『雨がバケツを叩く』に続いて見たこの2本も面白かった。今日はなんだかとても得をした。今回の3作品は大阪アジアン映画祭の一環として上映されたけど、何故かこれだけ無料上映。芳泉文化財団の映像研究助成によって作られた作品らしい。ただより安いものはないと、見に行ったんだけど実はかなり不安だった。わざわざ行ってくだらない学生の自己満映画を見せられるのでは時間のムダ。でもタダなら文句は言えないしなぁと、思いながら行く。でも行ってよかった。
さて、まず『動物園のふたり』。たった33分の短編映画だが、完成度は高い。ヤマダとノタニさん、ふたりの出会いから別れまでの6ヶ月が、33分で過不足なく描かれる。見事だ。直前に見た『雨がバケツを叩く』と基本のストーリーラインが同じなのはたまたまだろうが、なんだか不思議な取り合わせ。
映画としてはこちらの方が完成度は高いかもしれない。テンポよく適切な描写で一切ムダがない。冒頭のふたりが動物園で象を見るシーンから始まり、ふたりの出会いから今日までの時間が、さらりと描かれる。ヤマダがノタニさんと出逢ったのは駄菓子屋の前。そこにあった古ぼけたゲーム機をしていたら彼女が声をかけてきた。たまたまヒマしてた。いや、毎日ヒマ。ヤマダ19歳、無職。ノタニさん29歳、旅人。出会った日にノタチさんは家まで来てそこから同居生活が始まる。短い描写で6が月間が綴られていく。そして再び動物園に戻り、そこにひとり旅いた女の後を追いかける。まさかの事態に遭遇。別れまで。
もしかしたらノタニさんなんていなかったのかもしれない。そしてヤマダは20歳になる。ある自殺が描かれる。そこをクライマックスにしてふたりの今が描かれる。自分がたったひとりで、誰からも、何処からも必要とされていないこと。ここにとどまること。ずっと旅をしていること。ふたりの出会いから別れまでの短い時間を通して幻のような刹那を6ヶ月のこととして描く。
最後は『サイレントムービー』。11本の短編集。3人の監督が手掛けた。モノクロの時代劇(なんと山中貞雄の幻の台本)から始まり、コメディ、スリラー、アクション、ナンセンス、アニメ、と(なんと怪獣ものまである!)てんこ盛り。もちろんすべて一応サイレント映画スタイル。ラストは再びモノクロ時代劇に。(マキノ省三!)先の2本とはまるで傾向が違うが、これはこれでなかなか楽しい。
3作とも監督やスタッフ、キャストの舞台挨拶もあり、かなりお徳で、大満足の1日になった。