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映画・演劇のレビュー

『グォさんの仮装大賞』

2016-05-17 21:51:51 | 映画

 

『こころの湯』や『胡同のひまわり』のチャン・ヤン監督の新作だ。やはり、彼らしく詰めが甘くて、優しいばかりの凡作である。だけど、彼だから許す。こういうキツイ話を本気で撮ったりしたら、逃げ場がなくて、苦しいばかりだ。だから、適当に抜け道を作るほうがいい。甘いよな、と顔が綻ぶくらいでいい。

 

今回もしんどい話だ。養老院を舞台にして、死にかけの老人たちが、身を寄せ合い、生きる毎日を描く。でも、そこには、適度のユーモアがあり、息抜きが出来る。メインのお話は、彼らがTVの仮装大賞に出場する話だ。応募したらオーディションに合格し、天津に行くことになる。だけど、高齢者である彼らの安全を考慮し、院長は許可を出さない。そこで、無断で抜け出し、天津を目指す旅に出る。おんぼろバスを運転して、途中でパオで一泊し、優雅に旅する。いいのか、これで、とも思うけど。

そんなこんなで、なんだか、のんびり旅を楽しみながら、TVに出場し、なんと大賞を受賞する。その後、この企画の主犯である末期がんの男(旅の途中で倒れ入院し、でも、TVに強行出演)の希望通り、海を見に行くシーンまである。もうお話のフルコースだ。普通の映画なら、そんな展開を受け入れるはずもない。でも、なんでもありだ。

死ぬ前に望むこと。人生の最後に思い残すことなく、やりたいことをして、死ぬ。そんな理想通りの幕切れなんかない。だけど、映画だからそれを可能に出来る。これはそんな甘い映画だ。でも、映画は夢だから、夢の中だけでも、そんなエンディングがあってもいいではないか、と思わせる。何度も言うけど、たいした映画じゃない。期待するほどではない。でも、のんびり見て、なんとなくいい気分にさせられる、それだけでいいじゃないか、と思う。というか、それだけで充分じゃないか。

 


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