原宏一らしい作品で安心してあっという間に読める。3話からなる連作長篇。間借り鮨屋の雅代さんが全国を旅して(3話だから3カ所だけど)みんなを幸せにするというよくあるパターン。新しい発見はない。『佳代のキッチン』シリーズの新バージョンで、相変わらずの定番展開。
ただ読んでいるとほっこりする。それだけでも十分だと思う。定番は悪いことではない。だけど、物足りない。ここには怖さがないからだ。最後はほっとし . . . 本文を読む
先日BSで吉永小百合の『若い人』を放映していた。少しと思い見始めたらなんとなく、最後まで見てしまった。1962年の作品である。もちろんリアルタイムでは見ていないけど、高校生のとき、まずTVで見ている。その後、昔あった名画座(東梅田日活)でも見ているはずだ。10代のころ、60年代の日活青春映画が大好きで必死で追いかけた。朝のTVの「あなたの映画劇場」やお昼のSUNテレビの名画劇場とかで。当時はあと1 . . . 本文を読む
劇団往来は3年連続でこの時期、シェイクスピアに挑んだ。しかも毎回違うアプローチをする。最初は『ヴェニスの商人』。そこではいつもの往来のタッチをベースにして見せる。コロナ禍を考慮してか、なんと上演時間90分を目安にしたスピード感のある芝居に仕立てた。短くわかりやすく楽しむシェイクスピアを目指す。次は4大悲劇のひとつである『マクベス』に挑戦。若手を大胆に起用してモノトーンの作品に仕上げた。そして今回は . . . 本文を読む
なんとこれは600ページに及ぶ大作だ。そんな分厚い本を手にして読み始めたのだが、なかなか読み進められない。難しいとかつまらないとかいうわけではない。それどころか面白いからどんどん先が気になり、読み進めてしまいそうな小説なのだ。なのに、しばらく読むと疲れてしまう。それは内容があまりにきつくてハードだからだ。
お話は2020年春から始まる。コロナが本格的になる時期だ。主人公の花は40歳になる。総菜屋 . . . 本文を読む
角田光代『ゆうべの食卓』がとてもよかったので、もう一冊、食べることを題材にしてそれを前面に押し出した小説にチャレンジ。ということで、この本を読むことに。最近「食」を扱う小説がやけに多い。この作者石井颯良の本は初めて読む。安易な小説ならいやだな、と心配しながら、少しドキドキして読み始めたのだが、なかなか面白いし、これはアタリだった。
独自のテンポで堂々と描く。面白い設定だが、そのストーリーだけに引 . . . 本文を読む