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映画・演劇のレビュー

『晴れ、ときどきリリー』

2014-03-06 20:03:25 | 映画
 周囲になじめない子供なんてどこにでもいる。うまく溶け込めない。僕もそうだった。他者との付き合いが苦手で、人見知りする。初めての人とどう接したらいいのかよくわからないから、緊張する。でも、なんとかして、努力して生きてきた。自分だけ、周囲から「はみられた」なら厭だから、そうならないように、協調性がある「ふり」をする。それでなんとか凌いできた。小学生や中学生のころはほんとうにきつかった。高校生になってようやく、なんとか折り合いがつくようになったのではないか、と思う。(今は、こんな感じで、自由気ままだが、それでもときどき、子供のころを思い出すと切なくなる)

 学校で働くようになったのは、そんな子供を守りたいからだ。なんて言うと、重松清になってしまう。僕はそこまで強くはない。この仕事をしているのは、高校時代が楽しかったからだ。だから、今も本当は、ずっと高校生のまま、毎日過ごしている。(一応立場は違うけど)

 リリーは周囲と戦う。だから、傷つく。痛ましい。でも、彼女には姉がいる。彼女が理解してくれるし、守ってくれる。でも、この映画はそんな優しいお話ではない。本当の主人公はリリーではなく、姉のほうなのだ。彼女が壊れていく姿が描かれる。リリーを通して、自分を見失っていく。終盤の展開は受け入れられないけど、あれを彼女が壊れた、と理解すると、なんとか納得がいく。優しい夫に守られて生きてきた。でも、彼女は夫を裏切り、彼を棄てる。そういうことだったのか、と気づく。彼女は彼を愛してなんかいなかった。ただ、守って欲しかっただけなのだ。それを愛だと思っていた。でも、リリーを守っているうちに、守るって何なのか、疑問に思うことになる。彼女は、怖かった。でも、そんな怖さは誰もが抱くもので、彼女だけの特権ではない。自分の弱さと向き合いなんとかして生きていくのが人間なのだ。

 リリーのせいで、彼女は自由を手に入れる。そんな、ラストなのか? 映画の結末にはがっかりした。




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