それをさらに高値で日銀に売却すれば利益が得られる訳で、金利の幅がマイナス方向に拡張された時点で現代の錬金術は再現無く繰り返す事が可能の様に思えます。

■ マイナス金利が進行すると経済は停滞する? ■

しかし、この循環を維持する為には、市中金利を徐々に下げて行く必要が有ります。「金利が下がるのに何が悪いんだ」とお思いかも知れませんが、それはお金を借りる側の理論であって、貸す側は極端な低金利ではリスクと金利のバランスが崩れるので、貸し出す事が出来なくなります。

同時に預金者は預金金利収入という当然の権利を奪われる事になり、これは観えない税金として作用します。

さらに問題は、高齢者を中心に金利が付かなければ物を買わなければ良い、預金金利がマイナスになるのなら、現金をタンス預金した方が損をしない・・・そういう思考が働き消費が低迷し、資金循環も滞る様になります。

■ 個人口座にマイナス金利を導入すると預金流出が起きる ■

ヨーロッパでもマイナス金利は個人の預金口座までには導入しておらず(手数料を含めるとマイナスですが)、これはマイナス金利を個人預金に導入すると銀行から資金流出が起きて、体力の無い銀行は最悪経営が破たんする可能性が有るからです。

■ 世界的に行われる高額紙幣廃止の動きはマイナス金利への布石か? ■

個人預金にまでマイナス金利を導入する場合は、少なくとも高額紙幣を廃止してタンス預金を防ぐ手立てが必要となります。ヨーロッパでは500ユーロ紙幣の廃止が決まり、アメリカでもサマーズが100ドル紙幣の廃止を低減し、かつ日本の1万円札の廃止も勧めています。理由はマネーロンダリングに使われるからだと言っていますが、これは多分、マイナス金利導入とデンイマネー化を見据えての布石かと思われます。

■ 現金にまでマイナス金利を課す事が出来る「電子マネー」 ■

電子マネーが導入されると、電子化された現金にマイナス金利を課す事も可能になります。これはほとんど課税と同様の結果を生みます。個人の資産の目減りと引き換えに、国債残高が減るのです。

■ バブルによって維持不可能となるマイナス金利 ■

こうなると、人々は減る前に使おうという意識が働きますが、資金は土地や株などの資産市場に集中するのでバブルを発生し易くなります。

日銀を始め中央銀行がここでバブル抑制の為に金利を引き上げると何が起きるのか・・・歴史的にはバブルが崩壊します。

同時に国債金利が市中金利に引きずられる形で上昇を始めるので、国債の需給関係にも大きな影響を与えます。国債の購入者は確実に損をするので、誰も国債の入札に参加出来なくなるのです。

■ マイナス金利導入の為には徹底した成長抑制が必要だろう ■

こう考えるとマイナス金利政策を持続する為には、成長力が低下した経済が好ましく、又、国内でバブルを抑制する為には、資金が国外流出する方が都合が良いと言う事になります。

現在の日本は超高齢化社会の進行によって成長力がゼロ以下になりますから、マイナス金利政策が導入し易く、さらに、日本よりも成長力の高い新興国にアメリカを経由して資金が移動して行きますから、日本国内のバブルはある程度抑制されるかも知れません。但し、この為には日本国内での資産投資よりも海外の金融商品の金利が高い必要が有りますが、極度な円安の進行が有れば為替差益によって海外投資は魅力が増します。

■ 消費税増税で景気に水を差しながら、債務を圧縮する財務省 ■

既に日本の財政は多少の景気上昇による税収の増加でどうにか出来る状況を過ぎています。ですから財務省と日銀は「異次元緩和」と言う財政ファイナンス政策に手を染めましたが、だんだんと市中の国債が減る事で、異次元緩和の継続が難しくなって来ました。

そもそも「異次元緩和」の目的は新発国債の金利低下にあった訳で、マイナス金利の導入によって国債需給によって決まっていた国債金利を、ある意味直接下げる事が出来る様になったのです。

但し、これを持続する為には市中金利のマイナスを維持する必要が有り、景気回復はこれに逆行します。

そこで、景気を回復させない為の政策が必要となる訳ですが、消費税増税はこの最たる物になります。時期を適当に選ぶ事で、景気の腰を折る事が出来るので、財務省は今回の消費税増税にそれ程こだわっていないはずです。世界経済に波乱の前兆が有り、日本の成長もマイナスに落ちつつある現状で消費税を増税する必要が無いからです。

■ マイナス金利というパラダイムシフト ■

今世界は「マイナス金利というパラダイムシフト」の渦中に在るのかも知れません。今までは税金という形で人々は国家に利益の一部を還元していましたが、これからは「現金が目減りする」という形で徴税され、国家はマイナス金利の国債を自由に発行出来るのかも知れません。

一見、無税国家の実現に見えるマイナス金利ですが、現在の抜け穴だらけの税制よりも確実に「見えない税金」を納める事になります。これこそ究極のフラットタックスと言えるのかも知れません。

それでも富裕層はあの手この手で現金以外で資産保全を図るでしょうから、結局は庶民の「見えない税負担」が最大化するだけだと思いますが。そして、マイナス金利は経済成長を阻害しますから、私達の生活はさらに苦しいものと成るでしょう。

まあ、マイナス金利が持続可能だとは、とても思えないのですが・・・。

次期大統領の手に握られたジョーカーは何?

2016-03-07 09:34:00 | 時事/金融危機
 

■ 今のうちにアメリカの大統領選挙に慣れておこう ■

いつに無くアメリカの大統領選挙の報道が日本国内でも盛んです。参政権もアメリカ同様に18歳からに変更される日本は、将来的にはアメリカ(或いは拡張アメリカ)と政治経済統合されるでしょうから、今のうちに大統領選挙にも慣れておく必要があります。ですから、皆さん、是非、アメリカ大統領選挙に注目しましょう。

■ バランス的観点から次は共和党だろう ■

バカな妄想から始まった本日のブログ、妄想ついでに次期大統領を予測してみましょう。

ずばり今回は共和党が勝利するでしょう。

民主党政権が二期8年続いたので次は共和党で無ければバランスが悪いというのが最大の理由。2大政党制のアメリカでは、オフィスでも親戚の間でも、民主党支持者と共和党支持者がほぼ勢力を二分しています。親戚同士の飲み会で政治の話になると、喧嘩が始まる事も珍しく無いお国柄。それだけに、そろそろ共和党が政権に帰り咲かないと共和党支持者の腹の虫が治まらないでしょう。

■ 与えられた役割を演じるエンタテナーで無ければならない ■

オバマ大統領は全くのダークホースから「チェンジ」だけを連呼して大統領になってしまいました。当時、リーマンショックの直後で、巨大銀行やAIGやGMを税金を投入して救うかどうかに注目が集まっていました。これらの政策を実行する為には、大統領はクリーンなイメージのオバマが適役でした。さらに、貧困の激化で暴動を起こし易いマイノリティーをおとなしくさせる為にも黒人大統領は役立ちます。選挙のエサは「国民皆保険制度」でした。ただしこれは後から保険会社が儲かり、中間層の負担が増えるシステムである事が判明しています。

現在では「史上最悪の大統領」とまで言われるオバマですが、彼の実績は実に大きい。それはアフガンとイラクから米軍を撤退させた事。オバマは実績も無くノーベル平和賞を受賞するなど、「平和」的なイメージを前面に打ち出した大統領でしたから、彼の最大の任務は中東からの兵力の撤退だったと思われます。

「弱腰」と揶揄される大統領だからこそ、中東からの戦力撤退を完遂出来たとも言えます。オバマは彼の役割を立派に果たています。

■ 次期大統領の役割 ■

次期大統領の最初の任務も、オバマ同様にバブル崩壊の後片づけから始まりそうです。当然、リフレ政策がバブルを助長したとの攻撃に晒されますが、共和党政権ならば「民主党政権の負の遺産」と片づける事が出来ます。

まあ、経済政策を大統領が陣頭指揮する事は無いと思われますが、国民に在る程度の負担を強い、銀行に恩赦を与える為には、大統領にはそれなりの指導力が求められると思われます。ヒラリーが銀行救済を主張しても説得力に欠けるでしょう。

では誰なら国民が納得するでしょうか?私は自身も何度も「倒産」という苦難を乗り越えて来たトランプが適役だと思います。

「オレは何度も失敗して来た。今回もまた資産を全部失っちまった!!でも、それを乗り越えて大統領になったんだ。国民の皆さん、アメリカは今、苦渋を味わいマットに倒れ落ちてちゃあいるが、絶対に再び立ち上がる。そしてベルトを手にするだろう!!」こんなセリフが一番似合うのはトランプです。(まあ、普通は言ないケド・・・)

そう、次なる大統領の役割は「アジテーター」なのです。

「経済危機だけど大丈夫だ、アメリカは復活する」
「中東危機だけど大丈夫だ、アメリカにはシェールオイルが有るから無関係だ」
「極東危機だけど大丈夫だ、日本やその他の国はアメリカが鍛えてやったんだ」

そう、彼は「強いアメリカ」と見せかけながら、超弱腰の政策を正々堂々と打ち出して来ると思われます。本来はアメリカ国民はそれを許さないハズですが、トランプに言われると、根拠の無い熱狂の内にそれを支持してしまいそうです。

■ ジョーカーを隠し持った道化 ■

アメリカの大統領選挙にはサプライズは付き物です。本命がスキャンダルで脱落したりする事も有ります。そして最終的にはオバマやカーターの様なシンデレラ・ボーイが登場します。こういう演出にアメリカ人は弱い。

今回の候補者の中でシンデレラ・ボーイのイメージに一番近いのはキューバ人移民の子であるマルコ・ルビオでしょう。年も若く候補者の中ではボーイと言うイメージも最も近い。ルビオは財政拡大を嫌うティパーティー勢力の支持も厚いので、本来彼が大統領に成る可能性が一番高い。経済危機が起きても、彼自身がマイノリティー出身である事がマイナノリティーの暴動を抑える効果も有るでしょう。

しかし、やはり彼には絶対的なオーラが欠けている様に感じます。苦境で国民を団結させ、熱狂させるには今一つカリスマ性が足りない。

その点、トランプは現時点で既にアメリカ人を熱狂させています。トランプ氏に直接会ってビジネスの話をしたGUCCIさんのブログによれば、彼は「冷静な金融マン」であったとの事ですが、現在のTVに写る彼の姿は道化、或いはアジテーターです。当然、「演技」であるのですが・・・。

何故トランプ氏が「道化」になったのか・・・度重なる倒産のショックからか・・。多分、彼は早い次期から大統領選を意識していたのでは無いか?「道化」を演じさせてまで、彼を大統領にするメリットは何処にあるのか・・・。

多分、道化の手には「ジョーカー」が握られているのでしょうが、それは今一つ見えて来ません・・。

尤もヒラリーの手にも「毒りんご」が握られていますから、アメリカ国民、或いは世界の人々はどの道「ハズレ」を引くことになるのでしょう。

■ 主役はいつも舞台には登場しない ■

「主役は最後に登場する」というお約束のアメリカ大統領選挙ですが、今回は舞台の幕が上がる前の道化が、そのまま大統領に成るなんてオチかも知れません。

ところで主役がトランプかと言えばNOでしょう。『ゴトーを待ちながら』さながらに、主役は幕の影に隠れて最後まで登場しないのかも知れません。昨今のアメリカ大統領選挙は、さながら不条理劇を見せられている思いがします。


・・・まあ、当らない事で有名な人力予測。これで「トランプはレースから外れた」のかも知れません・・・。


<追記>

実はトランプの手に握られているジョーカーは共和党候補となった後、大統領選挙本選で「大ポカ」をやらかして、ヒラリーが漁夫の利を得ると言うワイルドカード。世間もトランプなら仕方無いと飽きれ、民主党の長期政権に対して共和党も「トランプよりはマシだよな・・」と諦めが付く。

・・・そんな気がする・・・。

不安定化する市場・・・予測不能の動きを見せ始めた

2016-03-03 06:27:00 | 時事/金融危機
本日も雑感的メモ。


一昨日のアメリカ、昨日の日本と、低下し続けていた国債金利が急激に反発しています。まあ、これが危機に直結する訳では無いのですが、国債を始めとする債権金利も下がり過ぎれしまうと市場参加者にとっては金利上昇時のリスクが増大します。

世界経済的には日本国債の金利などは余り眼中に無く、米国債金利の動向に神経を尖らせています。FRBの利上げは当然米国債の金利も押しあげる物で、本来はこの金利を目当てに海外から資金が流入する為にドル高と適度な金利上昇が起こるはずでした。

ところが、危機回避として米国債が選好され米国債金利が低下すると同時に、何故かドル安に振れてしまったので、為替差損を勘案すると米国債保有のメリットが薄れてしまう結果となっています。

年初来のリスク回避の動きで米国債に集まっていた資金がドル安を嫌気して流出し出すと米国債金利がジリジリと上昇し始めます。一昨日の米国債金利の上昇をアナリスト達は「米経済指標が好転」と説明するでしょうが、アメリカの経済指標は決して良く歯ありません。むしろ市場が米国債金利が下がり過ぎていると判断し、調整時期に入りたかったのでしょう。決して景気が回復して株式が買われた訳では無いと思います。日本国債もこれに連動した形となります。

日銀のサプライズ・マイナス金利は本来、円安ドル高によって日本の国内資金を米国債に向かわせる政策だと思われますが、図らずもこれが裏目に出て、何故か円キャリートレードのリワインドが起こってしまいました。

FRBはある程度市場と対話しながら金融政策を遂行していますが、日銀は「サプライズ」に頼っている為に、市場は日銀に対して良い印象を持たなくなっています。さらにマイナス金利は金融機関の収益を圧迫する為に、日銀の金融機関の足並みが乱れると、日本国債需給にも影響を与え始めます。

ヒラリーや欧州勢の日銀の為替操作懸念発言は、額面通りに受け取れる物では在りません。各中央銀行は緊密に連携していますので、日銀のマイナス金利導入は事前に通告され、あるいはダボス会議との日程を考えるとFRBからの要望で実施されたと思うので、選挙対策としてヒラリーは表面的に日銀を批判していますが、実際には円安ドル高、さらには米国債買いをもたらす日銀のマイナス金利を実力で阻止する事は無いと思います。

・・・だだ、市場が中央銀行の思惑通りに動かなくなっている事が今後どう影響して来るのか・・・。ジム・ロジャースや元ピムコのビル・グロスらが何やら不穏な発言をし始めています。

金融緩和やマイナス金利は財政負担を軽減しますが、一方で市場が過剰なリスクテイクをする事で、中長期的には経済を不安定化させます。マイナス金利にまで追いやられた各中銀は次の危機発生に際しては、打つ手が有るのか考えると不安です。

テスラは陰謀論者のヒーロー・・・アニメ『Dimension W』

2016-03-01 07:57:00 | アニメ
 

本日の記事中の動画は直ぐに消されちゅうので、お早めにお召し上がり下さい。




■ エジソンの永遠のライバル、ニコラ・テスラ ■

『昭和元禄落語心中』と『僕だけが居ない街』という2強によって影が薄い今季アニメ。それでも地味に面白い作品が有ります。それは『Dimension W』

XYZの次元座標の次に発見された次元軸W。このW時限から無限ノエネルギーを取り出す事が出来るのがテスラーコイルという装置。ここまで読んだだけで「陰謀論者」ならば狂喜乱舞するような内容。

アメリカ人の科学者ニコラ・テスラ(1856年7月10日 - 1943年1月7日)は交流電流、ラジオやラジコン(無線トランスミッター)、蛍光灯などを発明し、磁束密度の端員「テスラ」にその名を残します。



上の写真はテスラが発明した高電圧を発生するテスラコイルによる放電実験です。テスラコイルは1次コイルと2次コイルの共振を利用して高電圧を作り出す装置です。一般的にトランスで昇圧を行う場合、巻き数の少ない1次コイルと巻き数の多い2次コイルの巻き数の比の分だけ昇圧が可能です。ですから高圧を得ようとした場合、2次コイルの巻き数を多くすれば良いのですが、それに従って効率が低下するという欠点を持っていまいした。テスラの作り出したコイルは2次側コイルの漏れ磁束が1次コイルの磁束と共振して効率良くエネルギーを取り出すという物で、共振周波数を多数有する事でさらに効率が高まります。

現在でも蛍光灯や高圧放電灯の点灯回路に応用されていますが、発表当時は上の写真の様に「見せ物」的に注目を集めた様です。(当時の科学は多少なりとも見世物的要素を含んでいまた)

テスラは同時代のエジソンと並ぶ発明家でしたが、彼はどうやらエジソンを相当ライバル視していた様です。

■ 陰謀論のヒーローとしてのテスラ ■

陰謀論者の間ではテスラさんはヒーローとされていますが、それは彼が「無限エネルギー」を発明したと信じられているから。130年前にテスラー発明したとされる「テスラ発電機」は1KWの入力で10Kwの出力が得られるという熱力学の法則を無視したキテレツな発明。

テスラ発電機を外部の力で始動すると、共振現象によって発電機自身がパワーを生み出し続け、外部の力を遮断しても発電機が回り続けるとされています。これが事実だとすれば、テスラー発電機は無から有を生み出している訳で、まさに「無限エネルギー」を実現している事になります。実際には発電機を回転させるエネルギーは発電機の外側から供給されているはずで、多分、地球の磁界がこれを供給していると私は妄想しています。

さて、テスラさんが何故陰謀論者のヒーローになったかと言えば、彼が「無限機関(フリーエネルギー)」を発明した事よりも、その研究を何物かに阻止された事に原因しています。テスラーの研究室は襲撃され、その資料はFBIに押収されたと言われていますが、その背後には銅の利権を独占していたJPモルガンが居たと囁かれる。或いは石油利権のロックフェラーが居たとか・・・。テスラの発電機が実用化されれば地球上どこでも石油を使わずに電力を取り出す事が出来る訳で、石油も送電線用の銅も需要が大幅に減少するからだとされています。

実はテスラコイルに似たフリーエネルギーに関する研究を成功させた科学者や発明家はその後にも登場しますが、皆研究を断念しています。様々な妨害にあったと陰謀論者は信じて疑いません。


■ 良質な「空想科学絵巻」としての『Dimension W』 ■

『Dimension W』は「テスラコイル」と呼ばれる装置が発明された世界のお話。第4の次元Wから無限のエネルギーを取り出す「テスラコイル」の実用によって地球はエネルギー問題から解放されています。そのエネルギーを統括するのがNTE(ニューテスラエナジー社)。しかし、彼らはテスラコイルの闇の一面を隠匿しています。

NTEが供給するコイルはトレース機能が付いていて違法の使い方が制限されています。その為に不正コイルが闇市場で流通していますが、不正コイルは不安定で事故を起こし易く危険です。不正コイルを回収する職業が「回収屋」ですが、マブチ・キョーマはその一人。大のコイル嫌いで、トヨタ2000GTを未だに乗り回す彼ですが、実は凄腕の回収屋です。そんな彼がロボットのミラと関わる事で物語は動きだします。

NTEが秘匿しているのは、テスラコイルが次元Wの限定されたエネルギーしか取り出していない事。この制限が緩い違法コイルは時として過剰のエネルギーを取り出してしまい事故を起こす可能性が有る。さらには「ナンバーズ」と呼ばれる開発段階に配布された実験用コイルはエネルギーだけでは無く、「事象の可能性」まで取り出す事が出来る様です。要は「変えたい過去を変える事が出来る」可能性を秘めている。このナンバーズを巡り、過去にキズを持つ者達が暗躍します。多分、キョーマも過去を引きずる一人・・。

■ 良質な「科学ミステリー」としての『Dimension W』 ■

SFとしこの作品はとても魅力的ですが、さらには「ミステリー」としても良く出来ています。

『怪人二十面相』を彷彿とさせる第二話「ルーサー」と第三話「ナンバーズを追え」
ちょっとノスタルジックな幽霊ミステリーの第四話「八十神湖に潜む謎」と第五話「亡者の可能性」

そしてアンドレー・タルコフスキーの『ストーカー』さながらの第8話「虚無に落ちた島」

物語は未だ半ばですが、テスラコイルを軸に様々な表現を見せてくれるこの作品。良質なミステリーとしても大いに楽しめます。

■ 良質な「美少女アニメ」としての『Dimesion W』 ■

とまあ、SF作品として、ミステリー作品としての魅力に溢れた『Dimennson W』ですが、その最大の魅力はキョーマの相棒を務めるロボットのミラちゃんがムチャクチャ可愛い事

人間以上の感情表現をするこのロボット、実はテスラーコイルの発明者百合崎博士と行動を共にしていました。失踪した博士に何やら使命を託されていると思われるミラちゃん。キョマーの悲しい過去とも何やら関係が有りそうで目が離せません。

実はこういう話方をする「純真ぶりっ子キャラ」を私は「大嫌い」なのですが、ミラちゃんは別。ロボットという本人が「性」を意識していないという「設定」故に「純真」がイヤミにならないのでしょうか・・・。はたまた、彼女の悲しすぎる過去を色々と想像してしまう故でしょうか・・・。

もう、その小さなおしりからチョロンと生えたプラグコードも、感情にリンクしてパタパタする頭のアンテナ(耳?)も、チョーOKっす。

この耳、どこかで見た事あるぞと思ったら、シリーズ構成を務める菅正太郎が『輪廻のラグランジェ』でマドカにくっつけていましたね。あのウサギの耳も可愛かった。

■ 「動く絵=アニメ」の真骨頂としての『Dimension W』 ■


色々書いて来ましたが、『Dimenson W』が一級の作品と問われたら・・・答えは「否」です。二流の作品です。

しかしOPの映像だけは「超一級」です。消されてしまわないうちに見てみましょう。



OPの監督は「世界の梅津」こと梅津 泰臣(うめず やすおみ)。最近では『ガリレイドナ』が記憶に新しいのですが、彼の真骨頂はエロアニメの『カイト』で世界中のファンは異論は無いでしょう。18禁作品だけに紹介するのは、少々はばかられる所もありますが・・。かつての日活ロマンポルノ同様にエロを入れておけば、どんな表現も有る程度許される18禁アニメ。日本のアニメが現在の様にチヤホヤされていなかった1998年の作品ですが、才能にあふれたクリエーター達は18禁の分野で、その才能を如何なく発揮していました。

この作品はアクション作品として実写も含めた日本の映像作品の中で5本の指に入るでしょう。殺し屋に拾われた少年と少女の過酷な運命を描くシリアスな内容ですが、とにかくアクションシーンの素晴らしさは特筆に値します。





欧米でも熱烈なファンが大勢いるこの作品、アメリカとメキシコ合作で『A KITE』として実写映画化されていますが、まあ大した事無いでしょう。アニメの動きを実写でやろうとして成功したのは『マトリックス』くらいしか思い当りません。

さて、『Dimension W』のOPですが、何故か冒頭キョーマが踊っています。何故?何故?と首を傾げたくもなりますが、この動きの凄い事。

人間の動きをアニメでリアルに再現する方法にロトスコープという手法が有ります。実写を先取りして、それをアニメに描き起こすのです。昔の『白雪姫』などのディズニー・アニメがこの手法を用いています。ところが、ロトスコープはリアルになればなる程不自然さが拭えません。CGに感じる気持ち悪さと同質のものですが、2次元である絵が三次元的に動く事に脳は違和感を覚えるのでしょう。

『悪の華』ではその気持ち悪さが良い方に働いていたロトスコープですが『信長協奏曲』では最悪の効果を生み出していました。最近のロトスコープで最も成功しているのが『すべてがFになる』のOPでしょう。ネットの動画が見当たらないので探してみて下さい。単純な線画と自由な形態変化を採用する事で、ロトスコープ特有の気持ち悪さを回避する一方で、実写でしか再現し得ない人間の動きの特徴を「絵」として抽出する事に成功した奇跡的な作品です。きっと実験アニメの分野では昔から試みられているとは思いますが、センスに脱帽です。

一方、梅津の監督するOPのキョーマの動きは実にアニメ的にカッコいい。一種の「ケレンミ」の有る動きで歌舞伎などにも通じますが、「静止」の瞬間がしっかり取られているので動きにメリハリが有ります。そして「力が抜ける瞬間」が有ります。これ、武術の達人の動きですよね。人の頭の中で動きを作り出して、それを絵として定着される作業にはセンスが要求されます。優れたアニメーターにだけ許された資質なのです。

さて、人物の動きだけでなく、カーチェースのシーンも見ものです。これは「視点」のサーカスの様な表現ですが、カメラは寄ったり引いたり、ターンしながら動きを動的に負い続けます。カーチェースが好きなハリウッドのクリエーター達がメニターに噛り付いている様が目に浮かびます。

興味深いのが『Dimension W』のED。こちらは完全に『鉄腕バーディー DECORD』へのオマージュが溢れていますね。こちらは動く事への執着が感じられます。作画なんて多少崩れたって・・・。



■ 今季アニメはOP/EDが秀逸 ■

実は今期アニメはOP、EDに注目すべき作品が多い。



駄菓子屋トリビア・アニメの『だがしかし』のエンディング。ただ走っているだけですが、アニメ的な魅力に溢れています。動きのデフォルメですが、手の振りや足の跳ね上げ方でどうやって躍動化を生むかのお手本の様。動きでキャラクターの性格を表現する事だって出来るんです。歌の『カロリー・クイーン』も素晴らしい。こういうキャッチーに振り切れた歌、良いです。



こちらは『昭和元禄落語心中』のOP。「椎名林檎のコピーじゃん!!」って思ったら作詞作曲はご本人でした。歌は林原めぐみ・・懐かしい。センスさえあれば、絵なんてたいして動かさなくても良いという好例。EDも絵なんて動きませんが・・・全然OK。
ところで、この作品、NHKの朝の連ドラにしてくれないかなあ・・・きっと大ヒット間違い無し!!



こちらは既存曲が作品世界に見事にマッチした稀有な例。曲はアジアン・カンフー・ジェネレーションの「Re:Re:」。彼らの2004年のアルバム「ソルファ」の中の名曲ですね。この歌詞、本当に作品の内容にベストマッチしてますね。ちなみに上の映像はMAD(偽物)。本物は削除されてますが、MADも素晴らしい出来ですね。



こちらは異色の石膏アニメ、『石膏ボーイズ』のED。EDだけでは無く、本編の中もで主人公は石膏像。写真では無くて絵で描き起こしている所がミソ。さらに登場人物の絵の表現手法がバラバラで、「鷹の爪」に匹敵する挑戦的なギャグアニメ。『おそ松さん』よりもニューウェーブな笑いです。・・・・思い出しただけで涙が・・・「ジョルジョってる?」「節子のヤーヘー」・・・ウププ・・・。

ちなみに作詞は『ゆり熊嵐』の『あの森で待てる』で一躍有名になったボンジュール鈴木