またぞろ深夜のTVシリーズの劇場版映画。こういう安易な企画がいくらでも登場して、そこそこヒットするというのが今の日本映画の実情なのだろうが、そろそろ飽きられてきたのではない。公開2日目の日曜日なのに梅田の映画館はガラガラだった。TOHOシネマズ梅田の一番大きなスクリーンを用意したのに当てが外れたようだ。
僕はこの映画がTVシリーズの続編だなんて知らないまま、見た。『百瀬、こっちをむいて』の耶雲哉治監督の第2作だから見に行った。彼のデビュー作である『百瀬』は実に残念な映画だった。とても好きな題材で期待したのに、消化不良の映画になっていた。だけど、この監督の作品をもう1本見たいと思ったから、この新作には、実はひそかに期待したのだ。同じような青春映画で、キラキラした青春の一局面が、今度こそ上手く描いてくれるのではないか、と思った。特殊な題材と設定も反対に期待を増幅するのである。困難なほうがより高いハードルを乗り切ることが可能になる。
そんな想いは始まって数分で打ち砕かれた。何なんだこれは? まともなお話すらない。短いカットで細切れに描かれるイメージ映像の羅列でしかない。しかも、隋所に挟まれるオリジナルのTVシリーズからの引用(というか、ダイジェスト)がお話の流れを損なう。主人公の3人の関係性もまるで納得できない絵空事レベルで、笑うしかない。少女マンガの映画化だから、こうなる、とは思いたくはない。散々作られているたくさんの少女マンガの傑作群の中に並べることが出来ないような愚作。今人気絶頂で引っ張りだこで、いろんな優れた映画に出ている窪田正孝は、このレベルの映画に出てどんな感想を持っただろうか。
きれいな映像はただのイメージビデオの域に留まる。『百瀬』はまだチャーミングなところもある失敗作として、腹は立たなかったけど、これはあんまりな出来だ。久々に映画を見ながら途中で劇場から出たくなった。それくらいに無残なしろもの。ヒロインの女の子もあまり可愛くないし、友だち役でTOHOシネマズの顔である山崎紘菜ちゃんも出ているけど、まるで見せ場ないし。