これが最後の仕事になる、という一文をスタート地点として書かれた短編集。24人の作家による。彼らがどんな仕事を取り上げて小説にするか、たった6ページ程度という制約をどう生かすか、興味の焦点はそこにある、わけではない。
実はこのタイトルに惹かれたのだ。僕も今、これが最後の仕事になる、と思いながら、この1年を送っているから、タイトルにドキッとした。今の自分にピッタリの本ではないか、と思い、そこに(大袈裟だが)密かな運命さえ感じたから手にとって読むことにしたのだ。
24人もいるけど、知らない人が大多数でそこにも驚く。一穂ミチや宮内祐介は期待して読んだけど、残念だがあまり面白くはなかった。こういう企画物にはあまり当たりはない。これもその轍を踏むのか。と、思った。一度は読むのをやめようと思うが、いつものパターンでやめれなかった。
知らない作家が多いのはほとんどがミステリー作家だからだった。僕はミステリーは基本読まない。だけど、この本を読んで面白いと思った作品は初読のそんなミステリー作家さんのものばかりだった。期待したいつもの作家はいずれもガッカリだったのに。まぁ世の中そんなもの。
僕と同じ職業を取り上げた『教壇にて』(河村拓哉)はハッとさせられる。わかるわぁ、と思った。苦笑する。ベストは終盤に配置された4作品か。短編のキレのよさが際立つ。高田崇史の歌人小野篁を主人公にした『天岩戸の真実』には感嘆した。続く金子玲介『まだ間に合うよ』は泣けるし。ラスト2作はミステリー作家らしい佳作。お題からの発想とミステリーらしいオチが見事な短編小説だ。麻見和史『あの人は誰』と米澤穂信『時効』である。
最後の仕事で何をするのか。それが一番大事だとは思わないけど、そこで何をするのかは楽しみだ。第二の人生は仕事より遊びを選んだけど、それが正しいと言える晩年を過ごしたい。