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映画・演劇のレビュー

『ザ・ウォード 監禁病棟』

2012-10-17 19:27:00 | 映画
 ジョン。カーペンターの久々の新作である。これを見逃すなんてもぐりだ。(というか、それってなんの「もぐり」なんですか?)彼が築いた一時代は、とても幸福な時間だった。ホラー映画が、映画として、まだちゃんと認知された時代である。あの頃、たくさんのホラーがちゃんとロードショーで、劇場公開されていた。そして、いくつもの作品がそれなりにヒットもした。幸福な時代だった。Jホラーがブームになって、やがて廃れたところから、ホラー受難時代がやってきた。もちろんTUTAYAに行くと山のようなホラー映画が並んでいるし、そこにはコンスタントに、というか、膨大な量の未公開作品が所狭しと置かれてある。昔なら公開されるはずもないゴミのような映画(だと、思う。見てないからわからないけど)が、そこにはある。


 70年代から、80年代にかけて浴びるほどホラー映画を見た。大好きだった。もともとは怖がりだったから、ホラーなんて、見れるわけがない人だったのだが、なぜか、僕の映画キャリアの本格スタートは、フリードキンの『エクソシスト』なのだ。当時中学生だった僕は夢にうなされるくらいに衝撃を受けた。それから映画が大好きになるのだが、そんな昔話は、今はどうでもいい。

 カーペンターのB級レベルの映画は欠かさずに見た。でも、そんな彼が『ニューヨーク1997』を撮り、アクション映画の巨匠になり、ヒューマン映画で傑作でもある『スターマン』を撮り、やがては『遊星からの物体X』に到るという、そんな時代をリアルタイムに劇場で体験できたことは、本当に幸福だった。デビュー作からずっと彼のポンコツ映画も含めて愛してきたから、そんな晴れがましい映画を彼がものにするのは、嬉しかった。

 だが、そんな幸福な時代は終わった。いつの頃から、彼の映画は、映画界から消えてなくなっていた。今回これが『ゴースト・オブ・マーズ』以来の10年振りになるらしい。そうか、そんなに経つのか、と感慨深い。劇場公開時は、大阪は天六ユーラクでの上映だったので、パスした。でも、本当はちゃんと劇場で見たかった。たとえどんな映画館だろうとも。だが、いつものことだが、時間がなかった。

 そんなこんなで、DVDである。だが、映画自体は予想できたことだが、実にしょぼい映画だった。今時こんなB級映画に誰も食指をそそられないだろう。僕も途中から、見るのをやめようか、と何度も思ったほどだ。カーペンターじゃなければ、きっとやめていた。

 ストーリーは、まぁ、よくある。別にホラーではない。怖くもない。当然感動なんかないし、低予算のB級映画。でも、そこには、カーペンターならではの世界が展開するはずだった。おかえりなさい、カーペンター、ってね。でも、期待は見事粉砕される。

 だが、それはそれで、気持ちがよかった気もする。これは初心に帰る作品だ。しょぼいけど、これはちゃんとしたB級映画だ。手抜きはない。映画に戻ってきたカーペンターが、この先どんな挑戦を見せてくれるのか。楽しみにしている。さぁ、ウォーミングアップは終了だ。

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