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のんが監督、脚本、主演、編集を手掛けた監督デビュー作。俳優が映画を作るというのは最近よくあるけど、まだ若い彼女がどれだけの映画を作れるのか未知数で、だから彼女のお点前拝見というくらいの軽い気持ちで見始めた。それほど期待はしていない。でも、これまでたくさんの映画に出て、いろんな経験をしている彼女の中にある想いがちゃんと表現されていたらいいな、とは思った。特にしばらく芸能活動を自粛させられていた(はっきり言うと、あからさまに干されていたのだが)時期の想いとかが、この映画のなかには反映されているのかも、なんて下世話な感慨も。
コロナ禍で卒業制作展が中止になった美大生が主人公で、彼女の2020年、2月から3月のかけての日々が描かれる。あの頃誰もが抱いた想いや不安、怒りや腹立ち、今に対する、さらにはこの先に対する恐怖。そして何よりも、何もできずに過ごす退屈な日々。それらがスケッチされていく。さらりとしているけど、距離を置いた客観的な描写ではなく、生の感情が吐露されている。感情的になるのではないけど、冷静ではいられない。自宅にこもり、集中して制作を続けるはずだったのに、まるで絵筆を持てないまま、無為に時間だけが過ぎていく。誰とも会えず、悶々として過ごす焦り。あげくの内定取り消し。あの頃のあるあるが描かれていく。
最小限の買い物と散歩。当然そこにはドラマチックな出来事なんかはない。変化と言えば、公園でいつも彼女を見ている不審者(またもやあの渡辺大知! 彼は中学時代のクラスメイトだ!)がいるくらいだ。もちろん、そんなことうれしくはないし、怖いだけ。
東京の感染者数が5人とか、10人とか今考えるとかわいい数字がTVから流れてくる。コロナがどんなもので、どうなるかが、まるで見えないし、まだまだ状況が未確定だったから。(ここで描かれるのは、ほんの2年前の話なのだ。そして今も継続中で先は見えない)この映画はそんな頃をテーマ、題材として取り上げて描くのだ。
これはなんだか昨年公開された彼女の主演した映画『私をくいとめて』の続編のようだ。ひとりの女の子の内面の葛藤をほとんど一人芝居のように描く映画なんてなかなかないのに、彼女は2本連続でそれを実現した。ひたすら彼女だけを見続けるのだが、それに退屈しない。それどころか、それがこんなにも興味深い。特別なことなんか、何もないのにである。(まぁ、夜中に大学に忍び込んで、友達(山下リオ)と彼女の卒業制作絵画を盗み出すという「それはないやろ、」という冒険はあるけど。)
「凄い映画だ、」とかいうわけではないけど、「のんらしい映画だ、」と思うし、「さすがだ、」とも思う。映画作家として、自分の想いを作品の中で確かに伝え、それが独りよがりにはならず、商業映画としてちゃんと楽しませてくれる。及第点の作品に仕上がってる。