このいいかげんさには感心させられる。2劇の芝居にはテーマとか、メッセージとか、そんな大層なものはない。ただ状況を楽しむばかりだ。もちろん観客が、ではなく、自分たちが、である。彼らはこう考える。自分たちが楽しかったなら、きっと観客もまた同じように楽しいだろう、と。なんてノーテンキな人たちだろうか。
この芝居を通して描きたかったことなんかない。ただ、鍋をしたかった。劇場で鍋を囲んだ芝居を作る。そ . . . 本文を読む
作、演出の寺田夢酔さんはこれを「幕末アクションホラー活劇」と呼ぶ。だが、よろずやである。ただのエンタメを目指したわけではない。どちらかというと、これは『オーマイリョーマ』の流れを汲む作品だ。まぁ、時代背景が同じだから、というのがその理由で、ジャンルとしてはコメディーとアクションと、まるで違うではないか、と言われそうだが、寺田さんの目指すものは共通している。単なるアクションではなく、どちらも幕末を . . . 本文を読む
読み終えてなんだか嫌な気分にさせられます。救いようのない。小説としては実に上手いとは思うけど、自分から進んでわざわざこんな気分にさせられるのは嫌です。(と、いきなり、こんなタッチで描きだしてしまった!なんだかわからんが丁寧体で書いてしまったのだ。)
この後味の悪さは、生きていくことの痛みなのか。3人だけの家族。姉と、妹。そして、弟。彼らは両親が死んで居なくなった家で、今もずっと暮らしている。 . . . 本文を読む
これは少し前の横山さんの作品を、若手で再演した作品だ。そうそうこんな感じだった。こういう作品が多くなってきて、僕は売込隊ビームの芝居を見なくなった。
だが、ここ数本の横山作品はすばらしい。彼は『エダニク』以降発表した芝居はきっとそれ以前の作品とはまるで違うものになっているのではないか。僕が見ていない空白の期間は想像するしかないのだが、この作品を見て、なんとなくその空白の想像がつく気がした。( . . . 本文を読む
追試の課題はどれだけスピード感のある作品に仕立てなおすことが可能か。その1点に尽きる。だが、それはなかなか簡単なことではない。どうしても饒舌になるし、説明だけではなく情報量自体が多いこの作品を、必要最小限のエピソードだけにして、再編集するには時間がない。初演から7ヵ月である。前回は7月の頭で高校なら1学期末試験の最中だったが、今回はちょうど3年生の学期末試験の時期である。主人公のイチコ(一瀬尚代 . . . 本文を読む
なんだかいやらしそうなタイトルの本だね、と職員室の隣の席の先生から言われる。机の上にこの本を置いたまま授業に行っていた。なんだか、顔が赤くなる。そんな本ではないのですけど、と言い訳するのも変なので、へへへ、とやり過ごす。この必要以上に赤い本は、そのなんだか意味深なタイトルも含めて、要らぬ想像まで逞しくさせる。
一瞬で読み終えてしまえる。あっけないくらいに、早かった。朝の電車から、読み始めて、 . . . 本文を読む
とても単純な映画だけど、その素朴さがしっかり伝わってきて、気持ちのいい映画だ。台湾の数ある少数民族のひとつの、とある村を訪れて、彼らの歌を採集してくるひとりの青年と、その村の小学校の先生の物語である。(舞台となる場所は台中のブヌン族の村らしい)
ストーリーの骨格はチェン・カイコーのデビュー作『黄色い大地』と似ているけど、こちらはとても甘くて、緩いタッチの青春映画になっていて、どちらかというと . . . 本文を読む