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映画・演劇のレビュー

売込隊ビーム(若手公演)『マーチ!』

2010-01-31 10:03:44 | 演劇
 これは少し前の横山さんの作品を、若手で再演した作品だ。そうそうこんな感じだった。こういう作品が多くなってきて、僕は売込隊ビームの芝居を見なくなった。

 だが、ここ数本の横山作品はすばらしい。彼は『エダニク』以降発表した芝居はきっとそれ以前の作品とはまるで違うものになっているのではないか。僕が見ていない空白の期間は想像するしかないのだが、この作品を見て、なんとなくその空白の想像がつく気がした。(まぁ、そんなもの勝手な憶測の域を出ないだろうが)少なくとも昨年の2本と、この作品はまるで違う。それだけは事実だ。

 このラストはフライヤーにあるような衝撃ではない。あまりに中途半端で、そういう意味では衝撃かもしれない。あれで終わりだとか、あれがオチだ、とか言われたら僕なら怒るね。これではあまりに単純過ぎる。ショートコントなら、許せる範囲だが、長編作品のオチではない。現地の警察官である、デギー(コメディーユニット磯川家の菊池祐太)の中にある真面目さと狂気が表現しきれていないから、あれでは唐突過ぎるのだ。この国の政治状況も含めて、きちんとした描き込みがないままコメディータッチで笑わせながら、このシチュエーションから生じる当たり障りのないドラマをお気軽に見せるだけでは芝居にはならない。なのに、いきなりあのラストである。落差が大きすぎる。そこが作者の狙いなのかも、それないが、描き込み不足は否めない。

 写真を撮ったために、警察に連行され、閉じ込められた3人。彼らを解放してもらうために幽閉された建物の前で待つ3人。前半、後半で隔てられこの2つの場所での同じ時間のエピソードが描かれる。アイデアは横山さんが好きなパターンだ。理不尽な出来事に翻弄される安易な旅行者たちを恐怖にたたき込むくらいのことをしてもよかったのではないか。最初は笑っていたのに、だんだん笑いがひきってきて気がつけば震えている、というのがこの場合の定石だと思うのだが。

 まぁ、いつものキャストによってこれを見せられたなら、それなりには楽しめる作品になったことだろう。だから、初演である本公演はウエルメイドのコメディーだったはずだ。だが今回の若い役者たちでは、この芝居を担いきれていない。残念である。

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