10篇の短編からなる。いずれも恋の終わりを描く心象風景。ほんのささいな出来事が恋の終焉を自覚させることとなる。なんだか胸に痛い話ばかりだ。さりげない、というかそっけないようなタイトルが並ぶ。『幽霊』『手紙』『奥さん』という感じだ。『自伝』『犬』『金』と続く。
そっけないがそのそっけなさが魅力的でもある。向かいの家の男との1度の過ちの記憶。恋人の手紙。マンションの奥さんたちとの情事。自伝を書い . . . 本文を読む
翻訳家の柴田さんのエッセイ集なのだが、全体が一編の小説のようなスタイルになっているのがおもしろい。。生まれ育った六郷を舞台にしたお話からスタートしてロンドン、ニューヨーク、オレゴン、そして再び東京に。旅のエッセイだが、まるで柴田さんの人生そのものがそこには投影される。どこにいても自分は自分だ、と思う。そう思うのは、たぶん柴田さん自身なのだが、まるで自分が(こちらの自分は僕自身のことね)そこにいて . . . 本文を読む
高橋伴明監督が『禅』の前に撮った作品。劇場公開時(2008年)見落としたまま今日に到っていた。とても気になっていた映画だ。なぜ、今、こんな話を映画化するのだろうか。その意図が知りたいと思った。
商業的には絶対に成立しない映画だ。しかも制作費はかなりかかる。リスクは大きく得るものは少ない。にもかかわらずこれを映画化したのはなぜか。当然興行的には惨敗した。誰からも顧みられることもないまま消えてい . . . 本文を読む