こういうなんでもない映画が簡単に撮られる、そんな時代がきたのだなぁ、と改めて思う。ビデオが広まった結果、こんなフットワークの軽い作品が撮られるようになったのだ。これは今までなら、到底考えられなかったことだ。お金がかかるフイルムで撮られる劇場用映画で、この企画はない。だが、ハンディーカメラで自由自在に劇場用映画が撮られる現代ならこんなのもありになるのである。だが、1歩間違えたら目も当てられない代物 . . . 本文を読む
ただいま おかえりなさい。このなんでもないタイトルがなんだかこのお話を見事に象徴している。ふつうならこれは会話なのだが、タイトルとなった時、これはまるで一人語りのように閉じているのがおもしろい。この作品にぴったりのタイトルだ。この小説とはもちろん言えないような小話の数々には、まるでオチがない。なのに、これらのお話は、この世界ではちゃんと成立する。納得のいく話になるのだ。
これって、夢(夜に見 . . . 本文を読む
今から30年前、この芝居はとても新鮮で、斬新だったはずだ。90年くらいまでならこの作品のような芝居は、小劇場の中で、圧倒的に力を持っていた。しかし、今、こういうタイプの芝居は作られない。力で押し切るのではなく、自閉していくことで、内在化する自己の世界を手がかりにして作品が作られるようになったからだ。こんなふうに、外の世界と全身で向き合うような芝居が無くなってから久しい。
あんなにも新鮮だった . . . 本文を読む
とても心に沁みる映画だ。おばあちゃんの75歳の誕生日。みんなが集まってくる。一族が勢揃いしてパリ郊外の彼女の家に集まる。広大な庭と美しい自然の中にある夏の別荘。いつもなら静かなこの場所がたくさんの訪問者でにぎわう。子供たちがはしゃぐ。広々とした庭先のテーブルで、大人たちは杯を重ねる。みんながおばあちゃんにプレゼントを贈る。
パーティーが終わると、一瞬でみんなが去っていく。忙しい時間をやりくり . . . 本文を読む
荘子の『胡蝶の夢』を題材にして6人の自殺志願者たちを描く、というアイデア自身は悪くはないが、描き方が曖昧でつまらない。これでは何が描きたいのかよくわからないからだ。
こういう話だ。生きることに疲れた男女が、ネットの自殺サイトで出会い、集団自殺を試みるが、彼らはいずれも興味本位で集まっただけで、実は本気で死のうと思っていた人は、ほとんどいない。本気で死のうと思っていた者と、そうでない者との諍い . . . 本文を読む