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映画・演劇のレビュー

『王妃の紋章』

2008-04-20 22:11:54 | 映画
 チャン・イーモウはどうしてこんな映画を作ってしまったのだろうか。『HERO 英雄』『LOVERS』に続く武侠映画シリーズ第3弾という位置付けが出来ないわけではない。でも、ちょっとこれは毛色は違うようだが。

 壮大な宮廷スペクタクルを目指したのだろうとも思う。しかし、話があまりにつまらなさ過ぎる。そのつまらなさは、要するに王家の内紛をただそれだけで自己完結するように作ってしまったことによる。陰謀とか策略とかいうものが、王と王妃、3人の息子たちだけで終わってしまうので、そんな単純なことなら家族5人で話し合いでも、夫婦喧嘩でも勝手にしてくれたらいい。なのにそんなことに何万人もの人間を巻き込んで、無意味な殺し合いとして見せてしまう。

 前半の王宮でのこせこせとした話にも閉口したが、それが禁紫城を埋め尽くす兵士達の死屍累々の無意味な描写に繫がっていく時、それはスペクタクルというよりもあきれ果てた無意味でしかなく、全く感情移入できない。役者たちのシェイクスピアばりの大仰な芝居にも呆れるし、コン・リー、チョウ・ユンファという2大スターを共演させてこんな芝居しかさせないなんて、なんだかもったいない。

 金にものを言わせたキンキラキンの超大作は、その雑なCGも含めてなんだかチープ感すら漂わせる。画像の処理が汚いし、なんだかがっかりさせられた。

 かって反権力の象徴であったチャン・イーモウが今なぜか国家権力の側に付き、この映画の主人公の王のように中国映画界の重鎮として立ちはだかっている、なんて思うのは穿ちすぎか。スピルバーグが降板した北京五輪のオープニングを引き受け国家の威信を賭けたショウを見せるのも、なんだかかっての彼のイメージにそぐわない。

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