先日読んだ『できたてごはんを君に。』の前作にあたる作品。短編連作だが、お互いのエピソードが微妙なところで繋がっている。同じ町のお店(その町に住む人たち)が舞台(主人公)になるからだ。5つのお話からなる。
『できたてごはんを君に。』と比較するとレベルは低い。それくらいに『できたてごはんを君に。』がよく出来ていたということなのだ。だが、これはこれでなかなかいい。でも、もしこれを先に読んでいたなら『できたてごはんを君に。』は読まなかったかもしれない。だから、後の作品を先に読んでしまったけど、問題はない、どころかラッキーだったくらいだ。
5つのエピソードはよくできている。食をテーマにした作品であると同時に、寂れていく商店街へのレクイエムにもなっている。ハイライトは2話目の居ぬきで「おむすび」(断じて「おにぎり」ではない)屋さんをすることになった女性の話。これがとてもいい。SNS映えのするお弁当作りをする母親の作るまずいお弁当に閉口する女子高生とのお話だ。
食べ物屋さんをするって本当に大変だろう。それでも食べ物屋さんはなくならない。つぶれてもつぶれてもまた新しい店は生まれてくる。繁盛している店も気が付けば閑古鳥が鳴く。それくらいに大変なのだ。リスクは大きく儲けは少ない。でも、たくさんの人たちがそこに夢を抱く。なぜなのか。その答えはここにある。
今回も(というか、最初である今回は)ラーメン屋、おむすび屋、定食屋、洋食屋、移動販売車によるのロコモコ屋というラインナップだ。特別な料理は扱わない。(ロコモコは定番ではないが)『できたてごはんを君に。』に引き継がれていくエピソードもある。気持ちよく読める。というか、また食を扱う本を読んでいるよ。