追試の課題はどれだけスピード感のある作品に仕立てなおすことが可能か。その1点に尽きる。だが、それはなかなか簡単なことではない。どうしても饒舌になるし、説明だけではなく情報量自体が多いこの作品を、必要最小限のエピソードだけにして、再編集するには時間がない。初演から7ヵ月である。前回は7月の頭で高校なら1学期末試験の最中だったが、今回はちょうど3年生の学期末試験の時期である。主人公のイチコ(一瀬尚代)は無事このテストを乗り越え卒業ができるのか。
この再演に於いて、台本をいじることや、装置を含めて、様々な仕掛けを変更することは不可能だ。それに、そんなことをする必要はない。この作品は今のbaghdad cafe にとっての到達点であり、今回はあの作品をもう一度再現することが望めれている。その状況の中で、やれることは、前回の課題だったテンポを上げることと、終盤、加速度をつけていく部分で、どれだけ感情のうねりを表現できるか、という演出上のほんのちょっとした手直しだけでよい。だが、それが困難を極めた。完璧に仕上がった作品を修正するのは思う以上に大変なことなのだ。
当然最初はランニングタイムを縮めるために、早いテンポでセリフをしゃべらせ、尺を詰める稽古を試みたようだ。だが、そんなことをしても上手くいかないことはすぐにわかる。野田秀樹を目指すわけではない。では、何が必要なのか。作、演出の泉寛介さんはもう一度、初心に戻る。伝えたいことをきちんと伝えることだ。
結果的に上演時間は初演より長くなった。(2時間15分)だが、見終えた印象は、初演よりも短い。これで正解だったのだ。複雑に絡み合うお話を走り抜けていくためには、セリフを早く言うとか、場面転換のスピードをさらに詰めようとするとか、そんなことが必要だったのではない。観客の抱く体感速度を上げることだったのだ。ここで必要なことは、ヒロインのイマイチコが、自分の命を犠牲にしても時を超えていこうとする強い意志を持って、時空を走り抜けていくということだ。これは彼女の内面の問題なのだ。めまぐるしく移り変わっていく幾つもの場面、状況は、彼女を囲む世界の一端にすぎない。それらのドラマと彼女は関わり合うように見えて、実は関わることはない。通り過ぎていく風景でしかないはずだ。ここで必要なことは、それらのドラマとすれ違って行くことで、加速度を増していく彼女の先生への想いである。何としても先生の命を助けたいと願うという、自分の目の前にある問題に彼女が邁進していく姿を無理なく見せていくことにある。それはとても単純なことだが、その単純さを見せきらないことには何も伝わらない。だから、演出は一瀬さんしか、見ないでよい。彼女の走る速さについていけたなら、芝居は成功する。周囲の役者たちなんかほっておいてよい。達者な彼らは勝手にやってくれるからだ。それくらいのアンサンブルは初演で実践済みだ。
2時間以内の芝居を目標にした本作は、2時間15分というベストタイムを記録した。たいへんよくできました。合格です。
この再演に於いて、台本をいじることや、装置を含めて、様々な仕掛けを変更することは不可能だ。それに、そんなことをする必要はない。この作品は今のbaghdad cafe にとっての到達点であり、今回はあの作品をもう一度再現することが望めれている。その状況の中で、やれることは、前回の課題だったテンポを上げることと、終盤、加速度をつけていく部分で、どれだけ感情のうねりを表現できるか、という演出上のほんのちょっとした手直しだけでよい。だが、それが困難を極めた。完璧に仕上がった作品を修正するのは思う以上に大変なことなのだ。
当然最初はランニングタイムを縮めるために、早いテンポでセリフをしゃべらせ、尺を詰める稽古を試みたようだ。だが、そんなことをしても上手くいかないことはすぐにわかる。野田秀樹を目指すわけではない。では、何が必要なのか。作、演出の泉寛介さんはもう一度、初心に戻る。伝えたいことをきちんと伝えることだ。
結果的に上演時間は初演より長くなった。(2時間15分)だが、見終えた印象は、初演よりも短い。これで正解だったのだ。複雑に絡み合うお話を走り抜けていくためには、セリフを早く言うとか、場面転換のスピードをさらに詰めようとするとか、そんなことが必要だったのではない。観客の抱く体感速度を上げることだったのだ。ここで必要なことは、ヒロインのイマイチコが、自分の命を犠牲にしても時を超えていこうとする強い意志を持って、時空を走り抜けていくということだ。これは彼女の内面の問題なのだ。めまぐるしく移り変わっていく幾つもの場面、状況は、彼女を囲む世界の一端にすぎない。それらのドラマと彼女は関わり合うように見えて、実は関わることはない。通り過ぎていく風景でしかないはずだ。ここで必要なことは、それらのドラマとすれ違って行くことで、加速度を増していく彼女の先生への想いである。何としても先生の命を助けたいと願うという、自分の目の前にある問題に彼女が邁進していく姿を無理なく見せていくことにある。それはとても単純なことだが、その単純さを見せきらないことには何も伝わらない。だから、演出は一瀬さんしか、見ないでよい。彼女の走る速さについていけたなら、芝居は成功する。周囲の役者たちなんかほっておいてよい。達者な彼らは勝手にやってくれるからだ。それくらいのアンサンブルは初演で実践済みだ。
2時間以内の芝居を目標にした本作は、2時間15分というベストタイムを記録した。たいへんよくできました。合格です。