原作を読んだとき、こいつはおもしろい、と手を叩いた。絶対映画にしたら面白い、と思った。三浦しをんによる「まほろシリーズ」第3作である。前2作はオムニバス・スタイルだったが、今回は長編だ。そういう意味でもこれは映画向けの素材なのだ、と思った。だから、映画『まほろ駅前多田便利軒』のスタッフ、キャストが再結集して挑む、と聞いたとき、傑作の誕生に心ときめいた。
だが、僕が見た映画は、小説の残滓しか見当た . . . 本文を読む
ここに描かれる世界には興味はないけど、こういうお話には心惹かれる。人間の愚かさや、執着の無意味さを描きながら、それでも執着する姿から目が離せない。お金というのがわかりやすい。彼らがそこまで執着するものは、莫大なお金を動かすという虚構のリアルだ。現ナマではない。5億が10億、100億へと、どんどん簡単に膨れ上がる。もちろん、それは自分たちが仕掛けた。
バブル時代を舞台にした『生誕祭』の10年後、再 . . . 本文を読む
『ルリエール』の作家の新作。シリーズの第2作ということだが、前作『花咲家の人々』は読んでいない。というか、彼女の作品はこれが2作目。たまたま新刊(文庫オリジナル)として並んでいたから、手に取った。軽い本(内容も、重量も)を読みたかったから読んだ。
こういうファンタジーは実は苦手だ。前回『ルリエール』を読んだ時も、かなりつらいなぁ、と思った。でも、ギリギリでリアルの地平のお話としても読めたからOK . . . 本文を読む
こんなにも面白い映画はここしばらく見たことがない。ここではありえないことが、ふつうにどんどん起こる。観客である僕たちはただただそれを見つめるだけ。あんぐりと口をあけて、ありえねぇ、と呟く。115分間、100歳のこの老人の、嘘のような大冒険の世界に連れていかれる。ジェットコースターに乗ったような興奮。大胆不敵で意外性の連続技。人生は不思議な輝きに満ち溢れている。見る前は、まるで期待してなかっただけに . . . 本文を読む
昨年のリーディング公演を見て、この作品の面白さの虜になっただけに、今回の本公演をとても楽しみにしていた。しかも、上演は2プロによる競演である。1時間の作品を30分の休憩をはさんで連続上演する。なんとも大胆な公演形態だ。同じ台本で、キャストだけ入れ替えた作品を連続して見るなんてことの意味はどこにあるのか。見る前はそこが少し心配だった。
だが、実はそれこそが今回の作品のねらいでもあるのだ。同時上演さ . . . 本文を読む
石原燃の新作書き下ろし戯曲。Pカンパニーとしてはこの作品をシリーズ第1弾として、この後も「シリーズ罪と罰」として様々な作品を展開していくようだ。重い問題を真正面から取り上げて、さまざまな局面からアプローチをかける。その姿勢はすばらしい。
東京の劇団による大阪公演というのは珍しいことではないけど、こういう真面目な作品を見ると、それだけでなんだか姿勢を正さなくてはならない、という気分になる。そこで襟 . . . 本文を読む