『キングダム』に続いて『ゴールデンカムイ』さらには今回の『陰陽師』ととどまるところも知らぬ勢いで攻めまくる山崎賢人の最新作は佐藤嗣麻子が監督・脚本を手がけたアクション映画だ。だけど今までの2作とはタッチが違う。静かなアクション・エンタテインメントである。女性監督らしいと言えば、なんだか女性差別と返されそうな時代だが、マッチョな映画ではなく、優しい世界を展開する。内面世界での戦いという意味では『マトリックス』を想起させるが、お話自体はシンプルだ。佐藤監督久しぶりの映画だ。『アンフェア ジ・エンド』以来ではないか。
彼女の『K-20 怪人二十面相・伝』はとてもバランスのいい活劇で大好きだった。世界観の造形も素晴らしかった。明智小五郎を演じた仲村トオルがいい感じで金城武とのコンビもよかった。今回もバディ映画である。安倍晴明の山崎と相棒となる博雅役の染谷将太とのコンビネーションもバッチリ。娯楽活劇であり、青春映画にもなっている。今回も背景となる世界、平安時代の造形が素晴らしい。リアルではなく平安ファンタジー映画である。
若き日の晴明というより、これは学業を極めるひとりの青年の話。彼は自分の道を邁進する。出世ではなく純粋に陰陽道を極める。出世には全く興味はなくマイペース。
上から目線だが、何故かそれが偉そうではなく、とても自然で爽やか。これは山崎賢人だから可能なキャラクター造形だろう。
殺人事件と姫の謎の失踪を追って、魔界に入るクライマックスは少し単調で長い。結末もあれでは弱い。だけど映画が描きたかったことは派手な立ち回りではない。アクションとミステリーを施しているけど、ひとりの青年の自分探しの旅を描くことが目的である。これは滝田洋二郎監督、野村萬斎主演の『陰陽師』とは違うアプローチをした映画だった。なかなかよかった。