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映画・演劇のレビュー

凪良ゆう『星を編む』

2024-04-19 05:13:00 | その他

タイトル作は、三浦しをん『舟を編む』の姉妹編のような作品。こちらは漫画と小説のふたりの編集者(編集長)が主人公になる。往復書簡のタッチで交互のメールからエピソードが始まる。作者を守るのが編集者の使命と自負しながらも大切にしていた作家を死なせてしまった過去がある。そのリベンジをふたりでする話。作家は前作『汝、星のごとく』の主人公だった櫂だ。これはあの小説の続編であり、スピンオフである。3話からなる連作長編。

 最初の作品『春に翔ぶ』は高校教師と訳ありの女生徒の話で、あまりにベタな設定でいささか鼻白むが、自分を取り戻す話自体は嫌いではない。もちろんこれは前作の前日譚。
 
最後の『波を渡る』は『汝、星のごとく』の完全な続き。生き残っている暁海と北原先生のその後を描く。もちろん3つの作品すべてがあの小説の続編だが、ここまでの二作品には主人公だったふたりは直接は登場しなかったから、これが本格的な続編になる。

これもふたりの話を交互に描くスタイルになっている。後日譚だが、なんと北原先生の70代までが描かれる。(ちなみに暁海は38歳から58歳まで)

ふたりのその後を描きながら,みんなのその後も綴られていく。櫂の小説は映画化される。もちろんそれはあの『汝、星のごとく』である。お話は壮大な大河ドラマの体を成す。ある人生の物語。そこにはどこにでもいる普通の人たちの苦難の歴史が綴られる。

まさかこんな作品になるなんて思いもしなかった。これは渾身の、同時に肩の力を抜いた大傑作である。壮絶でドラマチックだった前作とは違うのが素晴らしい。でももちろんこれもかなりドラマチックだけど。

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