虐待の話である。中2の少年に義理の父親が暴行を加える。だが、少年は抵抗しない。14歳だから、もう充分戦えるだけの力はあるのだが、圧倒的な暴力の前でおとなしくそれを受け入れる。
優ちゃんはいきなりキレる。隼太はそれを受け入れる。それは腕力における彼の弱さではない。精神的な弱さだ。だが、それなら暴力をふるう父である優ちゃんのほうが集太以上に弱い。彼は弱いから暴行を加えてしまう。そんな自分が嫌で仕方ない。だが、スイッチが入ってしまうと自分を止められない。
そんな2人が力を合わせて『虐待』という事実と向き合い、解決を目指す。ふつうこういう話ってありえない。この小説が描くことは、虐待の解決方策を提示することにはならない。彼らのパターンはモデルケースにはならないからだ。ただし、彼らが自分たちの現実と向き合い方法を模索し、少しずつ解決に近づけていく努力を重なる過程は、読んでいて胸に沁みる。優し過ぎることは、弱さの裏返しで、それが無意識に暴力の衝動につながる。なんだか怖い。
瀬尾まいこは従来の文体とは違う。こんなにも優しい話なのに、主人公たちとかなり距離を取る。最後まで何にも気付かない母親が痛ましい。精一杯やっているのに、彼女は息子のことにまで、頭が回らない。そんな母親を息子は優しく見守る。たったひとりで幼いころから夜を過ごしてきた少年は中2になっても暗くして眠ることが出来ない。母親の再婚で初めてだれかと一緒に夜を過ごすことが出来た。優ちゃんは「キレない」限りは、優しいから、だから彼を失いたくはない。なんて痛ましい話だろうか。
少しずつ成長していく血の繋がらない父子の物語はすべてが上手く行きはじめた時、破局を迎える。それまでの努力は偽りの解決でしかない、とでも言われた気分で、ショックを受ける。だが、敢えてこういうラストを用意した。その真意は伝わる。
優ちゃんはいきなりキレる。隼太はそれを受け入れる。それは腕力における彼の弱さではない。精神的な弱さだ。だが、それなら暴力をふるう父である優ちゃんのほうが集太以上に弱い。彼は弱いから暴行を加えてしまう。そんな自分が嫌で仕方ない。だが、スイッチが入ってしまうと自分を止められない。
そんな2人が力を合わせて『虐待』という事実と向き合い、解決を目指す。ふつうこういう話ってありえない。この小説が描くことは、虐待の解決方策を提示することにはならない。彼らのパターンはモデルケースにはならないからだ。ただし、彼らが自分たちの現実と向き合い方法を模索し、少しずつ解決に近づけていく努力を重なる過程は、読んでいて胸に沁みる。優し過ぎることは、弱さの裏返しで、それが無意識に暴力の衝動につながる。なんだか怖い。
瀬尾まいこは従来の文体とは違う。こんなにも優しい話なのに、主人公たちとかなり距離を取る。最後まで何にも気付かない母親が痛ましい。精一杯やっているのに、彼女は息子のことにまで、頭が回らない。そんな母親を息子は優しく見守る。たったひとりで幼いころから夜を過ごしてきた少年は中2になっても暗くして眠ることが出来ない。母親の再婚で初めてだれかと一緒に夜を過ごすことが出来た。優ちゃんは「キレない」限りは、優しいから、だから彼を失いたくはない。なんて痛ましい話だろうか。
少しずつ成長していく血の繋がらない父子の物語はすべてが上手く行きはじめた時、破局を迎える。それまでの努力は偽りの解決でしかない、とでも言われた気分で、ショックを受ける。だが、敢えてこういうラストを用意した。その真意は伝わる。