とても簡単な話なのだが、それをとても丁寧に見せていく。その結果映画は間延びするか、と思ったのに、反対で、極度の緊張感を伴い、最後まで息を詰めてスクリーンを見守ることとなる。一瞬たりともスクリーンから目が離せない。これはもう見事と言うしかない。
たった一度、剣の手合わせをしただけ。だが、その後ずっとその男を想い続けて、彼を見守り続ける。罠に嵌められて自害した彼のために敵討ちまでする。自分には許 . . . 本文を読む
キャスリン・ビグローの『ハートブルー』が大好きだった。あんなにもおもしろいアクション映画はなかなかない。ドキドキしながら楽しめて、ドラマとしての奥行きがあるから見た後には余韻がちゃんと残る。単純なアクション映画ではないのだ。FBI捜査官キアヌ・リーブスがパトリック・スゥエイジ率いる銀行強盗団グループの潜入捜査をするうちに、彼らの自由さに染まっていき、その魅力の虜になる。スリルを楽しむための犯罪。 . . . 本文を読む
モノクロームの感触のある重くて暗い映画だ。ビデオ撮りの硬質な画像。荒涼とした湖の上をトランクの中に密入国者を入れたままゆっくりと車を走らせていく。真っ暗なトランクの中で不安と恐怖に怯えながら彼らは何を考えて過ごすのか。
カナダとアメリカの国境の町。冬になると湖は凍りつき、その上を通って密入国してくる人たち。彼らの援助をする2人の女。ギャンブル狂の夫がお金を持ち失踪する。15歳と5歳の子供を抱 . . . 本文を読む
「人は、哀しいときに泣くんじゃない。泣くときは、自分が憐れに感じたときだ。感情の嵐の中で、無力を感じ自分の存在が脅かされたときに、泣かずにはいられなくなるから、泣けるのだ。」
陸の死を知った君枝は、涙の海で溺れそうになる。でも、きちんと浮き輪をもらって、その海をプカプカ浮かんで、漂流していく。このラストシーンはちょっとした衝撃だ。リアルの地平から遠く離れたままで、この小説は幕を閉じる。
誰 . . . 本文を読む