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映画・演劇のレビュー

はらだみずき『帰宅部ボーイズ』

2012-10-12 20:27:16 | その他
 何がダメなのか、と考えながら、最初はこれがあまりに懐古趣味で感傷的であるとか、話が暗いとか、いろんな言い訳を考えたけど、要するに僕は「中学生もの」が嫌いなのだ、というあまりに当たり前のことに気づく。というか、中学生が嫌いなのである。

 中学という時間は、あまり思い出したくはない。理不尽なことばかりが横行した。そんな時代をこの小説は取り上げている。しかも、とてもリアルに。これはその鬱屈した中学の3年間を描く小説である。毎日がつまらなかった。自由がなく、おどおどして、ただ身を潜めているだけの日々。楽しいことなんか何もない。自分の思い出の中にある中学生とこの小説の描く世界があまりに似ていて、いやな気分になる。僕は主人公の2人と行動を共にするテツガクと似ていた。もちろんあんなに金持ちではないし、頭もよくはなかったけど、あの身の置き場のない気分はとてもよく分かる。鬱屈していた。いつ爆発するか、わからない不安。そんな中、なんとなく生きている。

 70年代後半の空気がとてもよく出ている。ドン・コスカネリーの『ボーイズ・ボーイズ』なんていう、今では誰も顧みない映画が重要なポジションを担うのも、あまりにマニアックすぎて、笑えた。あのなんでもない青春映画が、あの頃の一部の中高生にとっては、こんな意味を持っていたのか、と改めて感じさせられた。23歳のとんでもなく若い監督の出現(スピルバーグでも27歳でデビューだ!)、それがあんなにもみずみずしい青春映画だったこと、ちょっとこましゃくれた中学生にとって、それは衝撃だったのだ。きっと。

 ただ、この小説はあの時代が何だったのかを伝えない。ただ、そんな時代があった、という事実しか描かない。大人になった主人公が今、あの頃の自分の年齢に達しようとしている自分の息子と初めて向き合い、彼もまた、たいへんなのだろうなぁ、と思う。それだけが描かれる。それ以上は描かない。たとえわが子であろうとも何かが出来るわけではないのだ。人は自分の人生を歩む。周りがどうこうできる問題ではないからだ。冷たいようだが仕方ない。

 この小説を読んでいてそんな冷徹な姿勢が鼻についた。でも、それは確かな事実で、そう言われるほうがすっきりする。へんに、君の気持ちはよくわかるよ、なんて言われたら殴ってやりたくなる。おまえにわかるほど簡単なものじゃないんだよ、と思う。でも、本当はわかってもらいたいくせに、素直じゃないんだ。

 主人公の3人は、やがて、別々の道を歩き、その後はもう一切接点はない。それが中学時代なのだろう。いつまでも関係が切れない高校時代とは違う。僕が高校生は好きだが、中学生が嫌いな理由は、その中途半端さゆえである。そんなことを思い出させる、そんな小説だった。悪い小説ではないが、とても後味が悪い。



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