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映画・演劇のレビュー

『ダラス・バイヤーズ・クラブ』

2014-03-06 20:20:21 | 映画
 マシュー・マコノヒーがアカデミー賞主演男優賞をこの作品で受賞した。こういう形から入る芝居での受賞はどうだかなぁ、と普通なら思うところだが、今回の彼には悲壮感がない。21キロの減量にもかかわらず、飄々としてこの役を演じているように見えた。だから、これは努力賞ではなく、ちゃんとその芝居ゆえの受賞だ。おめでとう!

 ある日突然、エイズだと言われ、しかもあと30日の命だと告知された男の逆襲が描かれる。そんなバカな、と思う。受け入れるわけにはいかない。医者なんか信じない。自分で治療法を考え、認可されていないさまざまな薬を試して、生き延びるための努力をする。そして、その成果を同じように苦しんでいる人たちに還元して、商売とする。ポイントはこの最後の部分ね。これがちゃんと『商売』になるのだ。違法行為だが、それでも、法を守っていると死んでしまうのだ。なりふり構わずアプローチする。死んでも悔いはない。どうせ、ほっといても死ぬ。同じように死ぬのなら、最大限の挑戦をして可能性を信じたい。ということで、彼は生き延びるだけではなく、ビジネスでも成功する。

 このやけくそのようなお話がおもしろい。確かにその通りではないか。だが、医者も司法もそんな彼を目の敵にする。当り前である。そんな勝手なことをされては世の中がぐちゃぐちゃになるからだ。映画は終盤、法や権力との戦いへと移行する。でも、マシューは、あのひょろひょうろで、風が吹けば飛ばされそうな体で、乗り切っていく。この映画の魅力はその1点に尽きる。そういう意味で、彼の主演男優賞は当然の結果なのだ。


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